とことん自己分析。とことん企業研究。基本なくして成功なし|「好き」と「得意」の接点から才能を見つけ出せ!

株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング 代表取締役社長 小松 茂樹さん

株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング 代表取締役社長 小松 茂樹さん

Shigeki Komatsu・ 人材派遣会社、健康食品・化粧品の卸売会社を経て、2015年より株式会社日本コンサルタントグループに勤務。リーダーシップ・マネジメント、業務改善・生産性向上、キャリアデザイン、営業力強化、ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を実施。2021年2月、経営コンサルタントとして独立。同年8月に法人設立。中小企業診断士、国家資格キャリアコンサルタント、CDA(Career Development Adviser)、全日本能率連盟認定マネジメント・インストラクターの資格をもつ

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誰にでも「才能」がある。「才能」を開花させるために「好き」「得意」をどんどん増やそう

どんな仕事が向いているのかわからない、そもそもやりたいことが見つからない、そんな風に悩んでいる人は多いかもしれません。私自身、学生時代はまったくといってよいほど将来のキャリアについて考えることがないままに過ごし、大学時代は部活動の競技ダンスとアルバイトに明け暮れた日々でした。

当時は英語が得意で、漠然と海外への憧れのようなものもあったので、東京外国語大学に進学し、英語に加えてスペイン語を学ぶことを決めました。ところが入学後は、勉強そっちのけの生活。気づけば就職活動の時期も逃していて、大学5年目(1年留年しています)の秋になってようやく「これはまずいぞ」と気づき、その時点でまだ採用を続けていた数少ない企業の中からなんとか就職先を見つけました。

どんな業界に進みたいか、どんな職種が向いているかなど真剣に考えることもないまま社会人生活をスタートしたわけですね。

そんな私ですが、今、コンサルタントとして独立して仕事をしています。それは、2度の転職を経て自分が「やりたい」と思えるコンサルタントの仕事に出会うことができたからです。

まず皆さんに伝えたいことは、どんな人にも「才能」があるということ。皆さんが輝ける場、生き生きと活躍できる場所は必ずあると知っておいてほしいです

ただし、「才能」はあっても、それが開花するかどうかは別問題です。残念なことに、自分の「才能」に気づかないまま一生を終えてしまう人もたくさんいます。だからこそ皆さんには、自分がもっている「才能」に気づいてほしい。そうはいってもすぐにはなかなか見つからないものですが、それでも粘り強く「才能に気づくための行動」をしてみてください。

自分だけの才能を探すヒントになるかはわかりませんが、思うに才能とは、自分の「好き」と「得意」なことの接点にある気と考えています

だからこそ、まずはぜひ好きなこと、得意なことを増やしていってください。何が好きで何が得意かはやってみないとわかりません。とにかく色々なことに片足を突っ込んでみましょう。やったことのないこともどんどんやってみましょう。色々なことを体験すると、「これは面白いな」「これはつまらないな」「これは向いてるかも」「これは向いていないな」とわかってくるものです。

経験の幅が広がれば広がるほど、自分の「好き」「得意」の幅も広がります。「好き」と「得意」の接点が広がれば広がるほど、皆さん一人ひとりの「才能」の発見につながっていきます。

「才能」の見つけ方

20代は、とにかくいろいろなことをやりながら、自分の「才能」がどこにあるかを探す時期。1つのことを深くやってみるというより、経験の幅と絶対量を増やしてほしい。自分が想像もしなかったような、「え?」と思うようなところに「才能」が隠れていることだってあります。実際私自身も、20代の頃には苦手だと思っていた、人前で話す仕事で独立することになりましたしね。

自分だけの「才能」に気づき、それを仕事にできたなら、とてつもなくハッピーな人生が待っていますよ。

意図していなかった経験が「いつかこういう仕事に就きたい」明確にした

何とか就職先を見つけ、何とか卒業単位を取得して最初に入社したのは人材紹介会社です。同期は200人規模で、新入社員はほぼ全員一律に営業職でスタート。昼間は新規開拓の飛び込み営業をやり、夜も遅くまで会社に拘束される毎日。3年後には、200人中30人しか残っていないような過酷な環境でした。

