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日産、2020年度上期決算発表 連結営業損失1588億円、純損失444億円に

2020年度販売台数は前回の年間見通し1%増の416万5000台に上方修正

2020年11月12日 実施

2020年度上期決算発表記者会見を開催

 日産自動車は11月12日、2020年度の上期決算と通期見通しの修正を発表した。

 2020年度上期の連結売上高は3兆927億円、連結営業損失は1588億円、売上高営業利益率は5.1%減、当期純損失は3300億円となった。また、2020年度第2四半期3か月の連結売上高は1兆9185億円、連結営業損失は48億円、売上高営業利益率は0.3%減、当期純損失は444億円となった。

 2020年度第2四半期における営業利益の増減に関しては、新型コロナウイルス感染症による影響を受けたグローバル需要の減少により販売台数が大幅に減少するも、販売の質の向上や固定費の削減により、販売台数減による影響を抑えることができたとした。

2020年度上期 主要財務指標
2020年度第2四半期(3か月)財務実績

 2020年第2四半期(3か月)の販売実績は、全体では105万6000台(対2020年度第1四半期64.1%)となり、内訳は中国が39万台(同88.7%)、日本が12万台(同43.1%)、北米が30万台(同35.1%)、欧州が11万8000台(同111.7%)、その他が12万8000台(同66.8%)となった。

2020年度第2四半期(3か月)販売実績

 今年度の業績見通しは、連結売上高は7兆9400億円、連結営業損失は当初見通しから1300億円改善した3400億円にそれぞれ修正。当期純損失は前回対比で550億円改善した6150億円となる見込みとしている。

 業績見通しの増減要因について、連結売上高は中国を除いた販売台数が前回見通し比2.1%増の見通しになっていることを、連結営業損失はNissan NEXTの着実な進捗をそれぞれ反映。今年度の見通しを発表した7月に比べ、足下で貴金属を中心とした原材料価格が上昇しており、当初見通しから110億円の減益要因になると予想する一方で、販売台数の増加に伴い台数関連で290億円の改善を見込んでいるとした。また、台当たり奨励金の減少などにより販売費用は150億円の回復となるほか、販売金融、ものづくり、その他で970億円の回復としている。

2020年度業務見通し
2020年度業務見通し 営業利益増減分析(対前年実績)
2020年度業務見通し 営業利益増減分析(対前回見通し)

 なお、2020年度の販売台数は前年比15.5%減の416万5000台に変更し、前回の年間見通しから1%増となる上方修正とした。

2020年度販売台数見通し

事業に回復の兆しがありつつも、解決すべき課題も

 同日にオンラインで開催された2020年度上期決算発表記者会見では、日産自動車 COO アシュワニ・グプタ氏が2020年度第2四半期および上期の取り組みと財務実績、事業の状況について説明。

日産自動車 COO アシュワニ・グプタ氏

 グローバル全体需要は新型コロナウイルス感染拡大期間中以降回復しつつあると述べ、中国では前年を超え、アメリカでは前年並みになったものの、日本国内では未だに前年に届いていないと紹介。生産台数は2020年9月はグローバルな全体需要に合わせて前年の87%にまで達し、12月には100%を超える見込みで、グローバルな全体需要のトレンドに従って伸びているとした。

 また、ディーラーはグローバルで98%が通常営業を再開していること、デジタルプラットフォームを活用してきたこと、新型「ルークス」「セントラ」「キックス e-Power」「ローグ」「ナバラ」「マグナイト」の生産を各国で立ち上げたことに加え、米国、中国、日本それぞれの事業のパフォーマンスについても紹介。さらに、Nissan NEXTにおけるビジネストランスフォーメーションの進捗についても触れた。

グローバル自動車市場の推移
グローバル事業活動(グローバル生産の回復状況と販売店の稼働再開状況)
グローバル事業活動(新型生産車両)
米国事業のパフォーマンス
中国事業のパフォーマンス
日本事業のパフォーマンス
Nissan NEXT:ビジネストランスフォーメーション
2020年度上期 主要財務指標(フリーキャッシュフロー)
流動性の状況

