スターアニスの 『大和路 里の光彩』

アーカイブ中心の風景写真、趣味の書・刻字など・・いろいろと楽しんでおります。

古代の珍味『飛鳥の蘇』 探訪①

2007-09-18 11:16:48 | 奈良県のモノづくり探訪記

『モノづくり探訪』スタートにあたって・・・

つくる(作る、造る、創る、<為る、製る>)。
われわれの周りには、「モノづくり」される人がたくさんおられる。

伝統工芸品づくり、名産品づくり・・・ETC。
それらに携わる人々に逢って、モノづくりに対する、味・技へのこだわり、誕生秘話・苦労などを聞いてみたくなった。
どこまで聞けるかワカラナイ。せめて現場をこの目で見てみたい。

さて、どんなモノがあるのか。何処を訪ねればいいのか? 出来るだけ私にとって身近なものから、ひとつずつ訪ねてみることにしょう。

酒、醤油、素麺、筆、墨、箸、和紙、金魚・・・その他いろいろあるはずだ。
どんなモノが、どんな物語があるか・・・ドキドキ、ワクワクしながらのスタートです。



古代の珍味『飛鳥の蘇』  探訪 ① 

古代のチーズ「蘇」が、明日香にあるとは知っていたのだが・・・・。
何処で造られ、どんな味がするのか・・・。

ネットで調べると奈良県橿原市南浦町にある「みるく工房飛鳥(西井牧場)」で造られているという。
訪れたのは昨日、35度を越す猛暑が襲い、小さな店内は子供づれが多く、アイスクリームがよく売れている。
一人の女性が35度近くの暑さの中で奮闘中だ。次々、お客が来るため聞くことも申し訳ない状態だ。並んで待つことに・・・。

この工房の売店に連なる工場で作られているのだろう。牛乳工場独特の匂いが周囲に漂っている。

やっと順番が来て・・・「蘇のチーズを欲しいのですが・・・」との問いに「この店には無いので・・。明日香の各販売店に卸していて、見本しかないので・・・これでも良かったら・・・」と、冷蔵庫から出してきて、味見用として小皿に入れてくれた。
「コレ、持ち帰りたいのですが・・・」と聞くと、「ダメですよ! クーラーBOXを持ってこられても心配ですから・・・」と厳しいお言葉。
製造元だから至極当然で慎重な対応だ。

乳牛はどこにいるのか、近くの牧場だと思うが・・・。聞くのを忘れた。

貴重なものだ。小皿のひとかけらを口に運んだ。
匂いはキャラメルのように甘いが、舌で味わうと穀物のような香ばしさと少しざらついた感触だ。
チーズのようなとろみが無く、さっぱりした感じだ。かすかな塩気もあり、おやつにしたり、ワインなどにも良く合うような味だ。

次々と来られるお客の多さに、詳しく聞くことも出来ず、諦めた。
では、どのような形で売られているのか、石舞台近くの土産物店に向かった。
売店のショーケース前に「飛鳥の蘇・あります」の掲示。
最後の一個だという。
買い求めた。小さな四角い固まりを箱に入れ、袋に入れられていた。
1050円と、割高な感じだ。

みるく工房さんには、毎日「注文する」のだそうだ。予測する観光客の人数に応じて数は変わるという。

自宅に持ち帰り、開封する。
箱の中に、「飛鳥の蘇」についての説明書が添付されていた。また、ネットで調べたことから次のことが分かった。

「蘇」とは、飛鳥京の時代に年貢として納められていた物が、「蘇」(そ)だったと記録が残っています。
延喜式(平安時代初期の宮中の年中儀式などが書かれた本)にも記述があるそうです。

10年前、今やこの地域で1軒となっていた西井牧場は、飛鳥国立資料館より「万葉の衣食住展」に、「蘇」を復活させて出展してもらえないかと依頼を受けたことから、スタートしたそうです。

作り方は全乳の牛乳を加熱しながら練り、どんどん煮詰めていく。
38リットルの牛乳を約7時間煮詰めて約4キロの「蘇」ができる。
牛乳も数時間加熱すると薄く茶色に色づき、煮詰まると濃いキャラメル色になりネバネバしてくる。
その状態のものを24×14くらいの木箱に流し込み冷蔵庫で冷やし固める。
固まったものを8等分して出来上がるのだ。それが6cm×5cmのこの大きさなのです。

はるかシルクロードを経て飛鳥に伝わったとされているこの「蘇」。
当時の庶民にとっては夢の食物で貴族や高級官人のみが口にできたという超高級食料で、美容と不老長寿に効果を期待されたと言われていた。

飛鳥京時代における高貴な香りと味をゆっくり味わえる「古代チーズ」なのです。

昨夜は、ビールと日本酒で少し食べた。
今夜は、ワインにしよう。


奈良県橿原市南浦町にある「みるく工房飛鳥」の案内看板。天香具山の南山麓にある。


「天岩戸神社」前にある「みるく工房飛鳥」。「蘇」の製造と乳製品の販売も・・・。


「みるく工房飛鳥」で試食させてもらった「蘇」。ケーキかクッキーのような感じだ。お菓子感覚で食べた。 


なんとか手に入れた「蘇」。明日香の里のお土産物店や近鉄駅の売店でも売られているらしい。5×6cm 1050円なのだ。


添付されていた「蘇」についての説明書。日本チーズ発祥の物語・・・万葉の味が紹介されています。

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5 コメント

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Unknown (よりりん)
2007-09-18 15:43:09
長いこと、ここも行ってないです。
明日香へ出かけるときは通るのですけど、結構人が多いので、スルーしてしまいます。
あと、駐車場が狭くて私の腕では・・・汗。
最近は、広くなったんでしょうか?

でも、ここのアイスは、まさにミルクって感じの味で、素朴でおいしいですよねw
Unknown (のび太)
2007-09-18 17:18:07
古代の珍味「飛鳥の蘇」とは、何だろうと思いましたが、チ-ズなんですネ・・・遠く遥かなシルロ-ドから伝承され、飛鳥人に珍重された歴史の重みを感じます。 38リットルの牛乳(日本酒21本分)を約7時間も煮詰めて約4キロの「蘇」しか出来ない・・・市販のチ-ズと比較すると割高なのでしょうが、飛鳥にしかない貴重品であり、お酒との相性も抜群なのではと思ってます。
Unknown ()
2007-09-18 18:58:32
若い頃に(ン十年前でしょうか?)蘇を食べたことがあるのです。定かではないのですが、飛鳥大仏の近くか、甘樫の丘の近くだったと思います。
でもその頃、この蘇は存在しなかったのでしょうか。確かに古代のチーズだと言われたのです。
石鹸のような見た目で、美味しいとは言いがたかった気がします。
10年位前にも石舞台の近くの店で食べましたよ。
その時は以前の印象より、まあ食べられる!感じでした。
スターアニスさんがゲットした蘇は美味しそうではありませんか!違うものなのかなあ、それとも進化したのでしょうか。
また食べてみなくては!!
Unknown (なりちゃんじいじ)
2007-09-18 21:51:02
新シリーズ・スタートですネ、大和のいろいろ古いものが出てくるのかなと想像しております。古代のチーズ「蘇」は残り少ない脳内メモリーにinputしました。おみやげによさそうです
Unknown (ヒキノ)
2007-09-19 09:04:17
蘇、酪、醍醐、古代乳製品らしいですが今復元してるのですか。1かけら1100円、高いもんではありません。古代の味がするのですから。
醤油、酒以外は今でも本場ですね。奈良は遣唐使の昔から先進技術の入り口だったのですから。

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