政府は2023年6月に「女性版骨太の方針(女性活躍・男女共同参画の重点方針)2023」をまとめ、女性の活躍を加速させるため、東証プライム上場企業を対象に新たな数値目標を設定した。数値目標の1つは「25年をめどに、女性役員を1人以上選任するよう努める」、2つ目は「30年までに、女性役員比率を30%以上とすることを目指す」であり、各企業は達成に向けて取り組みを進めていく。

日経xwoman(クロスウーマン)編集部では21年、22年に続き、今年も女性取締役について独自調査を実施した。対象は、東証プライム上場企業約1800社の時価総額ランキング上位500社。まずは、女性取締役の数や社内取締役・社外取締役の比率を明らかにし、23年の「女性取締役比率ランキング」から企業の女性活躍の取り組みを俯瞰(ふかん)する。

取締役の16.6%が女性

 今回、日経クロスウーマン編集部が行った独自調査によると、東証プライム上場企業の時価総額上位500社に取締役はのべ5080人。そのうち女性は845人で、全取締役の16.6%に相当する。

プライム上場企業トップ500社では、2023年7月時点で、取締役の16.6%が女性
プライム上場企業トップ500社では、2023年7月時点で、取締役の16.6%が女性
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 22年7月の14.5%と比べると2.1ポイント上昇している。しかし、女性役員が増えている欧米諸国に比べると非常に低い水準にとどまり、政府が掲げる「30年までに、女性役員比率を30%以上とすることを目指す」という目標には程遠い。

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 それでは、23年の女性取締役比率ランキング1位から16位までにランクインした全17社を発表する。

「女性取締役ランキング2023」プライム企業500社調査
日経クロスウーマン編集部では、東証プライム上場企業約1800社の時価総額ランキング上位500社を対象に、2023年7月14日時点での女性取締役(社内・社外含む。監査役は除く)の人数や個人名、生年月日、取締役就任日などを調査した。23年7月14日時点で、有価証券報告書と各社ホームページで公開されている取締役の状況を参照した。また、過去との比較においては22年7月6日時点の状況を取り上げた。なおランキングで同率順位の場合、企業の表示順は時価総額の高い企業から表記している(23年5月31日時点の時価総額)。

女性取締役比率トップ17社発表 1位企業は55.6%

 23年の女性取締役比率ランキング1位~16位は次の通り。取締役における女性比率が35.7%以上の17社だ。

 表中の「(↑)」は22年7月6日時点から比率が増えた企業を表す。

日経クロスウーマン編集部の独自調査から分かった、女性取締役比率ランキング上位17社のリスト。1位はディップ、2位はニデック、3位はZOZOがランクインした
日経クロスウーマン編集部の独自調査から分かった、女性取締役比率ランキング上位17社のリスト。1位はディップ、2位はニデック、3位はZOZOがランクインした
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 女性取締役比率ランキングの1位は、ディップ。「バイトル」を運営する人材サービス大手企業だ。昨年は2人だった女性取締役が5人に増えた(取締役全員の数は6人から9人に増えた)。取締役における女性比率は55.6%となっている。構成メンバーは「生え抜き」ではなく、5人全員が社外取締役だ。

昨年の女性取締役ゼロ企業のZOZOが、女性取締役比率3位に急浮上

 2位はニデック(旧日本電産)。永守重信氏が代表取締役会長を務める1973年創業の企業で、50周年を迎えた。女性取締役比率は昨年の36.4%(11人中4人)から50%に増加(10人中5人)。5人全員が社外取締役で、国公立大学大学院の研究者出身が3人を占める。

 3位はZOZO。ファッションECサイト「ZOZOTOWN」、ファッションコーディネートアプリ「WEAR」など各種サービスの企画・開発・運営などを行う。98年、輸入CD・レコードの通信販売を目的にスタート・トゥデイとして創業し、25年の時を経て、業態を変化・拡大してきた。

 ZOZOは昨年、女性取締役が一人もいない女性取締役ゼロ企業だったが、23年6月は大きな変身を遂げた。取締役11人の45.5%を占める5人の女性が取締役に就任。取締役の永田佑子氏はヤフーを経て、親会社Zホールディングスの執行役員となり、現職へ。日経BPの元編集記者で、家計簿管理サービスZaimを開発し、現在は親会社である、くふうカンパニーの代表執行役を務める閑歳孝子氏などを含め、残り4人は社外取締役だ。

 4位のサントリー食品インターナショナルでも女性取締役が増えた。そのうち1人は82年にサントリー入社後、サントリー酒類(現サントリー)の海外事業部部長などを務めた小野真紀子氏で、いわゆる生え抜きだ。23年3月に代表取締役社長に就任。

 6位のコーセーでも、88年に入社した小椋敦子氏が23年3月から取締役になっている。

 12位のケーズホールディングスでは、92年に入社した保村美也子氏が、22年6月に取締役上席執行役員水戸本店長に登用されている。

 16位のゆうちょ銀行では、86年に郵政省(現総務省)に入省し、03年から日本郵政公社(現ゆうちょ銀行など日本郵政グループ)でのキャリアをスタートした山崎勝代氏が23年6月から取締役、監査委員会委員(常勤)、リスク委員会委員を担っている。

 女性取締役にはまだまだ社外取締役が多いのが現状だが、生え抜きの女性が取締役に就任する事例も増えている。

 なお、昨年、女性取締役比率ランキング1位だったノエビアホールディングスは23年の調査時点で時価総額上位500社にランクインしていなかったため、今回は含まれていない。

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