売上高成長率(売上増加率)の計算式と目安と上げる具体的な方法

売上高成長率(売上増加率)

企業の成長は持続可能な競争力を築き、長期的な成功を収めるために不可欠な要素です。売上高成長率(売上増加率)は、企業が特定期間において売上高をどれだけ増やしたかを示す重要な指標です。本記事では、売上高成長率の重要性、計算方法、目安、および成長率を向上させるための方法について解説します。

売上高成長率(売上増加率)とは

売上高成長率(売上増加率)は、比較する期間で売上がどれだけ成長したかを示す指標です。例えば昨年からこの1年間で比較する場合の計算式は以下になります。

売上高成長率(%) = ((当期の売上額 – 前期の売上額) / 前期の売上額) × 100

例:前期の売上額が1億円で、当期の売上額が1億5,000万円の場合
売上高成長率(%) =  ((1億5,000万円 – 1億円) / 1億円) ×100 = 50%

売上高成長率(売上増加率)の重要性

売上高成長率は企業の健全性と成長性を測るために重要です。以下にその重要性をいくつかの観点から見ていきましょう。

1. 融資と信用性

売上高成長率は企業の信用性を判断する一つの要因になり、融資や企業の信用調査に関わります。

融資には公的融資と民間融資があり、公的融資は国や地方自治体などの公的な組織が行う融資のことです。民間の金融機関からの融資とは異なり、公共の利益や社会的な目的を追求するために行われるため、前年より売上が落ちているという条件の融資もあります。しかし、公的融資は種類が非常に多く、条件も複雑なため慎重に検討が必要です。
民間融資は営利目的売上で民間の金融機関が行う融資です。売上高成長率の高い企業は、借りられる金額、返済期間、金利の条件に関してより有利な条件で融資を受けることができます。

また、民間融資のうち、銀行融資にはプロパー融資と保証協会付融資があります。保証協会付融資とは保証協会に保証料を支払って保証人になってもらい、債務不履行になった場合は保証協会が銀行に対し支払う融資です。信用性が低い個人や企業でも融資を受けやすくなる一方で、保証料を負担することになります。
プロパー融資は、保証協会付融資ではない融資のことです。売上高成長率が高く、信用性が高い企業はプロパー融資が受けられます。

このように、売上高成長率は融資の審査や条件の決定に影響を与える要因の一つとなります。成長率が高いと融資の取得に有利な要因となり、逆に成長率が低いと融資の取得が難しくなる可能性があるでしょう。
また、帝国データバンクや東京商工リサーチ等の信用調査会社による信用調査でも確認されるため、新規取引の信用にも関わります。

融資について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

2. 競争力の向上

成長率の高い企業は市場での競争力が高まります。売上成長に伴い、リソースを拡充し、競合他社との差別化を図ることが可能です。また、新しい市場への進出や新製品・サービスの開発により、競合他社に先駆けて市場をリードすることができるでしょう。

3. 従業員のモチベーション

成長している企業は従業員にとって魅力的なキャリアの機会を提供します。
成長の無い企業では5年後も10年後も仕事内容は変わりません。ポジションが空かない限り昇進はなく、給料も上がりません。
一方、成長している企業では、新たなプロジェクトや責任を担う機会が増え、従業員のモチベーションや、やりがいが高まります。優秀な従業員を確保し、長期的な成功につなげることができます。

また、売上高成長率を従業員が認知していない企業も多くありますが、目標を周知することで従業員が目標を意識して働けるようになりモチベーションの向上に繋がります。

売上高成長率の目安と目標

売上高成長率の一般的な目安及び目標は以下になります。

新興産業やスタートアップ企業: 20%以上
成熟した産業や大企業: 5%~10%程度

ただし、これらはあくまで一つの指標であり、企業の業種や特性、状況、戦略によって異なりますので、参考程度にしてください。

新興産業やスタートアップ企業は成長が期待される分野であるため、高い成長率を目標として設定することが一般的です。一方で、成熟した産業や大企業は既存の市場でのシェアを拡大し続けることが難しい場合がありますので、5%~10%程度の成長率を目標として設定することが多いです。

ただし、特定の業界や企業によっては、目標として年間成長率がこれらの範囲よりも高い場合もあります。例えば、急成長を遂げるテクノロジースタートアップや新興市場への進出を果たす企業などは、20%以上の成長率を目指すことがあるでしょう。

重要なのは、企業の戦略や事業状況に応じて適切な成長率の目標を設定し、現実的な目標を定めることです。簡単に達成できてしまう低い目標や達成困難な高い目標は、従業員のモチベーションも高まりません。戦略的にバランスを取ることが重要です。

売上成長率を上げる具体的な方法

売上成長率を上げる具体的な方法について、「アンゾフの成長マトリックス」を用いて解説します。
「アンゾフの成長マトリックス」は、1957年にイギリスの経営学者イグナス・アンゾフによって提案された戦略的マネジメントのモデルです。このモデルを活用することで、企業が成長戦略を検討する際に、既存の製品や市場をどのように活用して成長するかを視覚的に整理し、適切な方向性を見つけ出すことができます。

