時系列データとは?メリットや活用例、分析の手法をわかりやすく紹介

時系列データは、時間の経過とともに集められるデータの特性を理解し、有効に活用するためには欠かせない概念です。

本記事では、時系列データの基本から、メリットや分析手法についてくわしく解説します。時系列データについての理解を深めたい方はぜひご覧ください。

時系列データとは

時系列データとは、時間の経過とともに連続的または定期的に観測されるデータ系列です。たとえば、日々の気温、月々の企業売上、年々の国のGDPなどが代表例です。時間の流れとともに変動するデータ点が続く構造を持っており、これらのデータ点間には時間的な依存関係が存在という特徴があります。

時系列データには、トレンドや季節性、周期性、ノイズなど、さまざまな成分や要因が影響します。背後に隠された要因を正確に理解することで、過去のデータ傾向やパターン解明、そして未来予測が可能になるのです。

とくにビジネスの現場や研究分野では、時系列データの分析は欠かせないスキルです。また、過去のデータをもとに未来を推測する時系列解析は、多岐にわたる領域での活用が期待されています。

時系列データが変動する主な4つの要素

時系列データを一見すると、一貫したデータの流れのように感じるかも知れません。実際には、複数の要素が組み合わさって変動しています。

複数の要素を理解するとともに、データの背後にあるパターンやトレンドを正確に把握することは、効果的な予測と分析の鍵です。

時系列データが変動する主な4つの要素、すなわちトレンド、季節性、周期性、不規則性に焦点を当てます。それぞれの要素が、データにどのように影響するのかをくわしく解説します。

トレンド

トレンドは、時系列データにおける最も基本的な要素のひとつです。各要素は、データの上昇または下降の動きを指します。トレンドを正確に理解することは、企業の成長や市場の変動、業界の動向などの大きな流れを把握する上で極めて重要です。

たとえば、企業の売上が年々増加している場合、上昇トレンドとして捉えられ、経営者やマーケターは成長を維持または加速するための戦略が求められます。売上が減少している場合は下降トレンドとなり、原因を特定し、打破するための施策が必要となります。

季節性

季節性は、一定期間ごとに繰り返し現れる変動パターンを指します。変動は、自然な季節の変わり目や特定のイベント、祝日などに関連して生じることが多くなります。

たとえば、夏に冷たい飲み物やエアコンの売上が増えるのは、気温の上昇とともに需要が高まるためです。冬には暖房器具や温かい飲み物の売上が増加します。季節性は、ビジネスの多くの側面に影響を与えます。季節性を理解し、適切に予測することは、在庫管理やプロモーションのタイミングなどを判断する上で非常に重要です。

周期性

周期性とは、季節性よりも長い期間で繰り返されるデータの変動パターンを指します。変動は、経済のサイクルや市場の動向など、マクロ経済の要因に強く影響されます。

たとえば、経済の好況期には多くの産業の売上が増加し、不況期には減少するといったサイクルが観察されます。周期性を正確に捉えることで、将来の市場の動きを予測し、適切な経営戦略の策定が可能です。

とくに、経済のサイクルに大きく影響される産業や業種では、周期性の理解は極めて重要です。

不規則性

不規則性とは、時系列データにおけるランダムな変動のことです。不規則性は、外部の突発的な要因や予測できない事象によって引き起こされるもので、通常のトレンドや季節性、周期性とは異なる性質を持ちます。

たとえば、自然災害や政治的な出来事、大きなニュースなどが発生した場合、それらの影響でデータが急激に変動します。不規則性による変動は予測が難しく、通常のデータ分析では取り除かれることもあります。

不規則性を正確に識別し、原因を解明することで、将来のリスクを回避するための戦略策定が可能です。

ビジネスに時系列データの活用が重要な理由

時系列データの分析は、意思決定をサポートし、効果的な戦略の策定に役立ちます。過去のデータの流れを理解することで、未来の動向や予測、リスク管理まで、幅広い活用が期待できます。