営業がまったくできなかったので、入社後わずか3カ月で上司に「辞めたい」と伝えました。そこで会社から新たに与えられた仕事が、データの集計や分析を行うバックオフィス業務でした。「好き」とも「得意」ともまったく思っていない仕事でしたが、いざやってみると意外に楽しくて、連日深夜まで仕事漬けとなりましたが、苦しいだけではなく、楽しくもありました。

転職を考えるようになったのは、4年目となってポジションが上がり、部下をもつようになった頃です。会社の構造改革の一環でリストラ策が打ち出され、私がリストラを仕掛ける側の役割を与えられることになりました。成果を出せばまた次のリストラのミッションを与えられ、精神的にかなり消耗します。深夜までの激務が長期間続いてたこともあって、「これを続けるのは無理だ」と限界に達し、転職を決断しました。

転職活動は「得意」となったデータ収集やデータ分析のスキルを武器に進め、健康食品会社の総務部の情報システム担当で採用いただきました。スキルを生かせる仕事を探したのも確かなのですが、何よりも重視したのはプライベートの時間がしっかりとれる会社であるかという点。4年間、毎日深夜1時、2時まで仕事漬けの日々を過ごしたので、とにかく仕事以外の時間を充実させたい、という想いが強くあったのです。

2社目では、希望通り仕事はそこそこに、とにかくプライベートの時間を楽しみました。途中、東京支社から大阪本社に転勤もあり、営業企画、マーケティング、eコマース、受注管理、総務・人事、経営企画と、次々と色々な仕事を経験しました。

大きなターニングポイントとなったのが、経営企画室と人事部を兼務する役割を与えられたことです。企業経営や人事制度改革に興味関心をもち、はじめて自分の意思で専門性を磨きたいと感じたのがこのときです

さらに、勉強のために行ったセミナーの場で、人生ではじめて経営コンサルタントという仕事をしている人に出会ったことが大きな転機となりました。この出会いがなければ、間違いなく今でも会社員を続けていたと思います。

経営コンサルタントという職種と出会い、世の中には、自分の専門知識や体験を人様に教えることを仕事としている人がいるのか、と衝撃を受けたことを今でも覚えています。「いつかこういう仕事に就きたい」と、自分自身の「やりたい」がはっきりとして、はじめて起業をイメージしたのもこのときでした

小松さんのターニングポイント

それと、父は40年間経営者をやっていて、自分の心の奥底には「父のようにいつか自分の城を立てたい」という想いがあったようです。「コンサルタントの仕事で独立したい」、自分の中でキャリアビジョンが明確になり、後は行動するのみでした

「やりたい」を実現するため飛び込んだのは未知の業界

独立するためにはまずコンサルタント業界を知らなくてはいけません。コンサルタント会社への転職をスタートしたのですが、業界未経験の34歳ですから、ことごとく不採用との結果に。現実はそう簡単なものではなかったんですね。

それでもあきらめず、ようやく最後に株式会社日本コンサルタントグループに拾っていただき、人生ではじめて「コンサルタント」という肩書を名乗り、勉強しながらではありますが企業の経営課題解決に関する相談に乗る仕事を経験しました。

入社した時点で心に決めていたのは「5年で起業する」こと。独立への道を模索しながら、それまでにしっかりとスキルを身に付けることが目標でした。すでに独立して活躍しているOBの方も多く、早い段階で独立後のイメージができるようになってはいたのですが、そのときにやってきたのが新型コロナウイルス感染症の流行です。

