デザインフィル流山工場

スケジュール管理やメモをデジタル化する人も増えた昨今ですが、やっぱりアナログの代表、ノートの良さは捨てがたいもの。
今回、日本のみならず世界中で人気の「トラベラーズノート」に注目。
実はトラベラーズノートを作る工場は、千葉県流山市にあります。
モノ作りの現場を訪ね、商品へのこだわりやその魅力について担当者の方に教えていただきました。

 

公開 2022/07/22(最終更新 2024/01/04)

花

48歳で普通自動二輪免許を取得したへっぽこアラフィフ主婦ライダー。千葉は魅力的なライディングスポットがたくさん!取材と称してソロツーを楽しんでいます。【ブログ】https://ameblo.jp/ohana-hann/

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世界でも人気の「トラベラーズノート」とは

トラベラーズカンパニーが手がける「トラベラーズノート」をご存じでしょうか。
トラベラーズカンパニーは、70年以上前に創業した文具メーカー、株式会社デザインフィルが展開するブランドのひとつです。
そんな老舗文房具メーカーが生み出したトラベラーズノートは、2005年に社内コンペの企画として誕生し、好評につき2006年3月に商品化されました。
その作りは牛革のカバーに差し替え自由のリフィル(ノート)を挟んで使用するというシンプルなもの。しかしそれが「自由度の高い使い方ができる」と、約53の国・地域で販売される人気商品となりました。

トラベラーズノート
冒険家の手帳のようでカッコいい!レギュラー/パスポートの2サイズがあります

中に挟むリフィルには、無地、横罫、方眼、ダイアリーなどの定番から、クラフト紙や画用紙など多くの種類があり、差し替えることでビジネスシーンからクリエイティブ活動まで幅広く活用できます。

カバーには上質な牛革が使われていて、使うほどに経年変化していくのが特徴。またその変化が使う人によって違うのも面白いところです。
自分だけの革カバーに育てたトラベラーズノートを、チャームやクリップなどのオリジナル商品でカスタマイズすれば、誰とも違う自分だけのノートに育てていけるのです。

自分だけのトラベラーズノート
私は公式の商品に自分が見つけたパーツや100円ショップの雑貨などを組み合わせて楽しんでいます

ちなみに「トラベラーズノート」という名前には、旅用のノートということだけでなく、「日常を旅するように過ごす相棒として使って欲しい」という想いも込められているそうです(私は旅専用ノートだと勘違いしていました)。

トラベラーズノートを生み出す重要拠点「デザインフィル流山工場」を取材

1964年に建設された「デザインフィル流山工場」では、トラベラーズノートの多くのリフィルを作り、タイのチェンマイで作られた革カバーにセットして、出荷するまでを担っています。
今回この流山工場で、トラベラーズノートができるまでを取材しました。

貴重なシーンの一部は、特別に動画でも撮影させていただきましたので、YouTubeチャンネル「ちいき新聞TV」でもぜひご覧ください!

1.リフィルの罫線を印刷するための版をつくる

トラベラーズノートのリフィルのほとんどがオフセット印刷で作られています。まずはオフセット印刷に使用するための版を作ります。

リフィルの罫線を印刷するための版をつくる
よく見るとトラベラーズノートリフィルのノート罫がうっすら見えます

2.印刷する

版ができたら全長13メートルもあるオフセット印刷機で印刷していきます。

オフセット印刷機で印刷
刷りあがった用紙は、その場で印刷のずれやインクの発色をチェック

天井の加湿器

印刷で特に重要なのは紙の状態の管理。
天井にはいくつもの加湿器が設置され、工場内の湿度が印刷に適した55%になるよう作動しています。

ショップカードや限定版リフィルの表紙の作成は、活版印刷で行っています。
微妙な調整が必要なうえに手間と時間がかかりますが、温かみのある風合いや質感にはファンも多く、流山工場ではデザインによって活版印刷を採用しています。

活版印刷機と、それを操る熟練の職人
活版印刷機と、それを操る熟練の職人、小松さん

昔ながらの印刷方法であるため、現在では活版印刷機はほとんど製造されていません。
流山工場で使用している印刷機は、40年ほど前に作られたドイツのハイデルベルグ社製の活版印刷機を完全オーバーホールしたものなのだとか!

活版印刷で作られた限定シリーズ「トラベラーズレコード」リフィルの表紙
活版印刷で作られた限定シリーズ「トラベラーズレコード」リフィルの表紙

インクが乾くのに時間がかかるため、印刷できるのは1面1日1色のみ。
ブルー、グリーン、オレンジと、乗せる色ごとに版が分かれています。
数色をずれることなくぴたりと印刷する、小松さんの職人技が光ります。

3.加工・製本

印刷された用紙の切断

印刷された用紙はリフィルのサイズに断裁し…

リフィルの順番と枚数に揃え、製本機で綴じていく

リフィルの順番と枚数に揃え、製本機で綴じていきます。
落丁や乱丁がないかをチェックしたら、リフィルはこれで完成です。

4.検品・アッセンブリ(組み立て)

完成したリフィルを革カバーにセットすればトラベラーズノートの完成!
なのですが、今回さらに、2022年度版限定シリーズの製作過程も見学させていただきました。

トラベラーズノート2022年度版限定シリーズの制作過程

革カバーに箔押し機で1枚1枚箔押し加工を行い、

革カバーに、箔押し機で1枚1枚箔押し加工する

加工された革カバーを検品、限定リフィルとセットします。

小さな箔のかけらを、手袋や粘着テープを使って丁寧に取っていく

どうしても付いてしまう小さな箔のかけらを、手袋や粘着テープを使って丁寧に取っていきます。
皆さんの優しい手つきから、商品に対する愛情が伝わってくるよう!

