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詩人・野口雨情の民謡「枯れすすき」(後の「船頭小唄」)が発表された日

2009-03-30 | 歴史
野口雨情の民謡「枯れすすき」・・・って・・?
♪己は河原の 枯れ芒
  同じお前も枯れ芒
  どうせ二人は この世では
  花の咲かない 枯れ芒
ああ!その歌なら良く知っているよ。それは、野口雨情の「船頭小唄」だろう・・と思い出す人が多いだろう。
「船頭小唄」は歌謡曲の題名であり、1921(大正10)年3月30日、民謡「枯れすすき」として野口雨情が作詞したものに、中山晋平がメロディをつけたもので、翌・1922(大正11)年に神田春盛堂から詩集『新作小唄』の中で、「枯れすすき」を改題し「船頭小唄」として掲載されたもの。(詳しくは、以下参考に記載の船頭小唄 – Wikipedia、d-score野口雨情 年譜参照)
野口雨情は、斎藤佐次郎により創刊された『金の船』より童謡を次々と発表。「十五夜お月さん」「七つの子」「赤い靴」「青い眼の人形」「『シャボン玉』「こがね虫」「あの町この町」「雨降りお月さん」「証城寺の狸囃子」など、多くの名作を残しており、北原白秋西條八十とともに、童謡界の三大詩人と謳われたが、他方童謡とともに当時盛んとなった「新民謡」(創作民謡。誰もが口ずさめる、ふるさとの歌)にも力を注いだ。
哀調を帯びたこの歌が発表された同じ年に金の塔に発表された「しゃぼん玉」の歌詞を見ても分かるように、雨情の一連の作品群には「失われゆくもの」「失われてしまったもの」に対する情感が色濃く漂っているといわれているが・・・。
たしかに、雨情の民謡「枯れすすき」が作られた頃、日本は、第1次世界大戦(1914年から1918年)の戦勝国とはなったものの、戦争が終わっても軍需品の注文をうけた成金が出現するなどはあっても庶民の間に好況感が来るどころか、じわじわと不況が訪れ、世の中には閉塞感が漂っており、その空気を鋭く捉えた中山晋平が、雨情の詩に曲をつけて出来たのが、歌謡曲の「船頭小唄」である。
詞は、茨城県多賀郡磯原村(現・北茨城市)に生まれた野口雨情(本名:野口英吉)の馴染みのある利根川を舞台にしており、翌・1923(大正12)年正月8日、この詩を主題歌に日本最初のスター女優栗島すみ子の主演で、わが国最初となる歌謡映画「船頭小唄」が麻布松竹館で封切られ90日間続映という空前の大ヒットとなったが、この映画の脚本といっても、伊藤大輔が書いたわら半紙2,3枚程度のものを、池田義信監督が4日間で仕上げたもので、松竹蒲田にしてみれば、正月明けの添え物作品でしかなく粟島人気だけが頼りだったという。映画「船頭小唄」は岩田祐吉が船頭の律太に、その許婚お君に栗島すみ子が扮した。ところが、映画の元になった歌謡曲「船頭小唄」がレコード化されたのは、2年前の1921(大正10)年ことであり、中山歌子や鳥取春陽らがレコードにしていようだが、まだレコードも、レコードをかける機械も普及していなかった時代、この歌は、鳥取春陽ら演歌師とよばれる人たちが町辻などでヴァイオリンの伴奏に合わせて唄い、それを聞いた巷の人々に愛唱されていた程度であった為、撮影時に、歌を知っていたのは映画関係者では池田監督だけだったという。映画の中で、川島はヒロインの女船頭に扮して、♪おれは河原の枯れすすき 同じお前も枯れすすき・・・♪と歌うのだが、実際に、歌うシーンでは、「荒城の月」を口ずさんでいただけで、映画が上映されると、雇われた歌手がスクリーンの傍らで粟島の口の動きに合わせて「船頭小唄」を唄ったそうだ。サイレント映画(無声映画)全盛の時代だったのだからそれで通用したのだよね(^0^)。
この映画のみならず、この当時は、このような歌謡映画によって、歌謡曲が普及していったようだ。 しかし、映画の大ヒットで主題歌も空前の大ヒットになり、その流行の絶頂期に・関東大震災(1923(大正12)年9月1日)が起こり、このことに寄せて、「あんな退廃的な歌が流行るから天が罰を下したのじゃ」とさる政府高官が口走らせたほどだったという。(アサヒクロニクル「週刊20世紀」)。又、街道演歌師の添田唖蝉坊が「俺は東京の焼け出され、同じお前も焼け出されどうせ二人はこの世では何も持たない焼け出され」という替え歌で歌ったとか・・。この歌には、重苦しく哀しい大正と言う時代の気分が具現化されており、震災後の廃墟の中で多くの人に共感をもって口ずさまれるようになったといわれているのだが・・・。
私は、この映画を見ていないので、この映画の内容のことを調べてみたが詳しいことを書いているものが見当たらなかったが、唯一、以下参考に記載の「小唄映画に関する基礎調査」に、この映画のストーリーと解説が詳しく書いてあった。それを読んでみて、この映画でのこの歌の取り扱われ方がイメージしていたこととは随分違うのに驚かされた。
この映画の内容は、“水郷の美しい娘お君とその娘に恋する船頭・律太が幸福な船頭夫婦になるまでを描くハッピーエンドの物語で、ラストは、利根川のそよ風に吹かれながら、律太が朗らかに船をこぎ、美しいお君がその船に揺られながら幸福な唄を歌う、という甘い結末であり、ここでの「船頭小唄」は時代閉塞の歎きというよりむしろ、明るいラブソングとして歌われている。”・・・と言うのである。伊藤の書いた脚本は、哀調を帯びた「船頭小唄」から脚色したとは思えないほど明るく、これはもう、偶然の出来事が次々と起り、複雑に絡まって不自然なほど劇的なクライマックスを海岸で迎えるという涙の物語ではない。水郷に住まう律太とお君の純粋な恋と、豊三(かってのお君の許婚)とお品(豊三の恋人)の恋路という2つのプロットを単純明快に描いているに過ぎないのだそうで、これは、従来の新派映画の枠組みを超えたというよりハリウッド的な構成の映画への試みだったようだ。・・と言う。なお、ここでは、中山晋平の作曲した「枯れすすき」の譜面は1919 (大正 8)年から売り出されていた・・と書かれていたことも補足しておこう。映画のこと、唄のことを詳しく知りたい人は、「小唄映画に関する基礎調査」を見られると良い。
だから、この唄も、大方の人がイメージしているような哀調のおびたただ暗い感じの曲というのではなく、むしろ、逆に、当時の暗く重苦しい閉塞した世の中から一日も早く脱出したいという裏返しの希望を込めた曲として受け止めるべきなのであろう。
