ジャストシステムの経営をキーエンスに託し、60歳でMetaMoJi(メタモジ)を立ち上げた。タブレット向けアプリを通じて、建設や教育の現場が抱える課題の解決に取り組む。かつて手掛けた「一太郎」を超えるべき目標に据え、新たな挑戦を続けている。
キーエンスの資本受け入れを決めた後、先方からジャストシステムの基礎研究チームの解体を言い渡されました。専務で妻の初子がずっと率いてきたチームで、少なからずショックを受けました。
確かに基礎研究はすぐに利益に結び付くものではありません。ただジャストシステムの歴史を振り返ると、日本語入力システムの仕組みなどを追求してきたのは基礎研究のメンバーたちでした。
こんなに優秀なエンジニアたちを手放していいはずがありません。キーエンスとの資本提携後も私は会長として、初子は副会長として残る予定でしたが、考え直しました。エンジニアたちの受け皿になるため、新たな会社をつくることにしたのです。
社名は当初、果てしなく大きな数字を意味する「恒河沙(ごうがしゃ)」にちなみ「ゴーガッサ」を予定していましたが、英語で「ガソリンスタンドに行け」の意味に取れるという指摘を受けて「MetaMoJi(メタモジ)」にしました。メタには「超える」という意味があります。ジャストシステムは「一太郎」で大きな功績を残しました。その「文字」を超えるものをつくるという意味を込めています。
iPadを見て方向転換
事業内容が詳細に決まっていたわけではありませんが、やりたいことはいくらでもありました。
最初に取り組んでいたのは短時間動画を共有するアプリで、サンプル動画を投稿するところまで開発が進んでいました。ところが創業翌年に米アップルが「iPad」を発表してから大きく方向転換することになります。
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