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「ウルトラQ」伝説の全28話

2023年09月09日 | ウルトラ関連



 「ウルトラQ」伝説の全28話



 1966年1月2日から、半年に渡って放送された日本初の怪獣特撮番組「ウルトラQ」。

 この番組の誕生と成功なくして、現在まで56年に渡って続く国民的特撮作品“ウルトラシリーズ”は生まれませんでした。

 『ウルトラマンブレーザー』にガラモンが登場したということで、『総天然色ウルトラQ』を参考に、全28話を振り返ります――。





目次

   第1話「ゴメスを倒せ!」

第2話「五郎とゴロー」

第3話「宇宙からの贈りもの」

第4話「マンモスフラワー」

第5話「ペギラが来た!」

第6話「育てよ!カメ」

第7話「SOS富士山」

第8話「甘い蜜の恐怖」

第9話「クモ男爵」

第10話「地底超特急西へ」

第11話「バルンガ」

第12話「鳥を見た」

第13話「ガラダマ」

第14話「東京氷河期」

第15話「カネゴンの繭」

第16話「ガラモンの逆襲」

第17話「1/8計画」

第18話「虹の卵」

第19話「2020年の挑戦」

第20話「海底原人ラゴン」

第21話「宇宙指令M774」

第22話「変身」

第23話「南海の怒り」

第24話「ゴーガの像」

第25話「悪魔ッ子」

第26話「燃えろ栄光」

第27話「206便消滅す」

第28話「あけてくれ!」

編集後記




 第1話「ゴメスを倒せ!



 東海弾丸道路のトンネル工事中、洞窟に突き当たり「怪物が現れた」と報告があった。

 毎日新報にもその一報がもたらされ、カメラマン兼記者の江戸川由利子は星川航空のセスナで現場へ急行した。

 早速、洞窟の調査を行う由利子と星川航空パイロットの万城目淳。そんな中、金峰山の裏山の洞窟からゴメスとリトラという生物が描かれた古文書が見つかったーー。





【制作裏話】

 ゴメスは予算削減の関係で、『モスラ対ゴジラ』のゴジラに角と胴回りのウロコ、腕をかぶせて甲羅と牙を付けたものを使用した。(演者は中島春雄氏)

