「飛騨の円空」 東京国立博物館

東京国立博物館
「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」 
1/12-4/7



東京国立博物館の本館特別5室で開催中の「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」へ行ってきました。

江戸時代、修験者として諸国を渡り歩きながら、仏像を造り続けた円空(1632-95)。どこか微笑みを浮かべたような表情や親しみやすい造形からも人気、2008年の「対決 巨匠たちの日本美術」展でも大いに注目を集めました。


「両面宿儺坐像」江戸時代・17世紀 千光寺

以来5年。再び東博に円空仏が集結。その数100体、まさに円空の森。仏像はいずれも出生の地、岐阜は飛騨・千光寺を中心とする高山市所在のものです。

高さ2メートルから5センチまでの仏像はまさに姿形も多種多様。にっこり楽しい円空仏を堪能することが出来ました。


「八大龍王像」江戸時代・17世紀 千光寺

さて印象に深い仏像をいくつか。まずは水神である龍のモチーフ、例えば「跋難陀龍王像」や「善女龍王立像」などです。

これらはいずれも龍が雨を操るとされていたことから、水害や日照りの際に祈願されることが多かったとか。円空も積極的に制作しました。


「三十三観音立像」江戸時代・17世紀 千光寺

また病気治癒のために作られたという「三十三観音立像」も見事。何と会場にずらりと31体が一同に会しています。

ちなみにこれらは元々50体以上あったものの、治癒のために貸出したりしたことで、戻ってこなかったとのこと。円空仏がいかに庶民の生活と関わっていたのかを伺い知るエピソードでした。


「金剛力士(仁王)立像」江戸時代・17世紀 千光寺

そして円空仏と言えば、ともかく木そのものの持つ物質感もポイントですが、それを特に思わせるのが「金剛力士(仁王)立像」。何とおそらくは地面に生えていた木へそのままノミを入れて制作されたという巨木(高さ220センチ!)の仏像です。

木の生命と仏の魂の宿る仏像。一概にプリミティブという言葉で片付けられないただならぬ何かが感じられました。

とはいえ、円空仏にも比較的、精緻な造形をとる作品があるのも見逃せないところです。


「千手観音菩薩立像」江戸時代・17世紀 清峰寺

ちらし表紙を飾る「両面宿儺坐像」や「千手観音菩薩立像」などは、荒々しくも丹精に彫り込まれたノミの跡が、簡素ながらも着衣や顔を巧みに象っています。

また秘仏の「歓喜天立像」も興味深いもの。頭が象で身体が人、それが抱き合う様子が表現されています。ちなみにこのモチーフはインドの密教に由来するとか。また現地でも7年に1度しか展示されません。

それを東京で拝めるだけでも有難いもの。また他にも初めてお寺から出た仏像もあるそうです。

「円空 微笑みの謎/長谷川公茂/新人物往来社」

会場は本館の特別5室のみ。平成館ではありません。言うまでもなく手狭であるのは事実です。しかしながら円空仏を一定のスケールで見られる展示。会場の造作も台座、照明を含めて良く出来ています。

仏像の向こうにある木の温もり、さらに飛騨の森の気配を感じながら、じっくりと円空仏に向き合えました。

「美術手帖2013年2月号/円空/美術出版社」

館内は相当に賑わっていました。前回の出雲展しかり、最近の特別5室の特別展は後半にかけてかなり混雑します。早めの観覧がおすすめです。

4月7日まで開催されています。

「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」 東京国立博物館
会期:1月12日(土)~4月7日(日)
休館:月曜日。但し1/14(月・祝)、2/11(月・祝)は開館。1/15(火)、2/12(火)は休館。
料金:一般900(800)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円、中学生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。
時間:9:30~17:00。但し3・4月の金曜日は20時まで。4/6(土)、4/7(日)は18時まで。(入館は閉館の30分前まで) 
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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