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日産、2022年度通期決算は売上高2兆1721億円増の10兆5967億円、営業利益1298億円増の3771億円で増収増益

2023年5月11日 開催

オンライン説明会に参加した日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏

 日産自動車は5月11日、2022年度通期(2022年4月1日~2023年3月31日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2022年度通期の売上高は前年同期(8兆4246億円)から2兆1721億円増となる10兆5967億円、営業利益は前年同期(2473億円)から1298億円増の3771億円、営業利益率は3.6%、当期純利益は前年同期(2155億円)から64億円増の2219億円。また、グローバル販売台数は前年同期(387万6000台)から57万1000台減の330万5000台となった。なお、当期純利益はロシア市場からの撤退に伴う一過性損失である1200億円の計上で押し下げられた数字となっている。

2022年度通期と第4四半期の日産自動車財務実績

 説明会では日産自動車 COO アシュワニ・グプタ氏が2022年度通期の決算内容について説明。2022年度は多くの逆風にさらされながらも対応すべき課題を洗い出し、果断に対応して着実に結果を出してきたと語り、まずは車両生産と販売台数について解説した。

日産自動車株式会社 COO アシュワニ・グプタ氏

 前年比で14.7%減の330万5000台となったグローバル販売台数については、中国における新型コロナウイルスの感染拡大による混乱、サプライチェーンや物流のひっ迫といった複数の要因が逆風になったと説明。新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンによる減産の影響で中国市場での販売が24.3%減と大きく販売を落とし、日本市場では電動車両が人気となった日本では6.1%増となったが、販売の量より質を重視した北米市場で13.5%減、ロシアから撤退した欧州市場で9.2%減、その他市場で12.8%減となった。

 一方、半導体の供給確保が進んだことにより、生産台数は中国を除いた場合では12.1%増の232万台となり、中国を含めたグローバル生産台数も前年並みの338万台という結果になっている。

2022年度通期のグローバル販売台数と第4四半期の生産台数、販売実績

 重点市場別のトピックも紹介され、日本市場ではこれまで取り組んできた電動車ラインアップの拡充が成果につながり、2022年度に「ノート」「ノート オーラ」が11万3000台を販売してセグメントシェア1位を獲得。また、軽自動車のバッテリEV(電気自動車)「サクラ」も普及に貢献して、発売からこれまでに3万3000台を販売。さらにe-POWER搭載車も市場に浸透して、2016年の登場以来、これまでに累計80万台を販売してきたとアピール。これらの好調な販売により、国内販売における電動化比率はさらに進み、9%増の48%を実現している。

 米国では「事業の質改善」に集中的に取り組んでおり、コアモデルとなっている「ローグ」「アルティマ」「パスファインダー」「フロンティア」の4モデルがそれぞれセグメントシェアを高め、さらに1台あたりの売上高も高めている。

 欧州市場では電動化が急速に進んでおり、複数の国で優遇措置が実施されてこの勢いに拍車をかけていると説明。日産でもこの環境に歩調を合わせ、欧州市場における電動化比率を前年度の12%からほぼ倍増となる23%に高め、これにはe-POWER搭載車の市場投入が寄与しており、これを受けて1台あたりの売上高は10%向上している

 中国市場では新型コロナウイルスの感染拡大を受けたロックダウン、半導体の供給不足による生産制限などが逆風となり、市場ではデジタル販売への急速なシフト、競争の激化が同時に起きていると説明。これに対応するため、コア商品とカスタマーエクスペリエンスの向上を優先的に取り組み、これによってコアモデルである「シルフィ」が42万1000台を販売。セダン市場で3年連続販売台数1位を獲得したことをアピール。また、デジタルをきっかけとした販売にも注力して、中国における売り上げのほぼ3分の1を占めるまでになっているという。

日本市場では電動車の販売比率を高め、2022年度はほぼ半数となる48%に達している
「事業の質改善」に取り組んでいる米国市場では、コアモデルでセグメントシェア、1台あたりの売上高を向上
欧州市場でも電動化比率を高め、合わせて1台あたりの売上高も10%アップ
中国市場ではデジタルをきっかけとした販売が売り上げのほぼ3分の1を占める
2022年度通期の財務実績
2022年度第4四半期の財務実績
2022年度通期における営業利益の増減分析

2023年度は売上高12兆4000億円、営業利益5200億円、当期純利益3150億円を計画

2023年度見通し。売上高17.0%増の12兆4000億円、営業利益37.9%増の5200億円、当期純利益42%増の3150億円を計画する

 続いて日産自動車 代表執行役社長 兼 CEO 内田誠氏から2023年度の通期見通しについて説明が行なわれた。

 2022年度は半導体の供給不足、上海で行なわれたロックダウン、年末にかけて中国で発生した新型コロナウイルスの急激な感染拡大などの影響によって生産、販売台数が大きく落ち込み、現在も半導体不足の影響は続いているものの、状況は確実に改善しており、中国でも「ゼロコロナ政策」が転換されたことで経済活動が正常化。さらに「Nissan NEXT」の取り組みでこれまでに投入してきた新型車がユーザーから好評を得ていることなどを勘案し、2023年度はグローバル生産台数を21.3%増の410万台、グローバル販売台数を21.0%増の400万台に設定。

 この台数見通しを前提に、2023年度の売上高は17.0%増の12兆4000億円、営業利益は37.9%増の5200億円、当期純利益は42%増の3150億円を計画している。