 リトラは、『三大怪獣 地球最後の決戦』の操演用ラドンの改造。体と羽の部分に上から色々貼り付けて、首から上は動かせるように新しく作り直している。

 円谷英二監督は、羽ばたきを特撮で表現するのが難しいため、「鳥は出すな」と言っていたという。

 ゴメスが出現する工事現場は、八王子からずっと先の中央高速のトンネル工事をしているところが実際にあったという。

 星川航空でのシーンは、調布の飛行場で撮影が行われていた。


 第2話「五郎とゴロー」



 伊豆天城山のロープウェイ走行中に巨猿が現れ、観光客はパニック状態となった。

 そんな中、2カ月間無人だった近隣にある野猿観測研究所に山猿が押し入り、保管されていた青葉くるみが空っぽになっていた。

 巨猿は、青葉くるみを食べたことで甲状腺ホルモンのバランスが崩れ、異常な発育により巨大化したものだった――。





【制作裏話】

 ゴローは、『キングコング対ゴジラ』で使われたキングコングの怪獣スーツを改造して使用。

 この回では、牛乳配達員役で、『ウルトラマン』でイデ隊員役を務めることになる二瓶正也氏が出演している。

 猿を巨大化させたのは、ホルモン剤「ヘリブロン結晶G」という設定だったが、スポンサーが武田薬品に決まり、薬品ではマズイと「青葉くるみ」に変更された。


 第3話「宇宙からの贈りもの」



 三原山の噴火風景を記事にするため、由利子は星川航空のセスナで海上を飛行していた。

 すると、正体不明の物体が海上に落下。海上保安庁に調査を依頼したところ、半年前に火星の表面撮影を目的に打ち上げた宇宙ロケットのカプセルだった。

 そのカプセルの中にはウズラの卵のような金色の物体が収められいたが、それは火星怪獣ナメゴンの卵だった――。





【制作裏話】

 この回では、特撮との合成部分がうまくいかず、何度も五日市のロケ地で撮り直しを行ったため、スタッフやキャストからブーイングが起きたとか。

 TBSのプロデューサーだった栫井巍(かこい・たかし)氏は、試写でこの「空からの贈りもの」を観て、ウルトラQの怪獣路線への変更を決断している。

 なお、試写で子供受けが良かったため、この回をウルトラQの第1回に放送する予定だったが、円谷一監督の要望で「ゴメスを倒せ!」に変更になったという。



 第4話「マンモスフラワー」



 早朝、ビルの周りを警備員が歩道が盛り上がり、ビルが激しく揺れる光景を目の当たりにして、気を失った。

 翌朝、同ビルにある広告社に空から撒く広告ビラを取りに来た星川航空の万城目とパイロット助手の戸川一平だったが、事務所は滅茶苦茶になっていた。

 その後、皇居の堀に巨大な根のようなものが浮かび、付近のビルで根が人を襲う事件が起こった。それは、現代に蘇った古代植物ジュランだった――。





【制作裏話】

 ウルトラQは、1964年9月27日に「マンモスフラワー」の皇居のお堀のシーンからクランクインした。

 ヒロイン役の桜井浩子氏は寝坊してしまい、集合時間に遅刻してしまったが、大らかな現場だったため、誰もそれを咎めずホッとしたという。

 エキストラにウルトラマンのスーツアクター・古谷敏氏の姿も見える。


 第5話「ペギラが来た!」



 特別取材半として南極越冬隊の船に乗っていた万城目淳。

 しかし、突然船が黒煙に襲われ、エンジンが停止、無線もレーダーも故障して使えなくなった。

 万城目は、前回の越冬隊で行方不明になった野村隊員の失踪原因と船の事故原因究明を始める。野村隊員の手帳には「午前3時 また聞いた ペギラ」と書かれてあったーー。





【制作裏話】

 「ペギラが来た!」は制作第14話で、この回から怪獣デザインの成田亨氏と怪獣造形の高山良策氏がスタッフに加わった。

 ペギラのデザインは成田氏が井上泰幸氏のデザインをリライトしたものだが、瞼は高山氏によって付けられた。

 野長瀬三摩地監督は「自分なりにゴジラを撮りたい」という姿勢で撮影に臨み、全カットを自ら絵コンテ化し、監修の円谷英二氏が自分で特撮カットを追加撮影したという。


 第6話「育てよ!カメ」



 授業中にも関わらず、亀の世話を続ける太郎少年。彼によると、その亀は99センチに成長すると竜宮城に連れていってくれるらしい。

 先生に見つかり、屋上に立たされた太郎少年は銀行強盗をしているギャングの姿を目撃。職員室に駆け込み、先生に報告するが信じてくれない。

 放課後、亀と一緒に校内を歩き回っていたところ、理科室に隠れていたギャングのズボンに亀が噛み付いたことで、ギャングと太郎少年の珍道中が始まる――。





【制作裏話】

 この回でも、『ウルトラマン』のイデ隊員役の二瓶正也氏が銀行ギャング役を務めている。

 ちなみに、オープニングクレジットに流れる文字は、監督の中川晴之助の姪に書いてもらったものだという。


 第7話「SOS富士山」



