実は私たちのくらしの身近な場所にいる生き物「地衣類」をご存じでしょうか。5月8日まで実施されていた千葉県立中央博物館の企画展「苔松苔梅展」へ足を運び「地衣類」について調べてみました。

 

地衣類とは?

地衣類は菌類が藻類と共生した生き物。地衣類は石・樹木の肌など身近な場所にいるので、探してみよう!

地衣類とはなにか
(「千葉県立中央博物館 苔松苔梅展」パネルより/提供:原田 浩・坂田歩美)

公開 2022/06/11(最終更新 2022/06/10)

鴨見流留

鴨見流留

趣味 お料理・サイクリング・イラスト・DTM・ビーチクリーン・映画鑑賞 … などなど 千葉県八千代市在住 Twitter/@kamomi_ruru

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菌類と藻類が手を組んで役割分担

私たちの身の回りには苔と呼ばれる生物が多くいます。そのうちの一つが地衣類という生物です。

地衣類は菌類が藻類と共生した生き物。菌類は紫外線や乾燥から藻類を守り、水分やミネラルを提供します。
一方藻類は光合成によって糖分を作り出し菌類に与えます。樹木の木肌にも見かけますが、栄養を得ているわけではありません。

その証拠に注意して身近を見渡せばコンクリート・石灯籠・ガードレール・建物屋根の防水シートなどでも見かけることができます。

「地衣類」の世界と魅力

石灯籠・ガードレールに付くウメノキゴケ(写真提供:千葉県立中央 博物館 原田 浩・坂田歩美)
石灯籠・ガードレールに付くウメノキゴケ(写真提供:千葉県立中央 博物館 原田 浩・坂田歩美)
道路標識に付くコナヒメウメノキゴケ(写真 提供:千葉県立中央博物館 原田 浩)
道路標識に付くコナヒメウメノキゴケ(写真提供:千葉県立中央博物館 原田 浩)

くらしや伝統文化と地衣類のつながり

お正月には地衣類が付いた松や梅を生けますが、この松と梅は「苔松苔梅」と呼ばれ、珍重されています。花を嗜む人々にとって憧れの存在。室町時代に発祥し、江戸時代前期に大流行した立花にも苔松苔梅が使われます。

地衣類は詩の世界では中国の「詩経」の一族和合・繁栄の象徴、日本の万葉集では子孫繁栄・長寿の象徴。

屏風絵や日本画、能舞台の鏡板の老松にも描かれるように、老松や梅の木に苔が付く様子を描く文化は、世界を見回しても日本しかありません。

未知の領域だからこそワクワクする

「研究はまだまだこれからで、実は身近に生育している地衣類でさえ、名前がついていないものもあります」と話すのは、千葉県立中央博物館職員の坂田歩美さん。

地衣類にはレカノール酸やジフラクタ酸といったさまざまな特有の成分がありますが、中にはリトマス試験紙や香水などに使われるものも。新たな発見や応用に期待が寄せられます。

坂田さんは、日本産広義リトマスゴケの専門家で2009年より分類に着手、4種の新種と3種の日本新産種を発表しました。
「地衣類は種類によって色や形がさまざまです。さらに顕微鏡で観察すると実に多彩なんです」と坂田さんは目を輝かせました。

ウメノキゴケ染め紬織り着物(写真提供:千葉県立 中央博物館 原田 浩)
ウメノキゴケ染め紬織り着物(写真提供:千葉県立 中央博物館 原田 浩)

 

千葉県立中央博物館オフィシャルサイト
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/