都市部への人口一極集中や少子高齢化に伴い、地方の過疎化が問題となっています。

では、過疎化が進むとどのような問題が起こるのでしょうか?

本記事では、過疎化について、現状と問題点、原因や国が取り組む対策などを解説します。

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過疎化とは?

過疎化とは、地方から都市への流出によって人口が急減する状態を「過疎」と言い、この状態が進む状況を「過疎化」と言います。

都市への人口集中に伴い、さらに少子高齢化の影響によって過疎化が進行しています。

過疎化の進行は、過疎地域の生活水準や生産能力の低下を引き起こし、空洞化の現象が起きています。

過疎地域の空洞化について、総務省の資料では、『都市流出による人の空洞化』『農林地が荒廃化する土地の空洞化』『機能の低下した村の空洞化』という課題を記しています。

参考:総務省 山村再生の課題

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過疎化の現状

総務省の公表しているデータによりますと、過疎地域の人口ついては、全国の 8.2%を占め、市町村数では半数近く、面積では国土の約 6 割を占めている現状です。

過疎化が現れ始めたのは、昭和35年で総人口に対して 22.4%の割合でしたが、その後、過疎地域の人口割合は減少して令和 2年には 8.2%となっています。

過疎地域の年齢層別人口【昭和 35年から令和 2 年までの推移】を見ますと、0〜14 歳の構成比は 34.8%から 9.9%に大きく減少し、15〜29 歳も同様に減少しています。一方、65 歳以上の高齢者層については、構成比が 6.8%から 40.2%へと大幅に上昇しています。

参考:総務省  令和2年度版 過疎対策の現況

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過疎化になるまでの流れと原因

過疎化になるまでの流れ

1950年〜1970年代までの「高度経済成長」をきっかけに、農村・漁村から都市部に向けて若年層の移動現象が起こり、「過疎化」の流れが始まっています。

その後、人口が減って残された親世代の高齢者たちは、農業や漁業への生産機能が低下し土地の管理等が行き届かない状況が起きます。

若い労働力の欠落と村の機能低下によって、地域住民のメンタルや健康状態も弱まり、相互援助や地域の安全面、衛生面等も低下している傾向です。

また、過疎化現象によって、地方の税収が減ることで行政サービスなどができなくなり、都市部と地方での地域格差が生じてきています。

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過疎化になる原因

日本の少子高齢化に伴い、地方から都心部へ人口が流出したことが主な原因です。

現況では、都心部へ移動する年齢層は10代後半〜20代の若者が占めており、特に、交通アクセスの不便な地域や離島などの若者は、進学や就職をきっかけに地方から移動する傾向にあります。

地方からの人口流出は、東京に集中する傾向があり、総務省のデータでは、転入超過となっているのは東京都をはじめ、神奈川県、埼玉県など11都府県となっています。

2022年度の東京へ転入した人口数は、9万9519人で、前年比1万7820人の増加となっています。

参考:国土交通省:東京一極集中の現状と課題
   総務省:住民基本台帳人口移動報告 2022年(令和4年)結果


過疎化の問題点

高齢化の進んだ集落では、空き家問題や商店が閉鎖されるなど、また公共交通の利便性に欠ける等、維持機能が低下しています。

また、病院や診療所が減って医療サービスが容易に受けられないことや、教育や就活環境なども確保できなくなっています。

さらに、地域に根付いた伝統的文化や特産品などの後継者不足の問題もあります。

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空き家問題

空き家問題とは、居住者不在で長く放置された家によって起こる問題です。

具体的には、景観や衛生上の問題や倒壊や犯罪に関わる安全面での問題などがあります。

空き家については、所有者の私有財産であるため、行政や地域住民が勝手に手を出して処分することはできないため、いわゆる「空き家問題」が発生しています。

最近では地方移住を促進する流れも一部では始まっていますが、いまだ人口は、東京一極集中する傾向があり、地方に残された空き家を再利用する取り組みが各自治体によって少しづつ動き出している状況です。

