赤い床にお歳暮のハコが置かれている画像

皆さんは、お歳暮やお中元を贈ったことはありますか?もしくは受け取ったことはありますか?
ここでは、お歳暮の由来やマナーなど基礎的な知識をわかりやすく紹介します。最近のお歳暮の傾向についてもお伝えします。
ぜひ“一年間の感謝の気持ち”を伝える絶好の機会「お歳暮」をもう少し身近に感じていただければ幸いです。

「お歳暮」が生まれた由来とは?

まずは、「お歳暮」の由来について紹介しましょう。
その昔、先祖の霊を迎える行事として、お正月に「御霊祭」が行われていました。その際にお供え物を分家から本家へ、嫁ぎ先から実家へと届ける風習があり、これがお歳暮の起源とされています。そのお届けものの内容は、塩鮭やお酒、お餅、干し魚、数の子など、新年を迎えるための必需品でもありました。
そして、年月が流れ、「御霊祭」の風習はお世話になった方に品物を贈る「お歳暮」へと変化を遂げたのです。

鮭切り身イメージ画像

「お歳暮」という言葉は、もともとは年の暮れである「年末(歳暮=さいぼ)」という意味を表わすものでした。年の暮れになると一年間お世話になった方に贈り物を持参してまわる習慣が生まれると、これを「歳暮回り(せいぼまわり)」と呼ぶようになり、やがて贈答品そのものを「お歳暮」と言うようになったとか。
また以前は、お歳暮とはお世話になった人に贈るものでしたが、近年では友人や知人、親族などにも贈るようになるなど、少しずつ贈る対象も変化してきているようです。

「お歳暮」と「お中元」の違いは?どちらも贈らないとダメ?

さて、「お歳暮」と「お中元」は必ず両方とも贈らないといけないのでしょうか?その答えは「ノー」です。
もし、どちらかだけを贈るとするならば、“お歳暮を贈るのがよい”とされています。なぜならば、お中元は約“半年間”お世話になった感謝の気持ちを表すものですが、お歳暮は、今年“一年間”お世話になった感謝の気持ちを表すものだから。つまり、“一年の最後を締めくくるご挨拶”という意味合いが強いため、お歳暮の方が重要視され、ゆえに優先すべきと考えられています。

ピンク色の布に包まれたお歳暮の画像

お歳暮のマナー(1)「贈る時期」と「のし」のルール

相手に感謝の気持ちを込めて贈るお歳暮ですから、相手にマナー知らずと思われないようにしたいもの。まずは贈る時期と、のしの基本的なルールはおさえておきましょう。

<贈る時期>

お歳暮は本来、12月上旬から20日頃までに贈るものとされています。遅くてもクリスマス頃まで。お正月シーズンの前までには相手に届いておくようにしたいものです。そのためにも早めに準備をすすめることが大切です。
もしお歳暮の時期が過ぎてしまった場合には、1月7日までに相手に届くのであれば、表書きを「お年賀」として贈るとよいでしょう。さらに遅くなる場合は、「寒中御見舞」として2月4日頃までに届くよう手配しましょう。目上の方に贈る場合は、「寒中御伺」とすると敬意がより伝わります。

御年賀ののしがかかった贈り物

<品物にかける「のし紙」のルール>

品物を包む際に使われるのが「のし紙」です。
品物の箱に直接「のし紙」を巻いて包む包装紙で包む「内のし」と包装紙で品物を包んだ上からのし紙を巻く「外のし」があります。現在では、宅配便で贈る場合は「内のし」、直接手渡しする場合は「外のし」、と使い分けるのが一般的のようです。

基本的に、のし紙は「表書き」「熨斗(のし)」「水引」「名入れ」の4つで構成されます。

■「表書き」

「御歳暮」「お歳暮」と記載します。
贈り主が個人の場合、名前は姓のみを記載します(フルネームを記載することもあります)。
なお、今年特別にお世話になった方に恒例とせずに贈り物を届けるのであれば、表書きを「御礼」としましょう。

■「熨斗(のし)」

のし紙の右上にある飾りのことを「熨斗(のし)」と言います。
薄く伸ばしたアワビを縁起物として贈り物に添えていたことが由来で、後に昆布や紙が代用されるようになったとか。現在では、印刷熨斗や折り熨斗(色紙を細長い六角形に折りたたんだもの)を使用したのし紙や祝儀袋が一般的となっています。

■「水引」

「水引」は贈り物の包み紙を結ぶ紙紐のこと。
目的に応じて結び方も異なり、お歳暮やお中元の場合は「紅白5本蝶結び」が基本です。簡単に結び直せる蝶結びに、“何度でも繰り返したい”という願いを込めているのです。

お歳暮の熨斗の画像

お歳暮のマナー(2)「どう選ぶ?」「金額は?」「もらった時のお礼は?」

では、お歳暮ではどんな贈り物が喜ばれるのでしょうか。まずは贈る相手が喜びそうなものを選ぶことがポイントになります。

<何を贈ればいいの?>

お歳暮が届いた後の年末年始は、家族や親戚が集う機会が多くなります。人気があるのは、お菓子やハムなど年齢や性別関わらず皆が楽しめるもの。もしくは季節柄を踏まえたもの。“冬”にぴったりの鍋料理セットなども喜ばれます。
また、贈る相手の嗜好も踏まえた、日本酒、焼酎、ビール、ワイン、コーヒーといったドリンク類も人気のようです。

