玄関ドアを開けたら専用デッキ。

専用デッキ！

ここで何をしましょうね。若くしてビジネスで成功した男なら、ぴったりな使い方が浮かびそうです。ステークホルダーを招いてパーティーしたり、美しい女性とカクテルを飲みながら日向ぼっこしたり。

室内はダークで独特な質感。土間のようになった、19.3帖のリビング。ひそひそ話が似合いそうですね。おいしいワインを飲みながらも、抜け目なくチャンスを狙っている。

コンピューターグラフィックスみたい。生活感はなるべく拭い去り、抽象的な空間で次のフェーズの戦略を練る。曇りガラス越しの緑が、一時のリラックスをもたらしてくれる。

一段上がったガラス張りの洋室のフロアは、一転、カーペットになっている。足裏の感触が心地よい。タフな商談のあった日は、ここで靴下を脱ぐのが楽しみになっている。

家具も家電も備え付け。好みの物を買い揃えたいという嗜好もお金もあるのだが、なにしろ時間がない。とにかく時間だけが足りていない。…いや、もしかしたら愛も？

このベロア調のカーテンで仕切られた納戸にどれだけ美しいモノを並べてみても、コレクションを充実させても、時々虚しさを感じることがある。でも、そんな自分も好き。

今は家賃32万円のこの部屋で、来期の決算だけを見て走る。邪念は無い。明るい照明もいらない。ひんやりして暗い方が生き残るための感覚が冴えてくる。そうして勝ってきた。

…みたいな世界でしょうか。いやはや。こういうストーリーのお部屋がごろごろ出てくるのも、また東京。資本主義の勝者に合いそうな居場所が、ちゃんと用意してあります。