コロナ禍でほとんどの仕事が中止となったことで一旦独立は思いとどまり、準備を整える期間へと計画を変更しました。その間に、それまで勉強時間がとれずに断念していた中小企業診断士の資格を取得しました。さらに、社会が大きく変化し、この先業界自体がオンラインへシフトしていくことが予想されたので、オンラインセミナーやオンデマンド配信の試行を重ね、教育研修事業のデジタル化に挑戦しました。

コロナが一旦落ち着いたタイミングで独立を決断。会社は去ることとなりましたが、未経験の私を拾ってくれた恩のある会社です。感謝してもしきれない会社ですので、デジタル化をはじめとした仕事のノウハウは置き土産として遺してから退職しました。

真剣に取り組んだ経験が新たな「好き」と「得意」に出会わせてくれた

今ではコンサルタントとして人前で話をすることを仕事にしている私ですが、新卒で入った会社では営業はまるっきりだめでした。年上の方とはまともに会話もできないレベルだったので、当時からすれば、コンサルタントという仕事に「才能」があるとは想像もできなかったはずです。

ところが、実際にやってみるととても楽しくて。人から褒められることも多かったことから「得意」であることも自覚するようになりました。

それに出会えたのは、1社目でのデータ分析の仕事、リストラの仕事、その後2社目で営業企画、マーケティング、eコマース、受注管理、総務、人事、情報システム、経営企画などさまざまな職務を与えられ、何とか役割を果たそうとやってきた結果だと思っています。

最近は「この仕事やる意味ありますか?」と上司に尋ねる若い方が多いと聞きます。でも、意味があるかないかなんて今はわからないものです。後になってふとしたときにはじめて「あれが今につながっているんだな、役に立っているんだな」とわかるのです

意味があるかどうか今はわからなくとも、今目の前にある機会に真剣に取り組まないのはもったいです。冷めた気持ちで取り組んでいては、その体験が後々に自分の資産になりません。熱い気持ちでやっていれば何かしらの形で自分の糧になります。

ぜひ、目の前のことに一生懸命取り組んでみてください。その経験自体が大切な財産になりますし、その先できっと、好きだと、得意だと感じられるような「才能」に出会えるはずです

小松さんからのメッセージ

とことん自己分析。とことん企業研究。キャリア選択は一切の妥協なく

就職活動をスタートするにあたっては、ぜひ自分自身を知ることにしっかりと時間をかけてほしい、と伝えたいです。どんな仕事に就くにせよ、会社の事業内容に興味をもてなかったり、好きだと感じる要素がなかったりしたら、長続きしないはずです。あなた自身のこれまでの過去を振り返って、何に興味・関心があったのか、何に夢中になったのかを掘り下げてみてください。

自分自身を知るためには、自分だけで考えないことも大事です。自分には見えていない部分もありますから、家族や友達、先生など、あなたを知る人にインタビューしてみて「私ってどんな人でしょうか?」とどんどん聞いてまわりましょう。アセスメントを活用するのもおすすめです。

自分に関するデータを可能な限りたくさん集めて、自分を理解すること。それと、自分に嘘をつかないことも大事です。世間体やカッコ良さで就職先を決めてしまうと、確実に後悔します。自分らしくいられて、自分らしさを素直に発揮できる場所かどうか? という視点で考えてほしいなと思います

自分を知るために効果的なこと

  • 過去の体験から自分のデータを集める

  • 家族、友達、先生などにインタビューする

  • アセスメントを活用する

自己分析にしっかりと時間をかけて自分を理解できたら、業界・企業のリサーチも手を抜かずにしっかりと進めていきましょう。よく考えてから入社を決めたとしても、いつかは転職を決断することもあるかもしれません。しかし、「この会社で一生を終えても大丈夫」と思えるくらい、後悔のない、真剣な業界・企業選びをした方が絶対に良いです

「数年働いて、合わなければ辞めればいいか」と安易に就職先を決めてしまうのは本当にもったいない。わずか2、3年だとしても、キャリアアップを考えるうえでは貴重な時間です。わずか数年でも無駄に使ってしまうのはあまりにもったいない、ということをよく意識して、手抜きをせずに業界研究や企業研究をしていってください。

