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特集私が令和に語り継ぎたい「平成の名言」

ニートの名言「働いたら負けかなと思ってる」をマジで笑えなくなった“平成の終わり”

ニートの名言「働いたら負けかなと思ってる」をマジで笑えなくなった“平成の終わり”

「年収600万円、埼玉にマイホーム」すら困難に……

2019/05/01
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真っ向から「勤労」を否定する衝撃

 この「働いたら負けかなと思ってる」の初出は、2004年(平成16年)9月にフジテレビの番組『とくダネ!』で放送されたニートの男性の発言である。さらに番組中では「今の自分は勝ってると思います」という言葉も続いた。いまや、「ニート」(Not in Education, Employment or Training, NEET)はすっかり一般名詞として社会に定着したが、当時はまだ珍しい言葉であった。

 番組中に登場したニートの男性は丸刈りで、常に薄笑いを浮かべて口元から尖った歯をのぞかせるいう特徴的な外見であり、しかも日本国民の三大義務である「勤労」を真っ向から否定する発言が当時としては衝撃的だったことから、2ちゃんねるでアスキーアートが作られるなど、ネット空間を中心に一種のフィーバーを巻き起こすことになった。

『2ちゃんねる』(現『5ちゃんねる』)などで流布されたニート男性のAA。かつてはさまざまなスレッドに貼り付けられていた http://dokoaa.com/

 その後、ニートの概念が社会で広く知られていくいっぽう、「働いたら負け」という言葉もネット空間を中心に定着した。2011年には人気ゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』に登場した、脱力系女子という設定のアイドル双葉杏(ふたば あんず)がこの言葉がプリントされたTシャツを着用している。

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 また、番組に登場したニート男性の姿も、放送から15年が経った現在もなお人々の記憶に残っているらしい。ネットを見てみると、ZOZOTOWNのコミュニケーションデザイン室長を務める田端信太郎氏が、外見的な相似を理由に「ニート男性のその後である」といった都市伝説が語られるなどしている(んなわけあるか)。

総務省調査によるニートの数と15~34歳人口に占める割合の推移。2013年に約60万人。別の調査だが、内閣府の2018年「子供・若者白書」では前年横ばいの71万人とも ©共同通信社