2022年度はグローバル生産台数を21.3%増の410万台、グローバル販売台数を21.0%増の400万台に設定
2022年度見通しにおける営業利益の増減分析
2023年度の株主還元は1株当たり15円以上を予定している

Nissan NEXTの進捗と今後の戦略

継続的な新車投入によって日産車が持つ魅力を高めていく

 さらに内田氏は、2023年度は2020年5月から進めてきた事業構造改革のNissan NEXTにおける最終年度になることから、これまでの振り返りと残る課題についても紹介した。

 Nissan NEXTでは生産能力とコストの最適化を図りつつ、コアとなる市場や商品、技術に集中して事業基盤の強化に取り組んできた。「電動化」「知能化」をはじめとする最新技術の搭載によって商品力を高め、これによって顧客満足度、台あたり売上高を大きく向上させて営業利益向上に貢献している。合わせてよりスリムで機敏な組織に向けた取り組みによって事業基盤を強化。継続的な固定費削減も行なってどのような環境下でも安定的に収益を確保できるよう財務体質を強化しているという。

 一方、生産能力では生産計画に対して大きく余剰を出す状況になってしまっており、これを1日も早く計画どおりに生産を行なえる状況に戻す取り組みを全力で進めているものの、この点については3年前の計画策定時からビジネス環境が大きく変化していることから、今後も市場ごとの動向を精査していきたいと説明した。

 将来の成長に向けた取り組みとしては、未来のモビリティをけん引する最新のイノベーションに注力している。電動化のゲームチェンジャーになり得ると考えている「全固体電池」では材料開発で進捗があり、高いエネルギー密度を維持しながら既存の液体リチウムイオン電池をはるかに超える充電性能を達成していると紹介。これにはサプライヤーと日産の開発部門のオープンで密接なコラボレーション原動力になっており、今後はBEVに搭載するサイズまでの大型化の段階に進み、2024年度に稼働を予定するパイロットラインの構想も固まり、着工に向けての準備も進められているとのことで、全固体電池を搭載したBEVのプロトタイプ車両を1日も早く公開したいとの考えを示した。

 また、BEV、e-POWERの主要部品をモジュール化したパワートレーンである「X in 1」の開発も進み、2026年までにはe-POWERの車両コストをエンジン車同等にすることを目指しているという。より安全なモビリティ社会の実現に向けた取り組みでは、緊急回避性能を大幅に向上させる「次世代LiDAR」実用化に向けて開発を進めていると述べた。

「全固体電池」「X in 1」「次世代LiDAR」の実現に向けて取り組みを加速

 中国市場の変化に対する取り組みについては「さらに強化しなければならない分野」であり、全社を挙げて対策を講じていると強調。2022年度の決算を見ても、日産は中国市場における生産、販売の減少をそれ以外の市場でカバーしきれない状況となっており、業績に対する中国の貢献度が下がって2023年度の営業利益率もNissan NEXTで掲げる目標に届かない見通しになってしまっていると説明。

 中国の市場環境が大きく変化していくことは認識していたものの、4月に実際に中国に足を運び、自分の目で変化を確かめたところ、自分たちの想定を遙かに上まわるスピードで変化していると実感したと紹介。これからも中国市場で事業を継続し、成長していくためにはこれまでのプロセスや手法から脱却し、機動性ある事業構造に転換していく必要があるとの考えを示した。

 具体的な方策については現在策定中の新しい中期経営計画に織り込んでいくとしたが、既存のアセットを最大限に活用してスピード感を持って改革に取り組んでいくと語り。具体的には、操業から20周年を迎える現地合弁会社ではこれまでに1500万台以上を販売してきており、中国では部品調達からデザイン、開発、生産、販売、サービスに至るまでフルバリューチェーンで事業を展開し、コネクテッドやアプリといった需要の高いデジタル領域でも内製開発で競争力の高い機能を現地で展開しているとアピール。

 日産、インフィニティに加え、中国独自のブランドであるヴェヌーシアも持つことも大きな武器であり、今後の成長機会にもつながるとした。また、中国で急速に拡大している「新エネルギー車」についても、機動性の高いヴェヌーシアブランドを活用してタイムリーに商品を投入していくと説明し、これらのアセットは現地メーカーと比較しても十分に競争力があり、同様の課題に直面している他社の合弁会社にはない日産独自の強みであるとの考えを示した。

中国市場の変化にスピード感を持って対応することが必要だと内田氏は語った

 このほか、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の実現に向けた次の中期経営計画は今秋の公表を予定しており、日産を持続的に成長させ、企業価値を向上させるため、Nissan NEXTで強化してきた事業基盤をベースとしてさらなる選択と集中に取り組み、安定して収益を確保できる強固な財務体質を築いていく。さらに、カーボンニュートラルの実現、移動と社会の可能性を広げるために必要となる具体的な方策を、アライアンスのパートナーシップを活用した成長戦略、電動化、知能化といった日産ならではの強みを生かした新たなビジネスチャンス創出についても織り込んでいく予定だと語った。

 最後に内田氏は「2023年度は日産が創立90周年を迎える節目の年でもあります。取り組むべき課題は山積しておりますが、これまでの90年を受け継ぎ、この先の100年も世界で輝き続ける企業となるため、全社一丸となって挑戦し続けます」とコメントして説明を締めくくっている。

日産自動車 2022年度 決算発表(1時間5分25秒)