五月上席 真打昇進襲名披露興行(三笑亭夢丸主任)

五月上席 真打昇進襲名披露興行(三笑亭夢丸主任)

三笑亭可女次:「小噺」 じいさんや・ばあさんやシリーズ(勝手に命名)

17:00
Wモアモア:漫才
三笑亭可龍:「小噺」・「踊り(せつほんかいな)」
瀧川鯉朝:「英会話」
北見マキ:奇術

18:00
春風亭柳橋:「不動坊」(お湯屋まで)
三笑亭夢太朗:「たがや」
松乃家扇鶴:音曲
三笑亭可楽:「臓器移植」

19:00
三遊亭小遊三:「置泥」

 

―仲入り―

真打昇進襲名披露口上
三笑亭小夢:「時そば」

19:40
春風亭小柳:「お菊の皿」
三笑亭夢花:「魚根問」
春風亭小柳枝:「長屋の花見」
ボンボンブラザース:太神楽曲芸

20:40
三笑亭夢丸:「竹の水仙」

----------------------------------------------------------------------------

 

今日は待ちに待った、夢丸さんの真打昇進襲名披露主任興行。要するに、三笑亭夢丸としての初の“主任高座”。これは欠かせない。前日、某噺家さんから「入れ替え無しですから、昼の部の歌丸師匠のところからでもお入りになったらいかがですか」と丁寧なアドバイスを頂戴する。

 

(おお!ナイスアドバイス!)

 

披露目の興行だから、てっきり入れ替えアリかと思い込んでいたよ。そうだ、そうだ。昼の部から入り込んでおけば!(しめしめ)何がしめしめだかわからないが、(しめしめ)俺は泥棒か!座席確保が確実になるゾ!歌丸師匠のところからといわず、歌助(歌若)さんのところからでも、とん馬師匠のところからでも、遊三師匠のところからでも観ることができる、観ながら待っていればいいじゃないか。寝ながら待っていればいいじゃないか!(失礼しました冗談です冗談)などと思い描きつつ、伊勢丹地下で夕飯(おこわ稲荷)を買い込み、木戸に向かうと入場を拒否される!なんだなんだなんだ!このチケットのせいでした・・・15:30からしか入場できませんと、割と大きく書いてある。

 

(がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん)

 

出ましたよ。俺の生来のおっちょこちょいぶりが!よくも確認せずに、何度こんな目に遭ってきたか。まただよ。まただよ俺…ばかばかばばかと自分の頭を末広亭の前でぽかぽか殴っていると、どこからか声がする。

 

(いま15時じゃない。30分、いや20分くらい、近所でお茶でもして、つないで来なさいよ)

 

おお!俺の脳内エンジェル!脳内エンジェルのアドバイスに従って、ファーストキッチンで時間をつぶしてから15:20。緑色のチケットを持って意気揚々と入場(早めに開場してくれた)。場内は脇までびっちりの立ち見客、立ち見客、立ち見客。もちろん、二階も開いている。

 

と、もぎりのお姉さんが耳打ちしてくれた。(大好きよ!)と。ではなく、(脇の一番前まで行ってください。歌丸師匠が終わると、お客さん、どどーっとお帰りになりますので、そしたら空いた席にお座りください)。おお!脳内じゃないリアルエンジェル!俺はリアルエンジェルのアドバイスに従い、立ち見席の一番前まで歩みを進めたのだった。

 

(でもなぁ、ここに来てる客だって、どうせ夢丸さんの初高座狙いなんだろう。空くのかなぁ席。俺と同じように昼の部から席確保のための常連、いぶし銀のじいさんたち、若手(といっても40代)落語ファンが、こぞって観に来ているんだろうし…。と超後ろ向きになる俺。目線は高座。

 

ちょうど助六師匠の高座から観ることができました。

 

昼の部(途中から)

雷門助六師匠。軽い感じが絶妙!「こり相撲」。続いて、「踊り(あやつり人形)」。いつみても巧いなぁ。


桂歌春師匠。「桃太郎」。良い意味で気障な感じが歌春節。

 

松乃家扇鶴師匠と出番入れ替わって、東京ボーイズ先生登場。「謎かけ問答で解くならばぁ~♪」 いい感じでウケルんだよなぁ、この歌謡漫才。

16:10 トリ。桂歌丸:「壷算」。歌丸師匠の「壷算」は二度目だろうか(小痴楽さんの独演会?)。ザ・落語、丁寧な「壷算」。染み入ります。

 

俺の想像に反して(もぎりのお姉さんの指導正しく!)、終わるとどやどやと帰るお客さんたち。(おいおい!夢丸さんの初寄席高座、聞いて行かねーのかよ!座れてうれしいけど)という俺の心の叫びも届かず。ほとんどが入れ替わっちゃった。

 

で、いよいよメインイベント!夜の部開幕!前座は桂伸しんさん(子褒め?)。昇吾くんだと、もっと良かったなぁ。まずは可女次さんから。お得意のじいさんや・ばあさんやシリーズ(勝手に命名)で、どかんどかんと爆笑をゲット。いつ聞いても笑えるんだよなぁ。超楽しい。

Wモアモア師匠の漫才はいつ聞いても、安心して身を委ねられる。はらはらしながら聞く心配がない。訛りって武器だよなぁ。


可龍さんは若者小噺をいくつか振った後、踊り(せつほんかいな)。小菊さんの高座でよく聞く大好きな曲。踊りつきを観るのは、こみちさん以来だろうか。


昔々 その昔 ずっと昔の大昔 九郎 せつほんかいな ♪
九郎判官 義経様は静御前を伴に連れ 吉野を指して ♪
落ちたもう ヨンボリヨンボリ ヨヨンボリ ♪
烏帽子かりぎぬ 烏帽子おり ♪
ぞろりやぞろりや ぞんぞろり 目出度いな 目出度いな ♪


鯉朝さんは「英会話」。古今亭寿輔師匠の名新作。他の人がかけてるのを聞いて爆笑した覚えがあるなぁ。誰だっけ?


