ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

「山﨑修二と山﨑に学んだ女流画家展」のコラボイベント「対話型鑑賞のつどい」のレポート①です!(2017、6、10開催)

2017-06-17 11:54:49 | 対話型鑑賞
 みるみるの会 6月の月例鑑賞会は、浜田市世界こども美術館の企画展「山﨑修二と山﨑に学んだ女流画家展」とのコラボイベント「対話型鑑賞のつどい」として、6月10日に開催しました。
今回の鑑賞会は、前半を金谷が、後半を春日さんが担当しました。
まずは、春日さんからのレポートです!


 山崎修二氏の回顧展で対話型鑑賞の実践は一般の参加者3名とみるみるメンバー、はまびの学芸員さんの6名で始まりました。
 
 今回のナビ担当は金谷さんと私(春日)です。会場到着が遅くなった私は作品選定に十分時間が取れなかったので金谷さんに先にやってもらうことにしました。金谷さんの実践については彼女のレポートを参照ください。
 
 彼女の選んだ作品が浜田の農村風景だったので2作目はヨーロッパの風景にしようと決めました。ヨーロッパの風景画はたくさんありましたが名所が描かれているものより、名もない風景の方が対話が深まると考えて2〜3作品に絞りました。しかし、参加者の皆さんがトークしてみたいと思う作品があれば、そちらで実践してもよいかと思い、金谷さんの実践終了後訊ねてみましたが、特にリクエストはなかったのでヨーロッパの風景画が多く展示されている部屋に移動しました。
 
 作品は画像でも分かるように川辺の町並みを描いたものです。何と言うこともない風景ですが、以前にみるみるメンバーで鑑賞した時にも対話がはずんだので選んでみました。他の風景画よりも完成度が高いようにも思ったからです。
 浜田と思われる日本の農村風景だった1作品目と比較する発言が最初から出され、相談してシークエンスを組んだわけでは無かったのですが、結果的には2作品を対比的に鑑賞者はみていました。
・日本とヨーロッパ
・浜田の平面的に広がる農家の家並みと川辺から丘陵までの狭い土地の傾斜地に複数階の建物が建ち並ぶヨーロッパの家並み。
・冬(日本)と夏(ヨーロッパ)夏の根拠は川辺の柳が青々と繁っているところや、山や丘の緑も盛りな様子から。
 また、煙突から煙が出ていないので、暖を取っていないのではないかと言う意見も出され、季節も特定されていきました。
 また、1作品目で夕方の時刻と言う発言もあったので、こちらから、時刻はいつ頃だと思うか投げかけました。雲が薄いピンクなところや空の青が薄いところから、やはり夕方ではないかと言う意見が出されました。また、一方で風景に人が描かれていないこと、夕方なら散歩でもしている人が居そうなものなのに人気がないので、朝まだ早い時刻、明け方なのではないかと言う意見も出されました。また、建物の壁面に白く光ってみえる部分があることから光のさす方向、つまり、太陽のある方向が発見されたり、折れ曲がっている壁の明度差が余り無いことから日差しはあまり強くない時刻なのではないかということから、朝方か夕方であるという解釈に賛同する意見も出ました。
 また、窓の形が並んでいるところにリズム感を感じたり、煙突の並びにも同様の感じを受ける発言がありました。そんな中で画面右端の方にある赤い煙突のような形状のものやその下方にある赤く塗られた面が何なのかという疑問の発言も出ました。その疑問に関する回答となる発言は出ませんでしたが、どうして山崎修二氏はこの場所を描こうと思ったのかと、ナビから投げかけてみました。周囲に有名処が描かれている作品が並んでいますが、何故、名もなき川畔の街並みを描いたのかを訊ねてみました。ヨーロッパに滞在していた宿からみえる風景だったのでは?と言う意見が出ました。一般の参加者の方に意見を求めたところ、柳の木が邪魔。もう少し枝に隙間があってそこにベンチでも有るとよいのになー。と言った感想も出て和やかな感じで30分弱が経過しました。参加者の皆さんがわりと満足そうな様子だったので切り上げようと思いました。
 
 1作品目と比較しながら、緑と赤の対比は山崎イズム、山崎先生の好むものだったのではないか?有名処の景色でなくても、ありふれた景色のなかにも美的なものはあり、それを画家は発見し描くことでみえるものにし、みる我々に伝えようとしていたのではないか?と今回の鑑賞会を締め括りました。
 1作品目の後、参加してくださっていた男性2名の方が、帰られずに2作品目にも参加してくださったことが何よりうれしいことでした。また、鑑賞アンケートも好評価で、また参加したいとの記述もあり、メンバーの振り返りの時間に喜びを分かち合いました。
 
 振り返りの時に房野さんから参加者が満足するような終わり方を狙ったのかと言う質問が出されました。特に意識した訳ではありませんが、この鑑賞法は島根のようなローカルな地では一般的ではないので、ギャラリートークのような、でも、気づくと話している、と言う状況や、少し、絵が分かった気がするという満足感をもって帰ってくださるとリピーターになってくれるのではないかという期待もあります。対話型鑑賞の枠組みに固執せず、でも、対話することで作品の味わい方を体得してくださるように仕掛けられたら、美術作品は敷居の高いものでなくなり、美術館に足を運ぶ方も増えていくのではないかと考え、実践を細々とではあっても続けたいと思うのです。




 山﨑修二と山﨑に学んだ女流画家展は、7月9日(日)まで開催中です。山﨑氏の作品はもちろん、すてきな作品をたっぷり味わうことができますよ。

 7月のみるみるの会は7月8日(土)14:00~浜田市世界こども美術館にて開催です。同展で開催終了日前日ですのでどうぞ、お越しください。
みるみるメンバーとともに、楽しく、豊かに作品を味わってみませんか?

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2017年度 第1回目の鑑賞会レ... | トップ | 「山﨑修二と山﨑に学んだ女... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

対話型鑑賞」カテゴリの最新記事