 富士山周辺の湖の水温が急に高くなり、洞窟奥の万年氷が溶けかかっており、富士山の噴火の可能性があると考えた由利子は、火山研究所に取材に行くことになった。

 取材を進めるうちに、子供の頃に樹海に迷い込み、野生児となったタケルという少年がいることがわかり、富士山噴火よりそちらのほうがネタになると考え始める由利子。

 その時、富士山の麓の吉野のお池から熱湯とともに大岩石が吹き上がり、国道に落ちた。それは、岩石怪獣ゴルゴスだった――。





【制作裏話】

 白糸の滝でロケが行われており、滝の近くの地面が泥濘んでいて桜井氏は自前の革靴が泥だらけになり、履けなくなったという。

 ゴルゴスの鳴き声はゴジラのものが使われており、スーツアクターは中島春雄氏。


 第8話「甘い蜜の恐怖」



 ある嵐の夜、伊佐山農事試験場の温室に侵入者があり、ハニーゼリオンを培養していた地蜂の巣が何者かに荒らされた。

 時を同じくして、山が突然盛り上がり沿線の線路を走っていた機関車が脱線事故を起こした。

 一平のセスナの操縦訓練で上空を飛行していた万城目は、調査のため一の谷博士を連れて試験場を訪れた所、突然畑が盛り上がり巨大モグラが姿を現した――。





【制作裏話】

 万城目が着ているジャケットは自前のもので、バーバリー製のものだという。

 また、農事試験場の研究員・木村を演じる黒部進は、『ウルトラマン』で主人公のハヤタ隊員を演じることになる。

 洞窟ロケの場面で、梶田興治監督が「急に怪獣を出せっていうから、あんなモグラの怪物を出さなきゃならなくなった」とボヤいていたという。

 ちなみに、もぐら怪獣モングラーの声はライオンの声を加工したもの。


 第9話「クモ男爵」



 付近を航行中の船舶から「灯台の灯に異常が見える」との連絡が入ったため、階上の灯台室に向かった灯台の職員が、巨大な蜘蛛に襲われた。

 ちょうどその頃、パーティ帰りの万城目、一平、由利子らが付近の岬を車で走行していたが、夜も遅く「このままじゃ野宿になる」と一平たちは近道を探すことに。

 しかし、一平ともう一人の仲間が底なし沼に落ち、びしょ濡れに。助けを求めるため、沼の対岸に見つけた古びた洋館に向かう一行だったが――。





【制作裏話】

 タランチュラは井上泰幸氏がデザインして東宝の特撮美術課で作ったが、クモの目玉が8つあることを知らず、2つしか作られていない。

 タランチュラの脚はシュロで作られており、桜井氏が触ったら硬かったという。

 洋館のセットも井上氏によって、目黒の辺りにあった建物をモデルにデザインされ、東宝撮影所のステージに造られた。


 第10話「地底超特急西へ」



 東京-大阪-北九州をわずか3時間で結ぶ超特急「いなずま号」の公開試運転が報道関係者を招待して行われることになった。

 その頃、人工生命M1号が入ったトランクの大阪の研究所への輸送を頼まれた万城目だったが、自分のトランクと間違えた一平がそれを持っていなずま号に乗り込んでしまう。

 人工生命を珍しがった新聞記者のカメラのフラッシュのエネルギーによって急激に成長したM1号は運転席をのっとり、いなずま号は暴走を始める――。





【制作裏話】

 新東京駅の構内は、有楽町の東京交通会館と東京駅八重洲南口で行われた。

 「いなづま1号」の運転指令室の責任者・西岡主任を演じる石川進氏は、『ウルトラマン』でイデ隊員を務める予定だったが、途中で撮影に来なくなり、二瓶氏が代役となった。

 また、この作品には、円谷プロ企画文芸室長の金城哲夫氏が車掌役で、脚本家の上原正三氏が記者役(由利子と西岡主任の間にいる人物)で出演している。

 なお、M1号の「ワタシカモメ」という台詞は、初の女性宇宙飛行士である旧ソ連のテレシコワが宇宙から発信した言葉で、飯島敏宏監督がその場の思い付きで付け加えた。

 ちなみに、M1号というのは、人工生命を意味するMAN-MADE-1号の略。


 第11話「バルンガ」



 土星探検を終え、大気圏突入を前にしたサタン1号が、宇宙飛行士の「風船だ!」という叫び声とともに突然の燃料切れで海に墜落した。

 取材のため、事故現場上空を飛んでいた万城目のセスナも突然の燃料切れが起き、調べてみるとラジエーターの隙間に風船のような生命体が浮いていた。

 箱に入れて車に乗せて走っていると、車のガソリンが空っぽになると同時に車いっぱいに膨らみ始め、ついには車を破壊して上空に漂い始めた――。





【制作裏話】

 バルンガの造形は佐々木明氏。台風が東京の街を襲うシーンは、東宝映画『妖星ゴラス』の映像が引用されている。
 


 第12話「鳥を見た」



 深夜の動物園で動物たちが突然騒ぎ出し、飼育員が何者かに襲われた。翌朝、動物の檻が破壊されており、倒れていた飼育員は守衛に「鳥を見た」と言って力尽きた。

