樹齢7000年超! 世界自然遺産「屋久島の縄文杉」を一生に一度は見るべき理由

念願の“縄文杉”に会いに、MOVEラボ助手のまさたかが行ってきました

縄文杉の迫力はすごい!

MOVEラボ・高校生メンバーがみた感動の島、屋久島

今回、レポートしてくれたのはMOVEラボの高校生メンバーである助手のまさたか(高1)。昆虫が大好きで小学生のころからMOVEラボの活動に参加。自宅では昆虫専用部屋でたくさんの昆虫を飼育中。最近は筋トレで身体を鍛えることにもハマっています。
MOVEラボ研究員・まさたか(高1)
〈MOVEラボ研究員とは?〉
MOVEラボ研究員は、厳正な選考によって選ばれた、生きものや自然科学に興味のあるMOVE読者の代表です。研究員は、MOVEラボの活動に参加し、フィールドや博物館、動物園などをリアルに楽しみます。また、ラボの研究員は、自分たちの研究レポートをMOVEラボのサイト上で発表します。

メンバーは現在25名! 中学生以上は「助手」として活動しているよ!
https://lab.zukan-move.kodansha.co.jp/

縄文杉は、世界自然遺産に登録されている屋久島にある!

私は去年(2022年)の4月ごろ、縄文杉に会うため屋久島に行きました。屋久島の概要をお話ししますと、鹿児島市から南に約135kmに位置する淡路島より小さな島です。南西にはトカラ列島が並び、そこでは採集の禁止されているトカラノコギリクワガタという美しいクワガタが生息しています。

135kmと言われてもあまり実感が湧かないかもしれませんが、私が鹿児島県の港から乗船した高速船では、ロケットの発射が行われる種子島にも寄港しておよそ2時間半かかりました。ちなみに屋久島には空港もあるので飛行機で訪れることも可能です。

屋久島は90%以上が森林から成り、全域ではありませんが一部は世界遺産に登録され、5~8月はウミガメが産卵に訪れるほどに自然で溢れています。
島内には大手コンビニチェーンは無いので、個人経営のコンビニばかりだそうです。地域のスーパーを訪ねた際は、輸送コストのせいかお肉などが私の地元より若干高いような印象を受けました。
MOVE「世界遺産」より
屋久島に到着して何よりも先に、私は船で縮こまった腰を伸ばし、深く息を吸いました。そうすると一瞬のうちに、いつもの空気とここのものは、明らかに違うように感じました。驚いたことに空気は目に見えるほど澄んでいるように見え、私も田舎住まいの身ですが、これこそが真の自然なのだと、悔しいながらも常識を塗り替えられてしまいました。そんな環境であったので、今更ながらにもっと滞在して自転車で島を見て回るなどすれば、最高に気持ちがよかっただろうと涙を流しています。

縄文杉とは?

縄文杉がある屋久島は、九州の南端から南へ60kmほどの海に浮かぶ五角形の島。東京23区と同じくらいの面積の島には、九州一高い宮之浦岳(標高1936m)などの山が連なっていて、「洋上のアルプス」ともよばれているよ。島の90%は森林で、よく知られた「屋久杉」をはじめ、たくさんの樹木におおわれた、緑の山の島なんだ。

縄文杉は、確認されているなかで最大の屋久杉です。高さは25m以上、おとなの胸の高さでの周期は16.4mもあり、ずんぐりしています。はっきりとした樹齢は不明ですが、2000年~7200年と考えられています。縄文杉のほかにも、名前のついた屋久杉の大木があります。(MOVE「世界遺産」より)
ここまで屋久島について書いてきましたが、目的である縄文杉とは何者か、それも語らなければなりません。高さは25.3メートル、太さは16.4メートルのまさに巨木で、縄文杉という由来は縄文時代から存在しているからなど諸説あるようです。(MOVE「世界遺産」参照)

誤解するポイントであるのがそもそも縄文杉という名は、数ある屋久杉の一個体につけられた名前なので種の総称ではありません。上記の屋久杉とは屋久島に生えた樹齢1000年以上の物を指し、それ以下のものは小杉というとかなんとか。

往復10時間以上! 縄文杉までの道のりは険しい……!?