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医療問題

過疎地域では、医師の高齢化や医師不足等の問題があり、医療環境が行き届かない状況が続いています。

専門医が足りない状況に加えて高齢者が医療施設まで移動する手段も難しい状況で、お年寄りが安心して病院に通える体制が整っていません。

日本では少子高齢化に伴い、医師の需要が高まっています。

しかし、医師は地方よりも都市に集中する傾向があるため、医師不足による地域格差が生じています。

インフラ維持の困難

高齢化のため、手入れの行き届かなくなった貯水槽や水道施設の老朽化、水源の枯渇などで生活用水の確保が難しくなっている現状があります。

しかし、どの自治体も財源に余裕がないため、水道管や道路、電気などのインフラに十分なお金を回すことができません。

人口が少ない過疎地域よりも、人口が集中している所のインフラ整備や観光資源などに十分な予算を充てるでしょう。

過疎地域では、インフラ整備が十分に行き届いていないことも生活していくうえではリスクとなっています。

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食料自給率の低下

多くの過疎地域では、農業、林業、漁業などの一次産業を主な産業として、人々が暮らしています。

そのため、間伐などが定期的に行われ、耕作に適した土地が整います。

また、山林を間伐することによって海にも良い栄養が渡り、海の生命が豊かになるのです。

しかし、高齢化が進んで農林業・漁業をする人がいなくなれば、耕作などができない土地になってしまうという問題が起こります。

そもそも、第一次産業をする人がいなくなるという問題が起こり、国産の農産物や水産物が減ってしまいます。

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過疎化に対する国の取り組み

国が取り組む過疎化対策については、1970年の「過疎地域対策緊急措置法」に始まり、2000年には「過疎地域自立促進特別措置法」によって進められてきました。

「過疎地域自立促進特別措置法」については以下の内容となっています。

対象地域:人口の著しい減少に伴い活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低下している地域

目的:必要な特別措置によって、過疎地域の自立促進を図り、住民福祉の向上、雇用の増大、地域格差の是正及び美しく風格ある国土の形成に寄与すること

具体的な対策

1)産業基盤の整備、農林漁業経営の近代化、中小企業の育成、企業の導入と起業の促進、観光の開発等を図ることにより、産業を振興し安定的な雇用を増大すること

2)道路その他の交通施設、通信施設等の整備を図り、過疎地域とその他の地域と過疎地域内の交通通信連絡を確保し、過疎地域における情報化と地域間交流を促進すること

3)生活環境の整備、高齢者の保健と福祉の向上と増進、医療の確保と教育の振興を図り、住民の生活の安定と福祉の向上を図ること

4)美しい景観の整備、地域文化の振興を図ることで、個性豊かな地域社会を形成すること

5)基幹集落の整備と適正規模集落の育成を図ることで、地域社会の再編成を促進すること

参考:過疎地域自立促進特別措置法

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過疎化に取り組む企業3選

株式会社LIFULL

https://lifull.com/

LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、個人が抱える課題から、その先にある世の中の課題まで、安心と喜びをさまたげる社会課題を、事業を通して解決していくことを目指すソーシャルエンタープライズです。

現在は、グループとして世界63ヶ国でサービスを提供しており、主要サービスである不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」をはじめ、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」などの事業を展開しています。

【株式会社LIFULL 内定者】社会貢献が仕事になる社会を創るために~吉田宏輝~

ランサーズ株式会社

https://www.lancers.co.jp/

ランサーズは、「個のエンパワーメント」の実現を目指して、フリーランスマッチングプラットフォームを運営しています。

地方創生において、クラウドソーシングという「新しい働き方」の仕組みと、それを実践する「人」を活用した地方創生を、地方自治体に提供し、地域の活性化を図るサービスを行っています。

株式会社さとゆめ

https://satoyume.com/

株式会社さとゆめは、人を起点として、地域に事業を生み出す会社です。

「ふるさとの夢をかたちに」という企業理念を掲げ、伴走型のコンサルティングを行っています。

観光ブランディングのプロモーション支援やアンテナショップの立ち上げ支援、道の駅の開業支援などが過去の実績としてあります。

まとめ

過疎化の問題は、地方の居住者に限らず、日本全体の問題として考えていきましょう。

地方の過疎化は、一方では都市部の過密化を増大させる現象を起こしています。

過疎化の問題について、身近に起こっている状況から関心を持っていきましょう。

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