 翌朝、とある漁村に幽霊船が現れ、調査のため乗り込んだ万城目一行は、航海日誌を見つけた。船から降りると同時にその船は沈没し、謎の小鳥が現れた。

 その公開日誌は998年前の書き込みで終わっており、そこには「鳥を見た」と書かれていた――。





【制作裏話】

 三郎役の津沢彰秀は、『ウルトラマン』でホシノ少年役を務めることになる。

 精巧な港町のセットが組まれ、ラルゲユウスによる崩壊シーンが撮影されたが、その出来に英二氏は満足せずNGとなった。

 変わりに東宝映画『空の大怪獣ラドン』の福岡の街の破壊シーンのフィルムが流用されたという。


 第13話「ガラダマ」



 ある日、少年たちが弓が谷に落下してきた奇妙な岩石のような物体を拾って学校に持ってきた。

 理科教師でも正体がわからず、大学の物理学教室で分析したところ、宇宙から飛来したチルソナイトという鉱石で、極超短波を発信していた。

 鉱石が落下した地点を調査しに現地を訪れた一の谷博士一行だったが、突然空からガラダマが落下、中から隕石怪獣ガラモンが現れたーー。





【制作裏話】

 ガラモンは当初、成人男性サイズでデザインされていた。

 しかし、ステージの狭さと高さの低いホリゾントが特徴の美センで、迫力ある映像を撮るためには、ミニチュアセットを大きく見せる必要があった。

 そこで、低身長俳優の高橋実氏を起用して、三頭身に変更することになったという。


 第14話「東京氷河期」



 真夏のある日、着陸中の飛行機が突然爆発した。そして、黒煙が空を走り、飛行場が全面的に凍結した。

 関デスクに取材を任された由利子は、「ペギラが原因ではないか」と伝えるが、南極での原子炉爆発による氷山の南下が原因と一蹴される。

 東京の気温がどんどん下がっていく中、毎日新報で父親が行方不明になった子供の取材中、黒煙とともにペギラが現れたーー。



【制作裏話】
 
 氷に閉ざされた東京の街をミニチュアセットで作り上げた。360度回転するカメラの台座も、車が空中を飛ぶ社内のシーンで効果を上げた。

 カット割りと合成の大胆さは、野長瀬監督の絵コンテ設計の成果だという。



 第15話「カネゴンの繭」



 子供たちが開いていたガラクタバザーにやってきたお金な大好きなガキ大将・金男は、振るとお金の音がする繭を見つけた。

 「飼ってると中のお金が増えるかもしれない」と繭を家に持ち帰った金男。お金好きの金男に呆れて「お金亡者のカネゴンになっちゃうよ」と両親。

 部屋に戻ると繭が巨大化しており、中に入っていた大量のお金をとろうとして繭に取り込まれた金男は、翌朝目覚めるとカネゴンの姿になっていた――。





【制作裏話】

 加根田家の室内は、美センのステージに組まれたセットだという。

 この回でも、工事監督の横でブルドーザーを運転する助手役で、『ウルトラマン』のイデ隊員役の二瓶正也氏がで出演している。

 カネゴンのデザインの原型は、監督の中川晴之助氏と脚本の山田正弘氏が脚本作りの段階で綿密な打ち合わせをして作り上げていった。

 中川監督がフィルムを使いすぎるため、スタッフたちから“フィルム怪獣ハルゴン”と呼ばれて恐れられていたとか。


 第16話「ガラモンの逆襲」



 天文物理学研究所で厳重に管理されていたガラモンを操る電子頭脳が、謎の人物によって盗まれた。それと同時に、巨大な隕石群が地球へ向かって飛来を始めていた。

 電波監理所で電子頭脳から送信される電波をキャッチした万城目一行だったが、謎の男はトラックをヒッチハイクして榛名に向かっていた。

 そして、関東に特別避難命令が発令される中、午前8時48分、ガラダマが東京に落下した――。





【制作裏話】

 この回のガラモンは、1つしかない怪獣スーツでガラモンが3体いることを表現するために、胸にマークがついている。

 劇中では、2種類の異なる(チルソニア遊星人の)マークをつけているガラモンと、マークがついていないガラモンが登場する。

 なお、東京タワー周辺の街のミニチュアセットは美センではなく、東宝撮影所のステージに組まれており、撮影会も東宝撮影所で行われた。

 ただ、ガラモンがビルを破壊するシーンは美センのBステージで撮影されている。

 なお、電波監視所の花沢主任は、『ウルトラマン』で岩本博士役を務めることになる平田昭彦氏が演じている。

 野長瀬監督は、仲間を見殺しにする宇宙人の非情さを生殖後に役目を終えたオスを食べてしまうメスのカマキリからヒントを得て、セミ人間のイメージを生んだという。

 役者も、中性的な美輪明宏氏に似た役者をわざわざ見つけ出している。なお、セミ人間の頭部はバルタン星人に改造されている。


 第17話「1/8計画」



 万城目たちとのドライブの途中、区役所の入り口に掲げられていた「1/8計画 第3次募集中」という看板が気になった由利子は、中の様子を見に行った。

