進む超高齢社会、迫る「2025年問題」(※)。

あの梅沢富美男さんもついに終活をしたと聞き訪ねてみたら、「俺に聞くなよ!」と一蹴!?

老いの不安を吹き飛ばす、愛あるメッセージを頂きました。

※2025年問題…日本に約800万人いるとされる団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者になることで起こる、労働力不足や介護・医療現場のひっ迫、社会保障費の負担増などさまざまな問題の総称

梅沢 富美男さん

梅沢 富美男(うめざわ とみお)
「梅沢富美男劇団」座長。「下町の玉三郎」の異名を 持つ大衆演劇の女形スター、大ヒット曲「夢芝居」を 擁する歌手。タレントとしてもテレビで見ない日はない人気ぶり。福島県出身、73歳。オフィシャルサイト 梅沢富美男チャンネル/https://umezawatomio.jp/

 

公開 2024/01/24(最終更新 2024/03/29)

編集部

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千葉・埼玉県在住の編集メンバーが、地域に密着して取材・執筆・編集しています。明日が楽しくなる“千葉・埼玉情報”をお届けします!!

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「人生大学」の経験を伝えることも終活だ!

2025年問題って、団塊世代が75歳になって超高齢社会でいろいろ大変だってこと? そんな難しいこと俺に聞かれても答えられませんよ! 

でも、後期高齢者の枠に入れられたからって自分で自分を老け込ます必要はないでしょ。今の75歳なんて若い若い。

そりゃあね、見た目は衰えますよ。若い頃と同じようにできないのも当たり前。でも精神とそれとは別。見た目をきれいにしたいんだったら、余裕があるならどんどんケアすればいいし、周りの人が「あいつはもうジジイだ」って思ってたって、自分で自分を老けさせることはないじゃないですか。

足腰丈夫で元気なら外に出て働きましょうよ。できること、やることなんて、いっぱいある。趣味を楽しむでも、ボランティアでもいい。僕は団塊世代の一つ下だけど、先輩方にはあえて「老け込むなんて10年早い!」って言いたいね。

梅沢 富美男さん
「自分で自分を老けさせる必要はないでしょ!」

戦後の昭和を生きてきたんだもの、やっぱりバイタリティーが違いますよ。「働かざる者、食うべからず」「働いて稼いで出世するんだ!」って、そういうガッツで夢をかなえてきた世代ですよ。酸いも甘いも「人生大学」で経験してきた、乗り越えてきたバイタリティーがある。そんな先輩たちがシュンとしてたらおかしいよ。

この「人生大学」って、僕がテレビとかで共演する高学歴の人たちにいつも言う言葉なの。「俺は中学しか出てないけど、その代わり『人生大学』ってところがあるんだったら、俺の方が上だぞ。あんたらが大学で勉強してる時間に俺は働いて働いて、生き抜くための技術と経験を積んできたんだ」ってね。

先日、事務所を建て替えしたんだけど、その工事現場でも結構なベテラン職人たちがバリバリ働いてましたよ。彼らには長年で身に付けてきた技術があるからね。2~3年で身に付けられるもんじゃない。そうやって自分の培ってきた技術と経験をバリバリ発揮して、下の世代、若い人たちに見せて、伝授して、継承していく。

それを「終活」って考えたらいいんじゃないかな。僕はいつもそう思ってやってますよ。

梅沢 富美男さん
舞台での妖艶な女形姿は必見。「テレビの毒舌オヤジの姿しか知らない人は、一度舞台を見に来てほしいね」と梅沢さん

そう考えると、僕は自分でいい性格してるなって思いますね。老け込む要素が一つもない。まだまだ働かなきゃ!

歌舞伎や能はね「守るべき伝統芸能」として手厚い保護がある。でも大衆演劇はそういうの一切ないの。役者は芸術家じゃなくて、見世物ですからね。お客さまが飽きたらそこで終わり。今日は満員でも、明日はガラガラかもしれない。そういう世界でずっと生きてきたから、精神的に強いんですよ。そういうのはきっと体からにじみ出ているだろうし、言葉からも伝わっているんだと思うんです。

一時は「老害」とかいっぱい言われてきましたよ。でも「おまえらに分かるもんか」と踏ん張って頑張ってきた。それが今の梅沢富美男なんでしょうね。時代に一番そぐわないタレントなのに、そぐっちゃった(笑)。それはやっぱり、あの時代を生きてきたバイタリティーがあるからだと僕は思います。

梅沢 富美男さん

小道具や衣装を処分して分かったこと

皆さんの参考になるような話としては、昨年、舞台衣装や小道具を一気に処分したことかな。千葉に大きな倉庫があるんだけど、「ここから向こう、全部捨てるぞ」って、合計36トン分! 劇団員総出で1週間かかりました。

うちの妹やマネージャーは、ためらってましたね。母が縫ってくれた衣装や、兄貴が使っていた化粧台なんかも、一切躊躇せずに全部捨てましたから。

元々、僕は物欲もないし、過去を振り返るのも大嫌い。だって振り返っても戻ってこないじゃないですか。だからこれまでいただいたトロフィーとか賞状とかも一切手元に残していません。

そんな僕だって鬼じゃないからね、「ああ、兄貴がこれで化粧してたな…懐かしいな」って思い出はありますよ。残してあげたい気持ちはあるけれど、そこは冷静に「取っておいたら兄貴が戻ってくるのか」って。そしてもし僕が突然逝ったとしたなら、その時誰がこれを処分するのか。

だから、処分したことで気持ちもすっきりしたし、安心できました。僕には思い出も思い入れもあるけれど、妻や家族には関係ないものだから、これを残されたら大変だったよな、って。処分するのにもお金がかかりますからね。

でもね、ただ一つ。

親父の時代からずっと舞台で使い続けている衣装があるんですよ。「貧乏人の娘」の衣装です。それが今はもう作れないんです、生地がないから。絣なんですけど、今の生地で作ると柄が新しくて微妙に違う。長年使ってきたので色が掠れてて、それがいいんですよ。舞台にスッと出ただけで「あ、貧乏人の娘だ」って分かる。これだけはもう手に入らないし、今もお芝居で使っているので残しました。

僕らの劇団にしてみたら、その衣装は国宝級です。トロフィーなんかよりもずっと価値がある。だって、僕の花魁の衣装作るだけで700万円くらいかかりますけど、同じ700万かけたってその貧乏人の娘の着物が手に入ることはありませんから。古い着物は骨董市なんかで売ってるかもしれませんが、昔の人は背が低かったから着物の丈も短いんです。結局、今の人が着るには生地が足りないんですよね。だからね、「これだけは捨てられない」って残したんです。

「終活」って寂しく聞こえる言葉だけど、僕は自分でやってみて、そんな風に「これだけは」と思えるものを再確認できて、安心して「よし、また頑張ろう」って前向きな気持ちになれたんで、悪くないなって。

皆さんも、まずは物を捨てる「終活」から始めるの、お勧めですよ。体も動かすしね。

梅沢 富美男さん