2023年7月20日にケムコ(開発元:ライドオン)から発売予定のSPRG【クロステイルズ(CROSS TAILS)】の体験版をプレイしたので、感想や期待点/懸念点などを書いていこうと思う。
私はSPRGが好物なのでSteamで体験版を触ってみたが、ジョブシステム導入による育成・戦闘には期待が持てる一方、シナリオが非常に淡白であり本作の柱としている「二人の主人公それぞれの視点から物語を追い、本当の真実を知ろう」を楽しみきれるかは少し懸念に感じてしまった。
体験版の範囲ではあるが、本作の肝となりそうな「育成」「戦闘」「ストーリー」を軸として評価・感想を書いていく。なお、体験版自体では戦闘3マップ分を公開しており、体験版クリアまで2時間弱のプレイ内容となる。
クロステイルズ体験版 良かった点、気になった点まとめ
まずはクロステイルズ体験版をプレイして感じた良かった点と気になった点を簡単にまとめておく。
良かった点:
- 期待の持てるジョブシステム
- お金で成長させるスキルツリー
- 弱点を補うことも長所を伸ばすこともできる信仰と装備改造システム
- スピードの概念があるターン制バトル
- 絵の雰囲気が獣世界の世界観に合致していて良い。キャラも可愛い
気になった点:
- 薄味で淡白に感じるストーリー
- 周回におけるリプレイ性があるのかどうか
- 戦闘の視野が少し狭い、装備が瞬時に確認できないなど後少し良くなればと思う戦闘UI
クロステイルズのゲーム概要
犬族の住まう『ランヴェルフルト王国』
猫族の集い『ヒディーク共和国』
そして数十年にも及ぶ両国の戦争二人の主人公それぞれの視点から物語を追い、本当の真実を知ろう
◆◇二人の主人公◇◆ ~獣達の瞳が映し出すものは~
犬族の若き隊長『フェリクス』猫族の部族姫『シャイマー』
選んだ主人公によって異なる仲間達と共に戦うことになり、戦略性も変化する。
クロステイルズ Steam販売ページより
- 対応プラットフォーム:
Steam、PS4/PS5、Nintendo Switch、XBox SeriesX/S、XBox ONE - 発売日:2023/7/20
- 価格:DL版3000円、パッケージ版3600円(税込み)
ジャンルはSRPGであり、戦闘システムはライドオンから出されているSRPGの「マーセナリーズシリーズ」がベースとなっている。
ゲーム開始時に2人いる主人公から1人を選択し物語が始まっていく。体験版では猫族の「シャイマー」のみ選択可能。
戦闘はクォータービュー・スクエアグリッドのオーソドックスなSRPG。MPはバトル開始時は0でターン毎に回復していくシステム。
戦闘パートとストーリーパートを繰り返し、戦争関係にある二国の物語を追っていくこととなる。
育成に関する感想と期待
育成システムの概要
はじめに育成システムについて書いておこうと思う。
■ジョブ
本作ではジョブシステムが採用されている。キャラごとの固有ジョブ1つ+汎用ジョブを最大2つまでセットすることができる。ジョブの数は30種類を超えるとのことで、様々なスキルセットの組み合わせを探索することができる。
上位ジョブが用意されているので、基本ジョブのランクを上げていくことで更に強力なジョブに転職できるようになる。ちなみにジョブランクはジョブポイント(JP)を一定まで溜めることで上がり、JPは戦闘に勝利すると得られるようになっている。
ジョブごとに能力値補正も設定されている。単純な補正なのかレベルアップ時のステータス成長にも影響するのかは分からないので楽しみなところである。
■スキル
スキルは各ジョブでスキルツリーが用意されており、お金を消費することでスキル習得やスキルレベルを上げることができる。スキルレベルを上げると、一般的な攻撃スキルだと威力増加や攻撃距離が伸びるとともに消費MPが減少していくことが多い。一方、回復系スキルの多くは回復量の増加や、治療できる状態異常が増えていく代わりに消費MPが増加していくものが多かった。
スキル自体は、戦闘中のアクションで使用する「アクティブスキル」と、装備することで自動的に発動する「パッシブスキル」に分かれており、パッシブスキルの装備可能数はレベルupで増加していく。また、ジョブチェンジした後も習得済みのパッシブスキルは装備できる一方、アクティブスキルは現在のジョブのスキルのみを使用できるようになっていた。メインジョブ+サブジョブの2種類のアクティブスキルが使えることになるので、ここもFFTに似ている点である(FFTでは、現職のアクションアビリティ以外にも習得済みの任意のアクションアビリティを1種装備できた)。
■信仰と装備改造