現代のデータ主導型のビジネス環境において、時系列データの活用は競争力を高めるための鍵です。時系列データはどのような場面で活用できるのか、くわしく説明します。

将来予測が立てられる

時系列データの最も魅力的な利点の一つは、未来の出来事や動向の予測が可能になることです。企業や組織は、過去のデータトレンドを解析することで、将来のシナリオを想定し、適切な戦略や対策を策定できます。

たとえば、時系列データを用いて売上を予測すれば、生産計画や広告戦略の効果的な実施が可能です。過去の消費動向や季節性をもとに、需要の予測や在庫の最適化を実現できます。未来を予測することで、将来のリスクを減少させ、効率的な経営を促進できるのです。

業務や意思決定を効率化や施策の最適化につながる

時系列データの分析は、ビジネスの意思決定や戦略策定のための強力なツールです。時系列データを適切に解析することで、業務の動向や市場の変動、顧客の行動パターンなどを明確に把握できます。

たとえば、過去の販売データやウェブサイトのアクセス履歴を時系列で分析することで、将来の需要の増減や、顧客の関心の変化を予測できます。商品の生産量や在庫管理、マーケティングのターゲティングなどの調整が、より効果的かつ効率的に行えます。

消費者の購買履歴や行動パターンを時系列データとして解析することで、新しい商品開発やサービス提供の方向性を的確に判断できます。

異常の早期発見ができる

時系列データは、異常な動きやブレークポイントの早期発見に役立ちます。機械の故障やシステムの障害、不正取引の検出など、問題の早期解決が可能となります。

連続的なデータフローの中で突如として現れる異常な動きは、何らかの問題やリスクを示唆しています。たとえば、製造機械の動作データを時系列で監視することで、予期しない動作や停止をすぐに検出し、迅速な対応やメンテナンスが可能となるのです。

金融の世界では、不正取引や異常な市場の動きを早期に発見することで、大きな損失を防ぐための対策に役立ちます。

時系列データを適切にモニタリングし分析することで、リスクを事前に予測し、ビジネスの持続性や安定性を確保する助けとなるのです。

時系列データの活用例

日常の中で気づかない間に、時系列データはさまざまな場面で私たちの生活やビジネスに影響を与えています。

時系列データがどのように実際の問題解決や意思決定の過程で利用されているのか、具体的な例を挙げて紹介します。実際の活用例を知ることで、時系列データの実用性や可能性を更に深く理解できます。

マーケティング活動の効果測定

時系列データは、マーケティング活動の効果を評価する上で非常に有効です。キャンペーンや広告が開始された後の売上、サイト訪問者数、コンバージョン率などの指標の変動を時系列データとして捉えることで、活動の影響を正確に評価できます。

たとえば、オンライン広告キャンペーンが開始された後の、ウェブサイトの訪問者数の増加を時系列データとして分析することで、キャンペーンの成功度を把握できます。

顧客の離脱予測

時系列データは、顧客の離脱を予測する上で役立ちます。顧客の購入履歴やサービス利用履歴を時間軸に沿って捉えることで、将来的な離脱の兆候を早期に発見できます。

たとえば、定期的に商品を購入していたある顧客が、ある時点から購入頻度が減少したとしましょう。時系列データとして変動を捉えることで、顧客が商品を購入しなくなったり、サービスから離脱しそうな兆候として識別できます。

時系列データをもとに、リテンション施策をタイムリーに打ち出すことで、顧客の離脱を予防できます。

製品の生産計画

時系列データの分析は、製品の生産計画の策定において極めて有効です。過去の売上データや製品の需要トレンドを時系列データとして捉えることで、未来の需要を予測し、適切な生産量を計画できます。

たとえば、特定の製品の売上が年末に増加する傾向がある場合、時系列データを分析することで、生産量を増やす最適なタイミングを判断できます。

季節性やマクロ経済の影響を受ける製品については、時系列データの分析により、生産計画を最適化できます。

時系列データの分析により、在庫の過剰や不足を避けるとともに、効率的な資源配分を実現できます。

店舗の人員配置

時系列データは、店舗の人員配置の最適化においても強力なツールとして活用されます。

たとえば、過去の来客数や売上データを時系列として分析することで、特定の日や時間帯の混雑傾向を予測できます。ピーク時には十分な人員を配置し、閑散期には人員を減らすなど、効率的に人員を配置できます。