進む道を決める前にメリット・デメリットをとことん調べ尽くそう

新卒で入る会社を選ぶ際には、大企業、中小企業のどちらに入るべきか、それぞれのメリット・デメリットをしっかりと把握したうえで、自分がどちらに向いているかを考えることが重要です。

それぞれのメリット・デメリットを踏まえて考えてもどちらが合っているかわからないのであれば、可能であれば大企業を選択した方がよい、と個人的には思います。大企業から中小企業へ転職することはそれほど難しくありませんが、その逆はなかなか難しいからです。一度大企業に入って大企業の仕事の進め方を知っておくと、その後どんなキャリアを築いても大企業とビジネスができるという強みになります。

仕事で成果を出して力をつけていくために、ぜひ伸びている業界、伸びている会社を選んでほしいというのも伝えたいですね。伸びている会社は総じて仕事はハードだと思いますが、ハードな仕事を経験した方が確実に力はつきます。伸びている会社で成果が出れば、仕事がハードでもきっと楽しいはずです。

もとめられるのは自ら考えて行動できる「自立型の人材」

これからもとめられるのは、自ら考えて行動する「自立型の人材」であると断言できます。日頃から幅広い業界の企業様とお話させていただく機会がありますが、経営者や管理職、人事部門の皆様が口を揃えておっしゃる課題は、「言われたことはできるが、それ以上のことをやろうとする人材が少ない」ということです。

企業がもとめている人材は、必ずしも指示や命令がなくても、自分が何をすべきなのかを自ら考えて行動できる人材なんです。スキルとしては、当事者意識や論理的思考力、リーダーシップ、セルフマネジメントなどが必要となるでしょう。

「自立型の人材」に必要なスキル

  • 当事者意識

  • 論理的思考力

  • リーダーシップ

  • セルフマネジメント

理想的なのは、一聞いて十を理解する人です。そのためには、仕事の目的や背景など全体像を理解して、何のためにやっているのかを考えながら仕事をしなければいけません。それは、仕事をただ作業としてこなすだけの人ではなかなか難しい。

学生のうちからでも「みんなが言うからやりました」ではなくて、たとえ間違っていたとしても、自分で考えて自分の意思で決めて動く訓練をしておきましょう

そこでぜひ実践してほしいのは、とにかく本を読むこと。もっともコストパフォーマンスのよい学習方法は読書です。本を読んで、先人の知恵を拝借するためにさまざまなジャンルの本を読みあさってみてください。自分の頭の中の引き出しに知識や知恵が豊富にあるほど、自分の頭で考えられるようになります。社会人になっても学びは続くので、読書の習慣をつくっておくことはこれからの人生においてもきっと役立ちますよ。

それと、人とのコミュニケーションの練習を積んでおくことにもぜひトライしてみてください。今はSNSを通じたコミュニケーションが主流となっているかもしれませんが、いざ社会に出てみれば、まだまだ対面や電話でのコミュニケーションが基本です。かかわる相手は年代もバックボーンもさまざまですから、学校の先生や部活のOB・OGなど、年上の人と積極的に関わり、リアルな場で話をする機会をどんどんつくりましょう。この経験を積んでおくと、社会人としてかなり良いスタートダッシュが切れるはずです。

就職活動の時点では、自己分析も業界研究も企業研究もすることなく就職先を決めた私ですが、2社目の創業者から言われた「迷ったら難しい方を選べ」という言葉が強く印象に残り、それ以来ずっと信条にしています。イージーな道とハードな道で迷ったら、ハードな道を選んでおいて間違いありません。自身の反省を込めたメッセージとしてお伝えします。皆さんにはどうか後悔のない就職活動をしてほしいと願っています。

小松さんの贈るキャリア指針

取材・執筆:小内三奈

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