各ユニットは「信仰」する神を設定でき、それぞれ異なる能力ボーナスが得られるようになっている。戦闘中以外では自由に信仰を付け替え直せるため、ジョブなどに合わせて欲しいボーナスを選べるようになっている。
また、戦闘報酬やショップ購入などで「ルーン石」を獲得することができる。このルーン石は装備を改造することで取り付け可能である。それぞれのルーン石には「物理攻撃力up」などの付与効果があるため、各キャラ補いたい能力を底上げすることができる。
信仰神とルーン石のシステムにより、火力ユニットの攻撃力を更に上げても良し、低めの命中率を補っても良しと、育成の幅を少し広げてくれそうなものであった。
育成関連の感想と期待
まず何よりも豊富なジョブが用意されていることが嬉しかった。固有ジョブ含めて30種類程度だともう少し欲しいと感じるかもしれないが、もし汎用ジョブだけで30種類ほど用意されているのであれば、汎用ジョブの組み合わせを色々探索するのが非常に楽しみになりそうだ。製品では実際にどうなるのか期待しておきたい。
上位ジョブへの転職が下位ジョブのランクを一定まで上げることで可能になるのも、ファイナルファンタジー・タクティクス(FFT)のシステムを思い出し個人的にはとても嬉しい。是非とも尖った性能(単純な最強職ではない)の上級職があって欲しいものだ。
スキル習得に関してお金を払うことで習得していくのも面白かった。味方全体のバランスを考えつつ、お気に入りのユニットを集中して強化することも出来るようになっており、人によって育成の幅が出るのではないかと感じた。
本作は周回プレイが前提の作りとなっていると考えられるため、周回によって異なるジョブビルドを試せたり、重点的に育てるユニットを変えられるのはリプレイ性を上げるためにも喜ばしいことだと思う。このリプレイ性が弱いゲーム、例えば周回で「高難易度で挑戦できます!」という要素はあるが成長に自由度や幅がない場合だと周回する楽しさが感じにくくなりがちなので、本作には期待したいところである。
体験版では序盤3マップのみのプレイなので基本システムしか確認できないが、育成要素のベースとしてはよく出来ているように見えた。強ジョブが決まっている/使えないジョブが多いなどで実質的なジョブの選択肢が無かったり、ゲーム終盤に覚えたいスキルが少なくなるといった事にならない限りは育成が楽しめるのではないかと思えるものであった。どのようなジョブやスキルが出てくるのか今からワクワクして発売日を待ちたいと思う。
戦闘関連の感想
■スピードを加味したターン制バトル
戦闘は見下ろし型でスクウェアグリッド(四角のマス)のオーソドックスなターン制SRPGと書いたが、特徴的なポイントが1つある。ターン制ではあるのでユニットが行動できる回数は1ターンに1度だけだが、ターン内の行動順はユニットのスピード(俊敏)によって決まり、敵味方入り乱れて行動する点だ。
一般的なSRPGでは、味方ターン→敵ターン→味方…という行動順となる交互ターン制(ファイアーエムブレム、ディスガイアなど)か、ユニットのスピード順に行動していくウェイトターン制(FFT、トライアングルストラテジーなど)であることが多いが、本作は両者の良いところを取り入れているように感じた。交互ターン制と比較すると行動順を考慮して戦う必要があるので戦術性は増し、ウェイトターン制のようにスピードが速すぎるユニットが何度も行動して無双するようなことも無くなる。個人的に戦闘システムで気に入ったポイントの一つであった。
■高低差
高低差により、ダメージの増減や遠距離攻撃(弓)での攻撃距離upの効果があり、高さを意識した戦い方が重要となりそうだった。体験版中ではちょっとした高所から弓攻撃を行うとかなりダメージが増加したため攻撃時は痛快であるが、相手が高所をとって弓攻撃してくると非常に厄介になりそうで攻略のしがいがありそうだ。
戦闘全般を見てもオーソドックスなSRPGに少しスパイスを加えた丁寧な作りに見えて印象は良い。本体験版では解放されていない要素である「獣神スキル」の存在がどのように戦局に影響を与えていくのかも楽しみである。
■難易度設定
戦闘難易度についても触れておく。難易度はイージー、ノーマル、ハード、マニアックの4段階の難易度が用意されている。
別のゲームの話になってしまうが、同じ開発元のSRPG「マーセナリーズラメント」では1周目に難易度ハードを選ぶと非常に敵が強くやりごたえのある戦闘を楽しめるものであった。取れる手段が少ない序盤の一部マップでは、稼ぎプレイなどを行わないと割とギリギリの戦いを強いられる場合もあったりするが、強敵との戦いを求めるプレイヤーにとっては高難易度を選べる点は非常に良かった。