 話によると、人口対策として人間や街のサイズを1/8にする計画で、Sモデル地区では働く必要がなく、納税の義務も免除され、毎日好きなことをして暮らせるという。

 人の流れに押されてS13地区専用のエレベータに乗ってしまった由利子は、人間縮小機で1/8のサイズにされてしまう――。





【制作裏話】

 光学撮影の中野稔氏が冗談で言った「いつも生物が大きくなるだけじゃないか」という言葉を受けて、金城氏が書き上げた作品。

 この回は、怪獣路線への変更で制作が見送られるはずだったが、栫井氏の「S13地区に現れる二人を怪獣に見立てることも可能」という一言で続行となった。

 劇中の区役所は、世田谷区役所の第一庁舎で撮影されている。

 桜井氏がテスト撮影の時に、石膏でできた電話の受話器を床に落として欠けてしまったが、カメラに映らない箇所だったので事無きを得たという。


 第18話「虹の卵」



 トラックが建設中の産業都市にある原子力発電所に濃縮ウランを輸送中、突然に山肌が崩れ、地底怪獣パゴスが姿を現した。

 その翌日、近くの竹林に、車椅子のお婆ちゃんの好物の筍を取ろうと集まった子供達の集団「たんぽぽ団」の姿があった。

 お婆ちゃんから「ササメ竹の花と虹の卵を見つけると何でも願い事が叶う」と聞いたピー子は、虹の卵を見つけてお婆ちゃんの足を直そうとするが――。





【制作裏話】

 パゴスは、東宝映画の『フランケンシュタイン対地底怪獣』に登場するバラゴンを改造して使用された。

 怪獣のスーツアクターは、中島春雄氏が担当している。


 第19話「2020年の挑戦」



 レーダーが探知した未確認飛行物体に自衛隊のジェット哨戒機が撃墜されたが、天野二等空佐の証言は幕僚たちに信じてもらえない。

 世間では突然人が消える事件が続発しており、由利子も取材中に人の消失を目撃するが、デスクは取り合ってくれない。

 その後、星川航空で鉢合わせた二人に、一平はある博士が書いた「2020年の挑戦」という小説の話を持ち出した――。



【制作裏話】

 ケムール人のスーツアクターは当時、東宝の俳優でのちにウルトラマンになる古谷敏氏。美術の成田亨氏が日本人離れした8頭身の古谷氏の体形を気に入って指名した。

 万城目がケムール人に変身する際に耳が動くのは、佐原健二本人が動かしているという。

 また、ケムール人がパトカーに追いかけられるシーンはスクリーンプロセスといって、映像の前で演技をしたもの。

 ケムール人の声はマタンゴの声が使われており、スーツはバルタン星人に流用された。名前の由来は「煙のように消える宇宙人」から来ている。



 第20話「海底原人ラゴン」



 伊豆地方の海底火山の噴火が爆発した。デスクから取材を命じられた由利子は、万城目と一平とともにヘリで向かった。

 由利子一行が、岩根島に住む日本沈没論者の海洋地質学者の石井博士の元を訪れたところ、噴火した海域で謎の物体を引き揚げた漁師と出会う。

 石井博士によるとその物体は、約2億年前に地球を支配していた海底原人ラゴンの卵だという。その頃、島に謎の怪物が現れ、島民を襲い始めた――。



【制作裏話】

 この回のロケは、三浦半島の一軒家を借りて行われた。

 早朝から夕方まで外のシーンを撮影し、夜になってから一軒家の中での撮影が行われたが、早朝の7時までかかったという。

 さらに、そこから日が沈んでしまって撮れなかったシーンの撮影が始まり、主演の佐原健二氏はクタクタになってしまったとか。

 なお、ラゴンのスーツアクターは、ケムール人に続いて古谷敏氏が担当している。



 第21話「宇宙指令M774」



 豪華客船に乗っていた由利子が夜風に当たりに外に出ると、落ちていた人形から、地球への怪獣ボスタング侵入の警告が発せられた。

 由利子の話を信じようとしない万城目と一平だったが、翌日、一平が操縦訓練をしていたセスナが何者かに遠隔操作されて、謎の島に誘導された。

 島の建物内のジュークボックスからは、地球への怪獣ボスタング侵入の警告が再び発せられ、その夜、UFOが地球に降り立ち、海上ではタンカーが爆発炎上した――。





【制作裏話】

 脚本家・上原正三氏の『ウルトラQ』デビュー作。

 怪獣ボスタングが撮影中、水を吸い込んでどんどん重くなって操演で持ち上がらなくなって苦労したという。

 特撮シーンのほとんどは、東宝撮影所の大プールで撮影されている。



 第22話「変身」



 登山中の一行が、雑木林に動物の骨と巨大な人間の足跡を発見した。毎日新報にも一報が入り、雪男班が編成されることになった。

 しかし、由利子の友人のあや子によると、その雪男は自分のフィアンセなのだという。一の谷博士の研究所で事の経緯を話し始めるあや子。

 フィアンセとハイキングに行った際、洞窟で巨蝶モルフォ蝶の毒鱗粉を浴び、喉の渇きを癒すためにモルフォ蝶生息域にあった沼の水を飲んだところ、巨大化しまったのだという――。





