ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#022

2019-02-21 12:00:05 | 刑事ドラマ'70年代









 
長さんの初主役回です。そして脇役一筋だった俳優・下川辰平さんにとっても記念すべき主演第1作目となりました。ご本人は勿論のこと、共演の俳優陣も下川さんを盛り立てるべく気合いが入ってるのが画面から伝わって来ます。

そもそも、過去に何度も一緒に仕事して親交のあった、山本迪夫監督が「是非、長さんを主役に!」とプロデューサーに提案されたのがきっかけなんだそうで、下川さんの人徳ぶりが伺えます。

前回(#021『バスに乗ってたグーな人』)と2本撮りだったもんで、仕上がりを観たショーケンさんが山本監督に「友達が主役だと気合い入れちゃって、俺のは手抜きじゃないの?」ってw、冗談半分に抗議されたそうです。

確かに、#021はライトなB級活劇なのに対して本作は、娘への愛と職務との狭間で苦しむ長さんの、哀愁が滲んだ良作になってます。以降、主役が回って来る度に長さんは試練に見舞われ、とことん凹まされる羽目になります。


☆第22話『刑事の娘』(1972.12.15.OA/脚本=長野 洋/監督=山本迪夫)

愛娘=良子(井岡文代)のボーイフレンド(傷害の前科あり)に殺人容疑がかかり、しかも良子はその現場を目撃しながら、彼を庇ってる。それを察した長さんは苦悩します。

刑事としては前科者の彼を疑うしかないし、場合によっては犯人隠匿罪で娘に手錠を掛けなきゃならない。そうなったら刑事を辞める羽目にもなるでしょう。

だけど、良子は彼が被害者を殴り倒した場面しか見ていない。その後で別の人間が被害者を絞め殺したという彼の主張を、良子は信じてるのでした。

なぜ、父親よりも前科者の言葉を信じるのか? なぜ、父親に反抗ばかりするのか? そう問いかける長さんに、良子はこう答えます。

「今のお父さんは、お父さんじゃないから」

知らず知らず、父親としてじゃなく刑事として娘に接してる自分に気づいた長さんは、良子の父親としてボーイフレンドの無実を信じ、真犯人から命を狙われる彼を救うのでした。

今でこそ古典的なストーリーかも知れないけど、当時ここまで刑事のプライベートを掘り下げたドラマは無かった筈です。まさに『太陽にほえろ!』ならではのエピソードで、番組における長さんのポジションを決定づけたエポック作とも言えましょう。

良子を演じた井岡文代さん(後に文世と改名)は、若いながらしっかりした芝居をする人で、ルックスも可愛いし、もっとメジャーになっても良かった女優さんだと思います。

この後も長さん編で良子役を演じ続け、10年近くも『太陽』に出演する事になるとは、ご本人も夢にも思ってなかった事でしょうw(柴 俊夫さん扮する気象予報士と結婚する事になります)

本エピソードには長さんの妻=康江(西 朱実)も初登場。息子の俊一(石垣恵三郎)も出番があったけど編集でカットされたみたいです。長さんファミリーはそれぞれ味があって、今後も我々を楽しませてくれる事になります。

PS. 今回、久々に本作を観直して気づいたのですが、クライマックスで左腕を撃たれた長さんが、ひるまずに犯人に突進して行く場面や、包帯姿でボス(石原裕次郎)に辞意を伝える場面が、10年後のカナダ・ロケ編……つまり長さん退場編とソックリなんですよね。

偶然の一致だろうとは思うけど、同じ山本迪夫監督の作品だし、もしかしたら意図的に初主演作が再現された可能性も、無きにしもあらず。
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『太陽にほえろ!』#021 | トップ | 『太陽にほえろ!』#025 »

コメントを投稿