本作でもハード、マニアックが選択できるようになっているため高難易度の戦闘を楽しめるようになっている。体験版の感触では、難易度ノーマルでは少し弱めで苦戦することはない程度だったので、難易度ハードでは敵が弱すぎずけれども理不尽に強すぎないくらいの丁度良い難易度であると個人的には嬉しいなと思う。
一方、SRPGにあまり慣れておらず戦闘が難しいと感じる人には難易度イージーが用意されている上に、「フリーバトル」で経験値・お金を稼げるようになっているため救済措置は十分に用意されている。「SRPGはあまりやったことが無いけれど、絵柄が可愛いのでプレイしてみたい」などといった人でも恐らくクリアできるようになっているはずだ。
■戦闘UIなど
最後に戦闘UIなどについて。丁寧な作りになっていることは既に述べているが、戦闘中の装備武器が瞬時に確認できなかったりと色々と惜しい部分も見られた。ユニットのHPバー左のアイコンが恐らく装備武器を示していると思うが、説明は無かった(無かったよね?)のと、バグなのか敵の表示は消えていた。
戦闘エフェクトはやや長めで設定にて省略することが可能。ただし省略すると非常に味気ないものとなる。願わくばエフェクト省略だけでなく、戦闘高速化を選べることができたら嬉しかった。また、戦闘カメラは45度ずつ変更できて良いのだが、もう1段引いた視点にできると視認性が良くなり、遠距離攻撃時や敵の移動・攻撃範囲の見やすさが段違いになるのではないかとは感じた。
私はPS5コントローラーでプレイしてそれほど操作性に難を感じる部分はそれほど多くはなかったが、Steam掲示板を見るとキーボード操作はやりづらいとの報告も挙がっており、ここらへんが製品発売までに修正されているかも気になるところである。
ストーリーやキャラクターに関する感想と懸念
まずキャラクターデザインは非常に良かった。猫族と犬族、どちらも可愛く描かれており世界観にも良くマッチしていたと思う。可愛いだけでなく、渋めのキャラや格好いいキャラの存在も確認できており、デザイン面は非常に気に入ったものであった。
戦闘中のユニットのフチに描かれている黒い輪郭が太めで少し気にはなったが、輪郭がないと背景との区別が分かりにくくなってしまうので難しい所ではある。
次にストーリーについてだが、体験版の範囲ではそもそもストーリーパートは短く会話もすぐに終わるような薄味なものであった。また、主人公である猫族の部族姫「シャイマー」に浅はかと思わせる行動をとらせて物語を動かしていく形が目立ち、物語の展開の仕方としてそこも気になってしまった。
本作は「二人の主人公それぞれの視点から物語を追い、本当の真実を知ろう」と謳っており、ダブル主人公の物語であることも売りにしているため、ストーリーが十分楽しめるものになっているのかは少し心配である。同じ開発元のSRPGマーセナリーズシリーズのストーリーが非常に淡白であるため、余計懸念してしまっている節もある。
ダブル主人公で、それぞれにマルチエンドが用意されていることから周回前提の作りと考えられるため、周回に耐えうるストーリーになっていることを願う。向こう見ずな行動が多い主人公もきちんとした成長物語になれば全然面白くなりうるし、もう一人の主人公「フェリクス」パートではまた全然違ったストーリーを見せてくれるかもしれない。製品版では素敵な物語を魅せてくれることを期待している。
クロステイルズ体験版の感想・評価まとめ
クロステイルズ体験版の感想をまとめると、
- ジョブシステムがFFタクティクスを彷彿とさせる部分もあり非常に楽しみ
- ジョブだけでなくスキルシステムにも期待
- スピードを加味したターン制バトルは、通常のターン制とはまた少し違って楽しめそう
- シナリオはやや薄味。製品では期待したいがどうなるか
となる。
ジョブシステムやスキルは非常に好みのシステムになっていそうで、ジョブが豊富に用意されているならこれだけでも購入しようと思えるものであった。
一方、個人的な感想としては、ストーリー面には量・質ともに少し懸念があるように感じた。勿論体験版でプレイできる部分は短く、今後面白くなる可能性は全然あると思うので、キャラクターの背景なども深掘りした惹き込まれるシナリオであることを期待したい。
Steam版しか体験版がないのは難点ではあるが、気になっている人は是非実際にバトルや育成を体感して見てほしい。SRPG好きなら刺さる部分もあるだろう。私はジョブ・育成システムが非常に気に入ったので今のところ購入を考えている。ボイス無しの廉価SRPGとしての期待作となるのか、楽しみにして発売日を待とうと思う。
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