木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

《アイアン・スカイ》

2013-02-21 01:36:17 | 日記


『アイアン・スカイ』(2012年フィンランド/ドイツ/オーストラリア)

荒唐無稽のスペース・ナチ・オデッセイかと思いきや。
現在の国際関係を皮肉いっぱいに描くというワザありな映画。

2018年。
久しぶりに月に飛行士を送ったアメリカ。
月に降り立った彼らが見たものは…
ナチスの要塞だった。。。
月の裏側で地球征服を計画中のナチス。
捕らえた飛行士を案内役に、PCを調達しに地球へと向かうが…

ナチスの子供達の名前が
ジークフリートやブリュンヒルデだったり。
旗艦の名前が“神々の黄昏”号だったり。
ほどほどにしとけ、な帝国主義ぶりが可笑しい。

宇宙飛行士が、黒人だった為。
マッド・サイエンティストにアーリア人化されちゃうという…
実にリスクを伴うネタなれど。
彼が飛行士として選ばれた理由やら、
地球へ帰還してからの境遇やら、
その後の活躍やら。
何もかも申し分なく描かれ、
しかも笑えるというスゴさ。

ナチを迎え撃つアメリカの大統領がペイリン女史にクリソツだったり。
セリフに真実味が有り過ぎて、キワドイほど。
“一期目で戦争した大統領は再選されるのよ。
どこと戦争しようかと思ってたけど
(ナチなら)願ったりかなったりね。
アメリカがまともに倒したのはナチだけだもの”
ドひゃー。
こんなセリフ書けるなんて!
というか恐ろしくて書こうと思わんよ、普通。
ちなみに彼女のキャンペーン・フレーズは、
YES, SHE CAN.
この徹底ぶり。
痒いとこに手が届いてますな。

大統領のイメージ戦略を担当するヴィヴィアン。
このキャラの迫力が素晴らしい。
口汚くののしりまくりなセクシー美女。
お見事。

パイパー・ペラーボ似のユリア・ディーツェ(レナーテ役)。
パトリック・スウェイジが蘇ったよなゲッツ・オットー(アドラー准将)
ゼタ=ジョーンズとマギー・Q足したようなペータ・サージェント(ヴィヴィアン役)
第二のダニー・グローヴァーか?なクリストファー・カービイ(ジェームズ・ワシントン役)
ペイリン女史に程よく似せてるステファニー・ポール(アメリカ合衆国大統領)
そして、この人!マニア心をくすぐるウド・キア(総統)
出演者全員、ナイス。

国際会議での各国の発言。
これがまた、すこぶる良く出来てます。
更に“宇宙平和条約”なるものの実態が明らかになったり。
各国が醜態をさらす事態に陥ったりと…
建前と本音をかくも上手に、皮肉に、面白く暴く実力。

映像も申し分なく。
セットもCGもきちんと作ってあるし。
レトロなナチのマニュファクチュア船も楽しい。

まさかこの皮肉に気付かない人とか居ないよな?
通じない人も存在しそうなのが、恐ろしい。
下手に薦められない作品ではあるな。。。
観る人によっては、
30%しか楽しめない人や
50%しか楽しめない人が居るだしょう。
ただ、100%楽しめる人にとっては、
文句なくホントに100%キッチリと楽しめます。

制作費の10パーセント以上を一般の人から募ったという事で。
エンドクレジットは長~いよ。
ちゃんと全員の名前が載ってるらしい。。。

『アイアン・スカイ』(2012年フィンランド/ドイツ/オーストラリア)
監督:ティモ・ヴオレンソラ、脚本:マイケル・カレスニコ、ティモ・ヴオレンソラ、原案:ヨハンナ・シニサロ
撮影:ミカ・オラスマー、プロダクションデザイン:ウルリカ・フォン・フィーゲザク
出演:ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービイ、ペータ・サージェント
ステファニー・ポール、ウド・キア

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