 最後にグプタ氏は第2四半期の事業および上期の状況について「事業が回復していることを示していますが、私どもは同時に課題に直面していることも認識しております。引き続き事業の効率化を図り、そして人の安全第一、キャッシュの確保に努めてまいります」とまとめた。

先行き不透明な中であっても、日産らしさを示す

日産自動車株式会社 社長兼CEO 内田誠氏

 続けて、日産自動車 社長兼CEOの内田誠氏が2020年度通期業績見通しについて説明。「全体需要の年間見通しは、この先新型コロナウイルス感染拡大による重大な事業活動の寸断が発生しない前提」と前置きしつつ、グローバルで前年比11%減の7590万台になると予想。2020年7月28日に発表した見通しよりは回復したとしつつも、依然として新型コロナウイルス感染拡大の影響は先行き不透明な状況が継続しており、見通しを示すことが難しく、引き続き市場動向を注視していく必要があるとした。

 内田氏は「Nissan NEXTの取り組みはこれまで着実に推移しております。しかしながら、新型コロナウイルスや世界経済など、下期の先行き不透明な環境下において、よりいっそう財務規律を徹底し、持続可能な事業基盤を強化していかなければなりません。そうした中で、特に在庫管理の徹底や生産能力の最適化による固定費の削減には一切の妥協なく取り組み、当社のコストベースを改善していきます。また、北米での販売正常化の取り組みを継続し、その他の地域においても販売の質の向上に徹底して取り組んでいきます。そして第2四半期でお示しできた勢い、モメンタムをこの下期も継続させていくことが重要であると考えています」と今後取り組むべき事項について述べた。

Nissan NEXTのゴール

 さらに、「販売台数の拡大を過度に追い求めるのではなく、台当たり収益を確保しながら着実な成長を果たす。そのためにコアマーケットへ競争力の高い新型車を投入していきます」と話し、今後、米国での事業回復を牽引していくためにSUVやピックアップセグメントの車種を刷新していくこと、ホームマーケットの日本では年内に新型コンパクトカーの発表を予定していることを紹介。加えて、インドでは新型の小型SUV「マグナイト」を導入するほか、「インフィニティQX55」「キャシュカイ」も年度内の発表を予定していることに触れ、新型車を投入することでモデルラインアップの刷新と強化を行ない、「Nissan NEXTのマイルストーンの1つである2021年度比例連結ベースでの営業利益2%の達成に繋げていきたい」と意気込みを語った。

12の新型車を投入

 内田氏は最後に「業績の回復を実現するためには、お客さま、サプライヤーの皆さま、販売会社の皆さまなど、すべてのステークホルダーの皆さまからの信頼を得ることが最も重要なことであると信じています。そのために日産は革新と挑戦を続けるチャレンジャーとしての日産DNAを再確認し、パートナーとともに事業を支える基盤の強化を図っています。企業風土を改革し、企業としての存在意義をコーポレートパーパスとして明確化することでわれわれの向かうべき道を明確に示します。そして、サプライヤーの皆さまや販売会社の皆さまとの関係をさらに強化し、ともにビジネスモデルを発展させてまいります」。

「皆さまからやっぱり日産だと信頼いただくためには、私は日産が日産らしさを発揮する会社であり続けなければならないと思っています。その使命を背負いながら、日産を正しい方向に導き、再び皆さまに信頼される会社になるよう、邁進してまいります。Nissan A to Zでご紹介しましたように、日産の絶え間ないイノベーションを生み出したクロスオーバーEVのアリア、果敢にチャレンジし続ける日産の情熱があふれたZ、新しい時代においてもこうした日産らしさを体現するクルマづくりに挑み続けます」と締めくくった。

2020年度上期決算発表記者会見