さて、縄文杉に会うためには、バスに乗って荒川登山口という場所までいかなければなりません。私はトレッキングツアーだったため、民宿からバスで拾ってもらい向かいましたが、その時刻は午前3時前。そこから道なき道、トロッコ道を進むわけですが、皆さんは一体どれほどの時間歩かねばならないか想像できるでしょうか。

答えは往復10時間以上です。そう聞くと自分には絶対に無理だ、と考えてしまうのも無理のないことです。かくいう私も日頃から運動をあまりしていなかったので、かなり厳しいのではないかと思っていました。が、意外や意外、膝はガッタガタになりましたが、体力の面というならそれほど心配はいらないと感じました。
天気は快晴!
登山口前で朝食の弁当をかきこんでから登山をスタートしました。歩き始めて1~2時間程で気になったことは、トロッコ道の歩きにくさでした。
トロッコは現在も緊急時などで使われることがあるらしく、綺麗に整備されていたのですが慣れない凸凹道にはどうにも骨が折れました。

屋久島は月に35日雨が降ると言われているようで、道中で伺ったガイドさんのお話によると、ある人は飛行機で屋久島に行こうとしたらしいのですが、悪天候によって計3回にわたり上陸することができなかったそうです。それを聞いて、私は問題なく上陸できたうえに、この日は清々しい快晴だったため、幸運が味方してくれたのだと確信しました。

そこから1時間ほどの地点でウィルソン株というものに出会いました。面前には少し開けた空間があり、他の登山者はそこで休憩をしている様子でした。
ハート型の穴。
ウィルソン株とはウィルソン博士由来の名で清水の湧く、非常に大きな切り株です。豊臣秀吉が大仏殿建設(一説には大阪城建設とも)のために伐採したというような話を聞きました。

一番の特徴は切り株内のある角度から上を見上げると、ハート型の穴が見えるということです。私もばっちり見てきました!
途中、屋久杉の子どもにも出会うことができました。
皆さんも中学校などで習うかもしれませんが、屋久島の山間部はほとんどが花崗岩という種類の岩でできているようで、その上に噴火などで飛んできた火山灰が重なっているため、土壌は栄養価の非常に薄いものだそうです。

しかしそのおかげで、屋久杉は非常にゆっくりと成長するので長寿なんだそうです。ほかにも抗菌作用を持つ樹液が多い影響もあるという話でした。この小さな小さな幼木がきっと、人間を見守りながら大きくなっていくのでしょう。感慨深い光景でした。
杉の幼木。
上記で述べた噴火というのは、屋久島付近にある鬼界カルデラという火山が起こした7300年前の噴火のことで、東北地方にも火山灰が届くほど大きいものだったとのことです。

縄文杉の樹齢は正確にはわからないそうで、約2000~7200年となっています。これは7300年前に噴火した鬼界カルデラの火砕流によって、九州付近の動植物が全滅したとされているそうなので、噴火の前から樹齢が続いているとは考えられないようです。(諸説あり)

縄文杉に行くまでの道のりでは、三代杉、仁王杉、大王杉、夫婦杉など個性溢れる屋久杉が登山者を迎えているように生えていましたが、残念ながらじっくりと観察できるほど私の体に余裕はありませんでした。
途中のお昼休憩。お腹ペコペコでした。

5時間半歩いて……縄文杉はもう目の前……!?

昼休憩などを挟み順調に進むと、看板などの様子から縄文杉が近づいているということがわかりました。このときここまで5時間半ほど歩いていました。当然疲れはありましたが、美しい風景は、ひとつまみの気力を与えてくれたように思います。

実際に、登山道では多くの人と(お年寄りも非常に多かったです)すれ違ったのですが、その人たちの目は「楽しい!」という気持ちでいっぱいのようでした。恐らくは私の目も。

ちなみに縄文杉は枝が折れて下に落ちてくる危険性から、現在は少し離れた展望デッキからの鑑賞になっています。
道が平坦になる場所まで進むとガイドさんがツアー参加者に、ここからは頭を下げて前を見ないで歩いてくださいと言いました。私がサプライズを待つ子どものような気持ちでいると、ガイドさんは、あれを見た登山者たちは絶対に言葉が出ない、と言っていたのが聞こえました。

そこまで上がった期待のハードルを縄文杉が超えることができるのか、展望デッキへ上がる階段の途中あたりで、若干の不安が頭をよぎりました。そのとき、「頭を上げてください」という声が上がりました。

ついに目の前に縄文杉が! 言葉にならない、感動の瞬間!

こちらが、縄文杉!
誰一人声を出しませんでした。

荘厳の一言で済ますことのできない美しさ、空へ空へと伸びた枝から漏れた光は、等しくその場の人間に投げかけられており、私にはそれを感じることができただけでこの旅は一生のものとなりました。人の寿命が長くて100年ほどの中、こうして何千年と生きてきたあの大樹は、わかりやすく目に見える生命の形を体現したものでした。
縄文杉と一緒に!
しかしどうしても言葉では伝わらない部分が多いと思うので、実際に行ってみることを強くお勧めしたいです。
残念なことに縄文杉との対話は30分ほどで終わりを告げ、来た道を戻りましたが、私はあそこに感動を置き忘れてきたような気さえします。

取材・文・写真提供/MOVEラボ研究員・加藤雅隆