昭和も、戦後12経った1957(昭和32)年には、童話詩人・野口雨情の放浪生活を描いた純愛ドラマとして映画「雨情」(監督:久松静児。以下参考のgoo-映画参照)が公開された。結婚しながらも、惚れた女のあとを追って家出するダメ男を森繁久彌が好演。主演した森繁が独特の森繁節で「枯れすすき・・・」を歌い再び大ヒット。大正の歌が昭和の時代に見事歌謡曲として甦り、今でも、戦後の焼け野原の中から立ち上がってきた「枯すすき」に人生の哀愁を共感する世代に支持されている。私もその1人で、暇な時などハーモニカで楽しんでいる。いい曲なので聞くのなら以下が良いのでは。
二木紘三のうた物語: 船頭小唄
http://duarbo.air-nifty.com/songs/2007/12/post_0aae.html
また、1974(昭和49)年には、類似の哀愁を持つ曲「昭和枯れすゝき」(作詞:山田孝雄、作曲:むつひろし、唄:さくらと一郎のデュエット)もあり、翌年の1975年(昭和50年)同名の映画(監督:野村芳太郎、以下参考のgoo-映画参照)も作られた。
この歌の方は、TBS系『時間ですよ昭和元年』の挿入歌として歌われたもの。
『時間ですよ』は、下町の銭湯を舞台にしたコメディで、女湯シーンのヌードが売り物の一つであった。今から思うと、よくこんなドラマが、ゴールデンタイムに放映されたものだと思うが、主演は森光子。他には、堺正章や悠木千帆(後の樹木希林)らが出演。天地真理、浅田美代子らの出世作にもなったもの。
『時間ですよ・昭和元年』はその第4作で、時代設定が昭和の初めに改められた。又、荒井注ザ・ドリフターズ脱退後初めて単独で出演。森光子の亭主役を演じ俳優としてデビューし話題になった。サブストーリーとして、肺を病んだヤクザ者(細川俊之)と足抜け女郎(安田道代=現・大楠道代)の悲恋が描かれたが、そのBGMにさくらと一郎の「昭和枯れすすき」が使われ、2人のすさんだ未来を暗示した。何となく『船頭小唄』を思い起こさせるイメージ設定だ。この挿入歌が大ヒット、その年に最も売れたシングル盤(1974年7月発売)となった。
♪貧しさに負けた いいえ世間に負けた
この街も追われた いっそきれいに死のうか ・・・ ♪歌詞は以下参照。 
昭和枯れすすきMIDI
http://www15.plala.or.jp/hiroiosa/index-ikinuki-mysong-showakaresusuki.htm
これもなかなか良い曲だ。全国にブームを呼び、一躍注目を浴 びた"さくらと一郎"が、2匹目のドジョウを狙ってか、2006(平成18)年「平成枯れすすき」を出しているが、以下で視聴できる。
JBOOK:平成枯れすすき/バッカじゃなかろかルンバ!:さくらと一郎:CD
http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/3064844/s/
私には最近の曲はよく理解できなので、新しい曲のことは余り知らないがヒットしているのだろうか?・・。
正直、私には余りピンとこない。大正、そして昭和の「枯れすすき」が泣きそうな感じもするのだが・・・。平成の今の時代、100年に一度とも言われる世界的大不況に襲われ、失業者が激増。住む家もない人も多く出ている深刻な時代に入っっており、今の時代に合った「枯れすすき」なら、またまた、大ヒットすると思うのだけれどもね~。“唄は世につれ世は歌につれ“・・・じゃないけれど、過去の歌謡曲などには、その時代時代を映し出した名曲が多かったが、今は、日本語もよく分からない人が日本の首相をしている時代、いい詩を作れる人が居なくなったのだろうね~。良い曲作りには、前提として良い詩がなければしょうがないものね~。
(画像は、1923年公開の映画「船頭小唄」の1シーン。左:岩田祐吉の船頭の律太、右:粟島すみ子扮する許婚お君。朝日くろにくる「週刊20世紀」より)
参考:
野口雨情の忌日
http://blog.goo.ne.jp/yousan02/e/4389433417567e58d5ad506abb91a0a9
船頭小唄 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%B9%E9%A0%AD%E5%B0%8F%E5%94%84
北茨城市歴史民俗資料館(野口雨情記念館)
http://www.ujokinenkan.jp/
.d-score 「野口雨情 年譜 - 」
http://www.d-score.com/db/ujo
[PDF] 小唄映画に関する基礎調査
> http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/26754/1/015.pdf
池田義信映画「船頭小唄」
http://www.jmdb.ne.jp/1923/ay000040.htm
: 岩田祐吉 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E7%94%B0%E7%A5%90%E5%90%89
早稲田大学と文学:「金の船」
http://merlot.wul.waseda.ac.jp/sobun/n/no001/no001b01.htm
小唄 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%94%84
雨情 - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD25225/
作家別作品リスト:No.286
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person286.html
第一次世界大戦下の日本- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6%E4%B8%8B%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC
松岡正剛の千夜千冊『野口雨情詩集』野口雨情
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0700.html
中山歌子-映画
http://www.jmdb.ne.jp/person/p0271150.htm
伊藤大輔 (映画監督)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E8%97%A4%E5%A4%A7%E8%BC%94_(%E6%98%A0%E7%94%BB%E7%9B%A3%E7%9D%A3)
池田義信-映画
http://www.jmdb.ne.jp/person/p0266540.htm
昭和枯れすすき - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD20032/