時系列データには季節性や週末・祝日による変動も含まれるため、これらの要因を考慮した上での人員配置を実現できます。

時系列データを分析することで、顧客サービスの質の向上や労働コストの削減など、店舗運営を効率化できるのです。

価格の最適化

時系列データは、製品やサービスの価格を最適化するための重要な手がかりです。過去の価格変動や売上データを時系列として分析することで、価格の上昇や下降が売上や利益にどのような影響を及ぼしたかを詳細に検証できます。

時系列データの分析を通じて、どの価格帯で最も利益を最大化できるか、顧客の購入意欲を刺激する価格はいくらか、などが明らかになるのです。

時系列データは、季節性や特定のイベントに伴う価格変動も捉えられるので、プロモーションやセールのタイミングを計画するための情報として活用できます。

時系列分析のアプローチ方法と代表的なモデル

時系列データの分析は、過去のデータパターンやトレンドを解明し、未来を予測するための鍵です。時系列データには、さまざまなアプローチ方法やモデルが存在します。

時系列データのモデルは、それぞれが異なる特徴や利点を持っているため、利用目的に応じた適切な選択が必要です。

時系列分析の主要なアプローチと、よく用いられる代表的なモデルを紹介します。

自己回帰系モデル

時系列データ分析の自己回帰系モデルは、データの過去の値と変動を組み合わせて、未来の値を予測します。

自己回帰系の、具体的なモデルやアプローチについて解説します。

 ARモデル(自己回帰モデル)

ARモデル(自己回帰モデル)は、時系列データの分析において非常に重要な位置を占めています。ARモデルは、過去のデータ値に基づいて、未来の値を予測します。

たとえば、過去6か月間の売上データを使用することで、今月の売上が予測可能です。ARモデルの強みは、過去のデータの動きや変動を利用して、未来のデータを予測できる点にあります。

モデルの精度は選択する過去のデータ数やデータの特性に大きく依存します。適切なパラメータ設定がARモデルの成功の鍵です。

 MAモデル(移動平均モデル)

MAモデル(移動平均モデル)は、時系列データの白色雑音の累積を考慮するモデルです。MAモデルは、データのランダムな変動を過去の誤差項の平均によって表現する手法です。

現時点のデータ誤差を、過去の誤差の平均としてモデル化します。MAモデルは、とくに短期的なデータの変動やノイズを捉えるのに適しています。経済や金融のデータなど、一時的な影響が大きい場面での予測に利用されることが多いモデルです。

ARモデルがデータの自己相関を重視するのに対し、MAモデルはデータのノイズや一時的な影響をモデル化します。現場における分析では、ARモデルやMAモデルを組み合わせたARMAモデルなどが用いられることもあります。

 ARMAモデル(自己回帰移動平均モデル)

ARMAモデルは、時系列データ分析においてよく利用されるモデルのひとつで、AR(自己回帰)モデルとMA(移動平均)モデルを組み合わせたものです。

ARモデルは、データの自己相関をモデル化するのに対し、MAモデルはデータのノイズや一時的な影響をモデル化します。ARMAモデルでは、これら2つの要素を組み合わせて、時系列データの複雑な動きをより正確に捉えることが可能です。

現場で使われるデータには、トレンドや季節性だけでなく、突発的な出来事や一時的な変動も存在します。ARMAは、これらの要因を組み合わせてモデル化することで、データの予測や分析において高い精度が期待できるモデルです。とくに、経済や金融の分野での予測用として、ARMAモデルは広く採用されています。

 ARIMAモデル(自己回帰和分移動平均モデル)