北見マキ先生の奇術。テレビで昔観たときよりも、貫禄がついて。ご立派になられて。(って何様目線じゃ!)

柳橋師匠は「不動坊」。お湯屋(独り既知外)のシーンまで。いつか、フルサイズで聞きたいなぁ。

 

夢太朗師匠は「たがや」。ここが山場でした。おこわ稲荷が効いて来て、話しを聞かずに夢の彼方へ。

 

松乃家扇鶴師匠は音曲。はじめての扇鶴師匠。ぴろきさんみたいで、たまらなく好き。大好物。ひとめでファンになりました。

 

目に課題を抱える可楽師匠は「臓器移植」。いぶし銀過ぎます。

小遊三師匠は相変わらずの超高値安定。なんだか、本日、はじめて落ち着いて高座に集中できた気がします。「たがやをやるつもりできたけど、できなくなっちゃったから(夢太朗師匠にさきにやられちゃったから)。2つ候補があるんだけど」といいながら「置泥(夏泥)」へ。もうひとつの選択肢が何だったのか気になります。にしても上手いなぁ。面白いなぁ。ちんぴら、やくざもの、やから、泥棒、人を食ったとぼけた役など、愛すべき小悪党たちをやらせたら小遊三師匠に敵う人はいないのではないか。小気味良くて楽しい。空間が一気に陽気になる。空間支配力、華がハンパないなぁ。「笑点」に出てるってだけで、軽く見る落語ファンも居るけど、普通に上手いから。普通以上に巧いから。舐めたらいかんぜよ!「陽気の変わり目に、もう一ぺん来てくんねえ」

 

ここで仲入り。稲荷で足りずにサンドイッチをぱくつく。う~ん、正直、いまひとつ。

幕が開き、メインイベントの前哨戦。真打昇進襲名披露口上だよ。左から:三笑亭夢花(司会)/春風亭柳橋/三笑亭夢太朗/三笑亭夢丸/三笑亭小夢/春風亭小柳/春風亭小柳枝/三笑亭可楽/三遊亭小遊三。鈴本で見る落語協会の口上とは一味もふた味も異なって、これまたよい風情。たまらんなぁ。夢花さんは小柳枝師匠を飛ばすし(これは演出かな?それくらい楽しかった)、可楽師匠は「名前(名跡)なんてどうでもいいんだよ」って放言しちゃうし(これは口上における定番のネタ振りなのかな?それくらい、みんなが拾ってつなげていた)。独特の熱気と高揚感がたまらない!披露目興行最高!新真打の三人、みんなの未来に幸あれ!(特に夢丸さんの未来に大きな幸あれ!)


口上終わって、まずは小夢さんは「時そば」。きれいな落語。そばの仕草(すすりかた)が絶妙。面白かったけど、ちょいと早口なのが残念。

続いて、小柳さん。羽目モノ入りで、ご陽気(?)に。爆笑爆笑の「お菊の皿」。芸協系の「お菊の皿」?ははじめてかも知れない。面白い!

 

先ほど口上の司会でしくじっちゃった夢花さんは「浮世根問」の魚バージョン「魚根問」。これも芸協系?三笑亭伝統?こちらも面白かったけど、ちょいと早口なのが残念。

 

小柳枝師匠は、くすぐりもなく、混ぜ物なし、純度100%の「長屋の花見」。オーセンティックなのに、ここまで笑える。本寸法で、ここまでおかしい、おもしろい。腹から笑える。すばらしい。これぞ芸だよ。流石は小柳枝師匠。やっぱちょっと違うなぁ、次元が。

 

ボンボンブラザース先生は太神楽曲芸。ひげボンボン(敬称略)が、相変わらず凄い!派手さはないのに、なんで、ここまで見入ってしまうのか、はらはらしながら見つめてしまうのか、笑ってしまうのか。基礎がしっかりできているからなのでしょうねきっと。

たくさんの掛け声でかき消されてしまったけれども、俺もはじめて声をかけました。「たっぷり!」って。寄席掛け声初体験。それくらいの大盛り上がりなオープニング。おめでとう!夢丸さん。

 

夢丸さんは先日に続いて「竹の水仙」。(また、竹の水仙か)とは不思議にも思いませんでした。なぜなら、俺は、夢吉最後の「竹の水仙」と夢丸最初の「竹の水仙」の両方を聞いたことがある日本で恐らく唯一の男だからです。先日は舞台袖から聞いていたので、客席から堪能しました。

 

300両で売れるとわかったときの宿屋の主人の強気への豹変振りは、まるで「らくだ」に出てくる屑屋さん(酔っ払って乱暴者へ豹変)ばりで、面白いのなんのって。

 

大爆笑はもちろんのこと、まるで、そこに竹製の水仙細工があるかのような高座。花の香りまで漂ってくるようです。宿屋の主人が張り替えた「売り切れました」の張り紙も俺には見えました。

 

幕が下がり、帰ろうとすると幕の奥からは芸人さんたちによる三本締めの声が。何度聞いても素敵な余韻。おめでとうございました。

 

★マーケティングの視点★

大好きな噺家さんの独演会勉強会も勿論大好物だけど、やっぱり寄席が好きっ!原点は寄席。それ位、今日は寄席を久しぶりに満喫した。あゝ寄席。閉鎖的で開放的で、寄せ集めで先鋭で、流行的で古典的で、退廃的で興隆的で、自虐的だが自愛に満ちていて、マイナーでメジャーで。寄席って本当に魅力的。