トラベラーズノート2022年限定シリーズ
2022年限定シリーズ(公式HPより)

こうしていくつもの工程と人の手を経て完成したトラベラーズノートは、この工場から国内はもちろん世界中に出荷されていくのです。

デザインフィル流山工場

トラベラーズノート担当者に聞く、モノ作りにかける想い

今回工場内を案内してくださったのは、デザインフィルトラベラーズ事業部の石井さんと、広報の中村さん。

生産担当の石井さんは、プロデューサーの飯島さん、アートディレクターの橋本さんと共にトラベラーズノートを作り上げてきたお一人です。
そして中村さんはメディアやユーザーに情報を発信するプロ。
トラベラーズノートに一番近い「作り手」の方々にその世界とモノ作りにかける想いなどをうかがいました。

デザインフィルトラベラーズ事業部 中村さん
中村さん

――工場を見学させていただき、想像以上に人の手がかかっていて驚きました。

石井さん:流山工場はデザインフィルの自社工場なので、デザインや商品開発を行うクリエイターと、実際に商品を作る現場との距離が近いんです。
お互いすぐに相談できるので、試作を繰り返しながら製品を完成させられるなど多くの利点があります。

――モノ作りをするうえで、大切にしていることを教えてください。

中村さん:他のブランド含めて、作り手と現場、全てのスタッフが同じ想いを持ち、お客さまに喜んでもらえるものを作ろう、という気持ちを持つことでしょうか。トラベラーズノートは「本当に自分たちが欲しいと思えるプロダクト(製品)を作りたい」という想いから生まれました。このノートを持つことで、毎日が少し豊かに過ごせるきっかけになっていただけたらうれしいです。

――トラベラーズノートの世界観とはどんなものでしょうか?

中村さん:言語化するのは難しいですね。言葉で説明するよりもトラベラーズファクトリー(トラベラーズノートを中心としたステーショナリー、カスタマイズパーツ、オリジナルグッズ、雑貨のお店)を見ていただくのが一番早いかもしれません。年代も性別も異なる作り手のものづくりへの想いが一致したときにはじめて形になります。
トラベラーズファクトリーでは文房具に限らず「トラベラーズノートの世界と通じる」と感じたモノ作りの仲間とコラボなどもしています。

石井さん:大勢の人に刺さる商品でなくていい。100人いればそのうちの1人に「大好きだ!」と言ってもらいたい、その1人を増やしていきたい、というスタンスですね。

――流山工場では以前、自分だけのオリジナルノートが作れる「ノートバイキング」という社内向けのイベントがあったそうですね。

石井さん:そうそう、自分で好きな紙を選んで、職人さんが手でクルクルってスパイラルリングで綴じてくれるんです。とっても楽しいですよ!
残念ながら不定期で、いつ開催するのかは未定なのですが…開催する際はインスタで告知すると思うので、チェックしてみてくださいね。

中村さん:コロナ前は地域の小学生の工場見学も受け入れていました。状況を見ながら再開したいと思っています。

まとめ・あなたはノートをどう使う?

シンプルなだけに、ユーザーによって使い方が無限に広がるトラベラーズノート。

スケジュール管理や記録を取るだけならデジタルでも十分に役割を果たしてくれますが、モノを持つこと、形に残すことでしか得られないものがあるはず。
今回の取材を通し、私も自分だけのトラベラーズノートと10年20年と歩んでいきたいと、ますます愛着がわきました!

あなたならこのノート、どう使いますか?

トラベラーズノートをカスタマイズ
シンプルなデザインで自分好みにカスタマイズできるので長く使えます。リフィルを2冊、3冊いれてパンパンになるのもまたかわいいのです。今は趣味で使っていますが、ビジネス用にしても違和感がないので用途を見直すかも

 

株式会社デザインフィル
東京都渋谷区恵比寿1-19-19 恵比寿ビジネスタワー9F(本社)
千葉県流山市木25(流山工場)

トラベラーズカンパニー

直営店・トラベラーズファクトリー各店舗
TRAVELER’S FACTORY NAKAMEGURO (Flagship shop)
東京都目黒区上目黒3-13-10
OPEN :12:00 – 20:00 / 定休日:火曜日 / TEL:03-6412-7830

TRAVELER’S FACTORY AIRPORT (NARITA INTERNATIONAL AIRPORT)
千葉県成田市成田国際空港 第1旅客ターミナル 中央ビル 本館4階
OPEN :8:00 – 20:00 / TEL:0476-32-8378

TRAVELER’S FACTORY STATION (TOKYO STATION)
東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東日本東京駅構内地下1階 改札外
OPEN :10:00 – 22:00(月~土)
OPEN :10:00 – 21:00(日曜日・祝日)
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TRAVELER’S FACTORY KYOTO
京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル 場之町 586-2 新風館1F
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