ARIMAモデルは、時系列データ分析の中で非常に人気のある解析手法の一つです。ARIMAモデルは、ARモデルとMAモデルの要素を組み合わせるだけでなく、「和分(差分)」の概念を取り入れています。和分とは、非定常な時系列データを定常に変換するための手法です。和分を取り入れることで、トレンドや季節性を持つデータにも対応可能です。

ARIMAモデルは、柔軟性と予測の正確さから、さまざまな産業や研究分野で広く使用されています。とくに、金融市場の予測や気象予報、在庫の最適化など、時系列データの予測が必要な場面で利用されることが多いです。ARIMAモデルのパラメータを適切に調整することで、ビジネスや研究における有用な洞察を得られます。

 SARIMAモデル(季節変動自己回帰和分移動平均モデル)

SARIMAモデルは、ARIMAモデルの拡張版として、季節変動を考慮した解析手法です。

時系列データの中には、たとえば夏のビーチリゾートの宿泊予約や冬のヒーターの売上など、明確な季節性が含まれることがあります。

SARIMAモデルは、季節変動を持つデータの予測に特化しています。モデルの名前の「SA」は「季節変動(Seasonal Adjustment)」という意味です。ARIMAモデルが提供するトレンドやノイズのモデル化能力に加えて、SARIMAは季節性も同時に捉えます。

商業や産業の多くの分野で、季節性の持つ時系列データの高い精度での予測が可能です。SARIMAモデルは、商品の需要予測や在庫管理、広告戦略の策定など、ビジネスのさまざまなシーンで役立てられています。

状態空間モデル

状態空間モデルは、時系列データの分析において非常に強力なツールとして知られています。状態空間モデルは、システムの「状態」と観測データの「関係性」を数式で表現します。状態は、通常、観測できない隠れた変数として扱われ、時系列データの背後にあるダイナミクスや構造を捉えるために用いられます。

状態空間モデルの特長は、非線形や季節性、外部の説明変数を持つ複雑な時系列データでもモデル化が可能なことです。欠損データの取り扱いや、時変性(時間によって変わる特性)を持つデータの分析も容易になります。

ビジネスの現場では、製品の需要予測、株価の動向分析、気候変動の予測など多岐にわたる分野で状態空間モデルが活用されています。

機械学習

近年、機械学習は時系列データの分析分野で急速に注目を集めています。とくに、ディープラーニング技術の発展とともに、複雑な時系列データのモデル化や予測が可能になりました。

代表的な手法として「RNN(Recurrent Neural Network)」が挙げられます。RNNは、過去の情報を記憶しながら次の時点のデータを予測します。時系列データの連続性やパターンを捉えるのに適した手法です。

「Prophet」という分析ツールも時系列予測の分野で人気があります。Meta(旧Facebook)によって開発されたProphetは、トレンドや季節性、休日などの特別なイベントを考慮した未来予測が可能です。多くのビジネスシーンでの予測タスクに適した分析ツールとして人気があります。

これらの機械学習技術は、伝統的な時系列モデルよりも柔軟性が高く、大量のデータや複雑なデータ構造にも対応できるため、時系列データ分析の新たな可能性を広げています。

まとめ

時系列データは、日常生活からビジネスまで幅広い分野での活用が増えてきています。本記事を通じて、ビジネスでの重要性をご理解いただけたでしょう。

短期の季節性から長期のトレンド、更には突発的な変動まで、時系列データにはさまざまな要因が影響を及ぼします。時系列データの分析手法も多岐にわたるため、伝統的な統計モデルから最新の機械学習技術まで、データの特性や目的に応じて最適な手法の選択が重要です。

時系列データの分析スキルは、将来の予測やビジネス戦略の策定、異常検知など、多くの場面で有効な武器となります。時系列データの知識を活かして、より賢明な意思決定や戦略の構築を進めてください。

時系列データを活用するうえで、その取得や変換、統合は重要なプロセスです。その際に、複数のデータソースから得られる多様な形式・構造の時系列データを統一的に変換・整理する手段が必要になります。

しかし、手動の処理では、ミスが発生したり大量のデータ処理に負担がかかったりすることもあるでしょう。

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