アンゾフの成長マトリックス
アンゾフの成長マトリックス

「アンゾフの成長マトリックス」は4つの象限で構成されています。それぞれの象限は、製品(商品やサービス)と市場(顧客層や地域)の2つの要素を考慮しています。以下にそれぞれの象限の説明と売上高成長率を上げる具体的な戦略を示します。

1. 既存製品×既存市場 (市場浸透戦略)

この象限では、既存の製品やサービスを既存の市場でより多く売ることを目指します。成長率は穏やかですが、競合他社との競争が激しくなる可能性があります。

具体的な戦略

  • マーケティング活動の強化:
    広告や宣伝などを通じて既存顧客の維持と新規顧客の獲得を図ります。オフラインでは、看板、新聞・雑誌、チラシなどがあります。オンラインではSEO対策、SNS活用、メールマーケティングなどがあります。方法は多岐にわたりますが、広告効果の最適化や顧客の行動分析を行い、効果的なアプローチを行いましょう。
  • 顧客満足度の向上:
    顧客の満足度を高め、リピーターの獲得を促進します。
    フィードバックを収集し顧客の声を取り入れた改善や、アフターサービスなどのカスタマーサービスを充実させる等が有効です。
  • 顧客ロイヤリティの向上:
    特典や割引、ポイント制度などの提供は、顧客の忠誠心を高めます。
  • 新しい販売チャネルの開拓:
    オンラインショッピングや直販など、新たな販売ルートを追加します。

2. 既存製品×新規市場 (市場開拓戦略)

この象限では、既存の製品やサービスを新しい市場に展開することを目指します。新規市場への進出により売上を拡大することができますが、市場の特性を理解し、適切な戦略を立てる必要があります。

具体的な戦略

  • 地域拡大:
    既存製品を新たな地域に展開し、地域ごとのニーズに合ったマーケティングを行います。
  • 新規顧客セグメントの開拓:
    既存製品を新たな顧客層に販売するためにターゲティングを変更する。男性向け商品を女性向けに販売したり、学生向けに割引価格で販売したりとターゲットの幅を広げます。
  • 新規チャネルの開拓:
    オンラインショッピングや直販など、新たな販売ルートを追加します。

3. 新規製品×既存市場 (製品開発戦略)

この象限では、既存の市場で新しい製品やサービスを提供することを目指します。顧客ニーズの変化や技術の進化に対応し、競争優位性を維持することが重要です。

具体的な戦略

  • 新製品開発:
    既存の顧客の要望に応える新製品を開発し、製品ラインを拡充します。顧客のニーズに合わせた商品開発やサービス提供は、新たな収益源を生み出す重要な要素となります。例えば、健康志向の高まりに応えた商品やSDGsに配慮した商品を販売するなどです。
  • 既存市場でのテストマーケティング:
    新製品を限定的な市場でテストし、フィードバックを収集します。
  • ブランド拡大:
    既存ブランドの信頼性を活用し、新しい製品にブランドを拡大します。例えば、コスメブランドで新たに健康食品を販売することや、和菓子メーカーがカフェを営業するなどです。

4. 新規製品×新規市場 (多角化戦略)

この象限では、新しい製品やサービスを新しい市場に展開することを目指します。リスクは高いですが、新しい成長機会を見つけることができる可能性があります。

具体的な戦略

  • 新規事業の立ち上げ:
    既存の事業とは異なる新たな事業をスタートさせます。
  • 企業買収や提携:
    既存の企業を買収するか提携することにより、新規市場への進出を図ります。
  • ベンチャー投資:
    新興企業に投資することで、新たな事業の可能性を追求します。

業種による違いや実践方法

業種によって成長戦略は異なります。例えば、テクノロジー企業はイノベーションを重視し、継続的な研究開発を行うことが重要です。小売業の場合はオンラインショッピングの拡充や店舗の改善を通じて、顧客体験の向上を図ることが考えられます。また、サービス業の場合は顧客との密なコミュニケーションを通じてニーズを把握し、サービスの質を向上させることが必要です。

業種に応じた戦略を検討する際には、マーケットリサーチや競合分析を行い、市場動向や競合他社の戦略を把握することが重要です。自社の強みや弱みを理解し、それに合った成長戦略を立てることが成功への鍵となります。

まとめ

売上高成長率の向上は企業の持続に欠かせない要素です。社会の信頼を得たり、競争力を高めたり、従業員のモチベーションを向上させたりするためにも重要です。また、売上高成長率を向上させるためには、新たな市場への進出、新製品やサービスの開発、マーケティング戦略の最適化など、様々な戦略を組み合わせて実践することが重要です。業種や企業の特性に応じて戦略を立て、持続可能な成長を目指して取り組むことがおすすめです。

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