ハムの盛り合わせの画像

<金額はどう考える?>

金額については、贈る相手との間柄を考慮しながら決めると良いでしょう。お中元の約2~3割増の金額が妥当と思われますが、お互い負担にならないように心がけるのも“心づかい”です。

  • 親や親戚、知人のような間柄:3,000~5,000円程度が相場です
  • 上司や、特にお世話になった間柄:5,000~10,000円程度が相場です

<もらったときのお礼はどうするべき?>

お歳暮をいただいた時は、友人や同僚、兄弟などの場合は同程度の品物でお返しをします目下の方からの場合は、お返しの品を贈る必要はありません
いずれにせよ、お歳暮をいただいたらお礼の意を伝えるのは最低限のマナーです。特に目上の方からいただいた時には手書きのお礼状(ハガキでOK)を送るとよいでしょう。
内容は、お歳暮が届いた旨とそのお礼、いただいた品物に対する気持ち、お相手や家族の健康を気づかう一文を綴りましょう。

白いテーブルにレターセットとペンが置かれている画像

最近の「お歳暮事情」&マナー知らずと言われないために知っておきたいこと

お歳暮の習慣は昔から続いていますが、時代に合わせて少しずつ変化してきています。ここでは、最近のお歳暮の動向についていくつかトピックスを挙げてみます。

<贈り先の変化>

企業間など仕事上でのお付き合いは減少傾向にあります。そのため最近では両親や親族、知人などに贈るケースが中心となってきています。

また、最近ではお歳暮を贈る相手が日本の方ではないケースもあるようですが、お歳暮の習慣がない外国籍の方へ贈る場合には、お歳暮の意味も一緒に伝えることが大切です。
贈る内容についても、相手の好みや家族構成だけではなく、国の文化や宗教に配慮したものを選びたいですね。

贈り物が届いて家族で喜んでいるところ

<贈り方のポイント>

■お歳暮の贈り方

その昔は、お相手のお宅を訪問して直接お渡しするのがお歳暮の正式なマナーでしたが、最近では百貨店やインターネットなどで注文し、そこから直接相手先に配送で贈る形が主流となっています。
とはいえ、配送でお贈りする際にも、感謝の気持ちを記した送り状を付け添えるのがマナーです。難しい場合には別送するのもよいでしょう。

■トレンドよりも大切にしたいのは相手への心遣い

お歳暮を贈る際に大切にすべきなのは「贈る時期に合った季節感」と「相手の家族構成」、そして「相手の好み」です。

■季節感を考慮したお歳暮

たとえば、クリスマスや年末年始でも楽しめる高級食材(牛肉や蟹、地域の海産物など)や、贅沢感のあるアイスクリームやジェラートなどは人気のようです。お正月らしい特産品や逸品もよいでしょう。

皿に盛られた毛ガニの画像

■相手の家族構成と好みを考えたお歳暮

贈る相手の家族構成(一人暮らし、夫婦暮らし、お子さんの有無など)、年齢、生活スタイルや好みを考慮した贈り物選びができるのが理想です。

お子さんが多いご家族の場合は、日持ちが比較的長く、個別包装になったお菓子やゼリーなども喜ばれます。

夫婦共働きのご家族の場合は、遅い時間まで自宅に不在のこともあるので、生鮮食品は受け取りが遅くなってしまうと食べごろを逃すようなこともあるかもしれません。親しい間柄であれば、確実に受け取っていただける到着タイミングを事前にお伺いしておくのも策でしょう。

ご年配のご家族の場合は、食が細くなっていたり歯が弱っている方がいらっしゃる場合も考慮し、量より質を重視しながら、食べやすいものがよいでしょう。お菓子は定番ですが、煎茶などの高級な日本茶や、うどんなどの麺類、フルーツなどはいかがでしょうか。

木のテーブルの上にフルーツ(チェリー)入りのゼリーが4つ並んでいる

■楽しいお歳暮選び

最近では、日本全国どこからでも容易にWEBサイトで商品を選定・注文発送が可能です。

贈り主の地元の特産品、パッケージにもこだわった華やかなお菓子、百貨店でも入手困難な日本酒、海外のワインとチーズのセット、名店のローストビーフ、一味変わった鍋セットなど、多様な選択肢の中から楽しく贈り物選びができるのです。

お歳暮選びのコツは、“モノ”よりも“シーン”をプレゼントするイメージを持つこと。自分では普段なかなか手を出さないようなものをあえて選ぶのもよいでしょう。

テーブルの上に赤ワインとチーズの盛り合わせが置かれている画像

一年の締めくくりに、「お歳暮」でご挨拶

少しずつ形式は変われども、長い歴史に培われてきたお歳暮のしきたりは、大切な人への気持ちを表現する日本の素晴らしい文化です。

師走になると、私たちは慌ただしいなかでも「あの人にお世話になったな」「あの人とこんなことがあったな」と一年を振り返ります。

お歳暮は形式的な慣習だと思う方もいるかもしれませんが、年の暮れに、誰かに感謝しながら「お歳暮」を贈ることや、自分が誰かに感謝されていることの表れでもある「お歳暮」を受け取ることは、相手を思うと気持ちが温かくなる日本ならではの習慣と言えるのではないでしょうか。これからもこうした気持ちを通わせる文化を大切にしていきたいですね。

<参考資料>

<参考文献>

  • 春夏秋冬を楽しむくらし歳時記(生活たのしみ隊編/成美堂出版)
  • 四季のしきたり作法(岩下宜子監修/株式会社枻出版社)