【制作裏話】

 巨大化した浩二が木々の間から顔を出すシーンは、美センのオープンセットで撮影されている。

 この回は秋川峡谷でのロケだったが、番組で使用していたオープンカーの運転手が休んでしまったため、急遽主演の佐原氏がロケ地まで運転していくことに。

 しかし、途中で給油している最中に、ロケバスが佐原氏を置いてロケ地に向かってしまい、ロケ場所を知らない佐原氏は大変な思いをしてロケ地に到着したという。

 なお、東京五輪が開幕した1964年10月10日は、この回のロケ中だったため、ラジオで競技を聞いていたとか。



 第23話「南海の怒り」



 夕焼けに染まる太平洋を初航海の雄三が第五太平丸を進めていた時、突然船底に衝撃が走る。それは、船よりも大きい大ダコの襲撃によるものだった。

 この近海では各国の漁船が消息を絶っており、謎の海域にメスを入れるために、毎日新報は万城目たちを派遣することになった。

 しかし、島民は万城目たちに対して敵意をむき出しにして上陸を許そうとしない。その時、大ダコのスダールが現れ、島民の子供を襲い始めた――。





【制作裏話】

 この回は、予算や技術的に撮影は難しいと思われていたが、東宝の『キングコング対ゴジラ』の大ダコのシーンを流用してわずかの撮り足しで制作された。

 予算が厳しく日帰りでの撮影が要求されていたが、島での撮影が多かったため、野長瀬監督の希望で泊り込みでのロケになったという。

 なお、毎日新報で国連飛行隊が基地を出発したテレビニュースを見るシーンの中央にいるのは円谷プロ・企画文芸室長の金城哲夫氏。



 第24話「ゴーガの像」



 瀬川大使夫妻が国際線の空港に降り立った。その娘のタミは像を持っていたが、香港で仲良くなった女性に預けた所、その像を持ち逃げされてしまう。

 その像は、アーブ博物館から盗まれた「ゴーガの像」に似ており、タミはその像を香港の老婆から受け取ったという。

 像と一緒に誘拐されたタミは会館に監禁され、ゴーガの像は密輸集団の手に渡ったが、像の内部に謎の黒い影が映っていた――。





【制作裏話】

 野長瀬監督によると、この作品は『007』的なテンポを目指したという。

 密輸団の部下として、古谷敏氏が出演。アリーン(リャン・ミン)役の田原久子氏は、『ウルトラマン』の「人間標本5・6」にも出演している。



 第25話「悪魔ッ子



 深夜に走行していた車が何かを避けようとしてハンドル操作を誤ってガードレール下への転落事故を起こした。

 事故現場近くでは、東洋大魔術団が公演を行っていた。リリーという子供を使った催眠術によるもので、睡眠の際にも催眠術が使われたいた。

 魔術団が宿にしている建物周辺では子供の幽霊が目撃され、驚いて階段から転落死した警備員や、事故を起こしたトラックからは、子供が好みそうな小物が無くなっていた――。





【制作裏話】

 万城目がリリーを線路から救出するシーンは、国鉄の協力で八高線の箱根ヶ崎で撮影された。

 佐原健二氏(万城目役)によると、魔術師役の小杉義男氏は、東宝の養成所で行われていた発声の授業の先生で、ひときわ厳しくて怖い先生だったという。

 そのため、緊張のあまり、撮影中に思わず自分の台詞を忘れそうになることがあったとか。


 