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2 コメント

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船頭小唄 (さいとうやすお)
2012-08-10 15:03:24
★過日 8月8日 塩原温泉でアコーディオン奏者の近藤志げるさんの 演奏会にいってみた。 会場は二口雨情のゆかりのある和泉屋旅館である。 彼は船頭小唄の前に語り口で、野口雨情が、まったく売れない頃の話と、どういういきさつかは分らないが、亭主が死のうと妻を夜中に小船に乗せる・・・察知した妻が言う一言・・・  子供が居るんだよ・・はっと 我にかえって小船を戻すシーン・・を語り・・それが歌の二番にあるんだよと・・♪死ぬも生きるもねぇあなた・・・・  感動して聞きほれていました・・・
船頭小唄 (管理人)
2012-08-14 09:25:39
さいとうやすおさん書き込みありがとう!
アコーディオン演奏による船頭小唄情緒があってよかったでしょうね。
それも、雨情とゆかりの深い和泉屋旅館で、歌の解説も聞けて・・・。
ただ、雨情らに親しまれた塩原温泉が、景気低迷の影響などから宿泊者数が減少し、さらに東日本大震災や福島第1原発事故の風評被害なども重なり和泉屋旅館は破産したらしいですね。残念ですね。

那須塩原温泉郷の(有)和泉屋旅館/破産開始決定 | JC-NET
http://n-seikei.jp/2012/05/post-8880.html

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