 第26話「燃えろ栄光」



 ダイナマイトジョーは、マスコミに予告したKOラウンド通りに勝利を重ね、日本中の子供達、スポーツファンの夢と希望を担っていた。

 それは、フィリピンで釣り上げた水の中では小さく、空気中では大きくなる深海怪獣ピーター(学名:アリゲトータス)が予言していたものだった。

 しかし、世界チャンピオンをかけた世界選手権を一週間後に控えたある日、ジョーが突然行方不明になった――。





【制作裏話】

 『ウルトラQ』の助監督を務めていた満田かずほ氏は、この回と「宇宙指令M774」で監督デビューを果たした。

 ジョー役の工藤堅太郎氏は、満田監督が助監督時代に「自分が監督デビューしたら必ず呼ぶから」と約束した間柄だったという。

 ホテルとプールのシーンは赤坂プリンスホテル、林の火事のシーンは美センのオープンの南端で撮影された。



 第27話「206便消滅す」



 香港でパイロットの講習を受けた万城目と一平は、超音速旅客機206便で帰国の途に着いていたが、突然上空に現れた気流の逆巻く空間に飲み込まれた。

 万城目たちを飛行場まで迎えに来ていた由利子は206便が事故を起こしたことを知る。しかし、上空で206便の飛行音が聞こえるが、レーダーに機影は見えない。

 その頃、万城目たちを乗せた206便は不思議な雲海の世界に着陸していた――。





【制作裏話】

 怪獣路線への変更のため急遽、四次元怪獣トドラの登場シーンが加えられた。

 怪獣を新造する予算や時間も無かったため、東宝映画『妖星ゴラス』に登場した南極怪獣マグマの着ぐるみにひげを付けるなどして使用された。

 旅客機が気流に飲み込まれるシーンは、円谷プロの中庭に置いてあった洗濯機の中にミニチュアの飛行機を投げ入れることで撮影された。

 大の大人たちが洗濯機を覗き込んでいる姿を笑っていた桜井氏だったが、本編を観てその認識を改めたという。



 第28話「あけてくれ!」



 万城目と由利子とのドライブに置いてきぼりにされた一平は夜空を走る電車を目撃。

 一方、ドライブを楽しむ二人は路上に倒れている男を助けて車に乗せるが、踏切の音を聞いた男は「あけてくれー!」と錯乱状態に陥る。

 一の谷博士の催眠療法で話を聞いたところ、彼は自由な世界へ行く空飛ぶ異次元列車に乗っていたという――。






【制作裏話】

 異次元列車は小田急ロマンスカーがモデル。脚本を気に入った円谷一氏が「自分が撮る」と宣言して撮影されたという。

 しかし、栫井氏は「怪獣が出ず、ストーリーが暗く難解で子供受けが悪いため、本放送では放送しない」と決断。

 「放送させてくれ!」と食い下がる一監督を押し切り、再放送で放送することになった。

 本作の放送中止で、ウルトラマン放送開始予定が一週分繰り上がってしまったため、急遽、杉並公会堂で「ウルトラマン前夜祭」を開催し、録画中継を行うことになった。



 編集後記



 現在に至るまで、50作品以上が制作されているウルトラシリーズの祖『ウルトラQ』。

 56年の歴史を持つ国民的作品の最初の一歩は、円谷プロダクションが誕生して間もない頃に起きた、“特撮の神様”円谷英二が発端となったある騒動から始まっている。



【オプチカル・プリンター1200シリーズ】

 1963年に円谷特技プロダクションを設立し、「成果を上げるには新しい特殊撮影、光学処理の機器が必要」と考えた英二氏。

 目を付けたのは、当時世界で2台しかなかった米オックスベリー社の光学合成機『オプチカル・プリンター1200シリーズ』だった。

 この新機種は、4本のフィルムを一度にかけられるフォーヘッド方式の最新型で、白黒・カラー問わず、どんな複雑な合成も可能になっていた。

 値段は4000万円(現在の価格で5億円)と高額だったが、契約間近だったフジテレビとの提携テレビ番組『WoO(ウー)』の制作受注費で賄えると考え、代理店を通じて注文した英二氏。

 しかし、『WoO』は契約調印寸前で破断になってしまったため、代理店にキャンセルの連絡をしたが、機械はすでに船便で日本に向かっているため、キャンセルできないという。

 英二氏は慌てて、映画会社や銀行関係などを回って緊急融資の申し入れをしたが、誕生間もない円谷プロダクションにお金を貸してくれるところはなかった。

 困り果てた英二氏は、当時TBSに勤めていた長男の一氏を介して同社に借金の依頼をした。それを受けてTBSは緊急会議を開き、英二氏にこう回答したという。

 「4000万円はお貸しすることはできない。その代わり、そのオプチカル・プリンターをTBSで購入し、使用料を取って円谷プロに貸すことにする」

 この経営判断は、TBS映画部に在籍中だった円谷一氏が監督し、芸術祭で大賞を獲った『煙の王様』のフィルムがドイツに売れたことも関係しているという。

 TBSが、フィルムで作品を作れば海外に販路が開けることを知ったことが、オプチカル・プリンターを購入する後押しとなったといえる。



【アンバランス(ウルトラQ)の制作】

 その後、TBSは円谷プロに対して、自社が購入したオプチカル・プリンターを使った特殊撮影を取り入れたユニークなテレビ映画制作を打診。

 それを受けて、円谷プロの企画文芸室の室長だった金城哲夫氏は、TBSの編成部、企画部、映画部の声をまとめ上げ、企画書を作成した。

 企画書のタイトルは『UNBALANCE(アンバランス)』で、その企画書案にはこう書かれていたという。

 「我々は、全く意識しないでバランスのとれた世界の中で、無意識の中で、気楽に安心して生活しているが、何かの拍子にそのバランスが崩れてしまったら、どうなるのか」

 その後、TBSと円谷プロの間で契約が交わされ、全てが動き出した。



【UNBALANCEからウルトラQへ】

 『アンバランス』は、28本の事前制作という形で、1964年9月末にクランクインした。

 クランクイン当初に撮影、制作されていた作品は、SFもの、怪獣もの、ミステリーもの、怪奇現象ものと多種多様だった。

 その後、10月10日に東京オリンピックが開幕。体操競技での日本選手の活躍が目覚ましく、アナウンサーは“ウルトラC”を連呼していた。

 その言葉を聞いたTBSの関係者は、番組タイトルを『ウルトラQ』に変更することを決め、商標登録も済ませた。

 「Q」はQuestionのQで、準備中のアニメ『オバケのQ太郎』とQQ路線を形成しようという狙いもあったという。


【怪獣路線への変更】

 撮影が進んでいた1964年12月、TBSプロデューサーの栫井氏は、円谷プロから「何本かのフィルムが形になったので観てほしい」との連絡を受けた。

 東宝撮影所の試写室で彼が観たのは、『マンモスフラワー』『変身』『悪魔ッ子』『宇宙からの贈りもの』など数本だったという。

 翌日、栫井氏は円谷プロを訪れ、市川支配人と金城氏にこう述べた。

 「ウルトラQの放送時間は、日曜7時枠が有力。その時間枠となると子供も観ることが想定されるため、あまり難しいテーマの怪奇もの、怖いもの、SFものはどうかと思う」

 「シリーズものとしての統一感にかける」との指摘もした後、今後のウルトラシリーズの命運を決める発言がなされた。

 「怪獣ものは物語が簡単でわかりやすく、興味が引きやすい。怪獣ものに特化して、シリーズとして成立させた方が得策だ」

 この発言を受けた2人は英二氏の了解を取り付け、これ以降、『ウルトラQ』は怪獣ものとして制作されることになった。

 ここに、ウルトラシリーズの根幹となる設定が確立したのである――。

 

【再放送】              

 『ウルトラQ』は白黒映像なので、同じウルトラシリーズであるにも関わらず、再放送があまりされなかったという作品的特徴がある。

 (私が体験した第3次怪獣ブームの時も、ウルトラQの再放送はなかった)

 特にビデオテープが登場していなかった60年代、70年代は、雑誌には紹介されているが作品を観ることができないという状態が続いていた。

 こちらの記事によると、80年代に関東や地方のローカルで数回、『ウルトラQ』全話の再放送があったことがわかる。

 そのうちの1つ、1987年の夏休みの深夜に放送された「泉麻人のウルトラ倶楽部」で2話ずつ再放送されており、この番組で初めて『ウルトラQ』を観た人も多いという。

 80年代に入って『ウルトラQ』のVHSがリリースされていているが、1巻が2話収録で12600円という値段だった。

 高額な上に、カラー映像を観て育った視聴者が抵抗感を持つ白黒作品であるため、ウルトラシリーズの祖であるにも関わらず、知る人ぞ知る作品となってしまっていったように思う。

 そんな中で、2011年にHDリマスター&カラー化された『総天然色ウルトラQ』が制作されたことで、白黒映像への抵抗感が無くなったのは大きいといえる。
 
 月額500円でウルトラ作品が見放題になるTSUBURAYA IMAGINATIONにも「総天然色ウルトラQ」が配信されている。

 未見の方は、この機会に視聴してみるのもいいかもしれない。



【神の手の導き】

 白石雅彦氏の著書『「ウルトラQ」の誕生』に、こう記されている。

 
 『ウルトラQ』は、テレビ史における様々なうねりの中で誕生した番組であった。

 まずは、テレビ映画の勃興、円谷英二のブランド力、テレビ局がオプチカル・プリンターを買うという驚愕の出来事。

 テレビ俗悪論に対する対応から生まれた事前制作。東京オリンピックで流行した“ウルトラC”という言葉。怪獣路線への変更。

 これらのどれか一つでも欠けていれば『ウルトラQ』は生まれなかったに違いない。

 だが、名作とは、当事者の思いもよらぬ奇跡的な出来事に導かれ誕生するものである。

 あたかも、神の手に導かれるように――。






【出典】ウルトラQ伝説」「ウルトラマンの現場」「ウルトラQの誕生
    「素晴らしき特撮人生」「ウルトラマン創世記
    「ウルトラマン青春記」「ヒロコ ウルトラのミューズ誕生物語
    「ウルトラQアルバム」「総天然色ウルトラQ キャラクター大全

【商品紹介】ウルトラQ | TSUBURAYA IMAGINATION
      「総天然色ウルトラQ | TSUBURAYA IMAGINATION
      「総天然色ウルトラQ Blu-ray & DVD BOX


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