「ミュージックステーション」の生放送にAdobe Frescoを活用。曲調に合わせイメージ映像をライブ生成で投影

1986年にスタートしたテレビ朝日系列の音楽番組「ミュージックステーション」は、2019年10月より、毎週金曜よる8時から9時に放送時間が変更されました。それに伴い、「生放送ならではのライブ感」があらためて番組のコンセプトとされロゴやセット、WEB等が一新、スプラッシュ映像をベースに躍動感あるビジュアルへとトータルデザ インされています。リニューアル後初回放送の「ミュージックステーション 3時間スペシャル」では、一青窈さんが書いた歌詞をもとに、いきものがかりの水野 良樹さんが放送時間内に曲作りをする挑戦がなされました。同番組のアートディレクターである横井 勝氏は、歌に合わせてステージ背後のLEDスクリーンに映し出されるイメージ映像もライブペイントで表現することを発案。そのためにiPad上で作動するスケッチ&ペイントアプリAdobe Frescoが活用され、曲の雰囲気にマッチした幻想的な映像が見事に描き出されました。


https://www.tv-asahi.co.jp/music/

2019年12月27日(金)は昼12時から11時間超え生放送! 『テレビ朝日開局60周年記念 ミュージックステーション ウルトラ SUPERLIVE 2019』

イメージをすぐに具現化できるレスポンスの速さ

これまで番組のロゴや、曲に合わせてスクリーンに映し出されるCG映像を、PhotoshopやIllustrator、After EffectsをはじめとするAdobeツールを駆使してデザインしてきた横井氏が、イメージ映像を曲の進行と並行して描くために注目したのが、Adobe Frescoのタイムラグのない操作感でした。

「リリースされたばかりのAdobe Frescoを試用してみてまず驚いたのは、描画時の反応の早さです。約5分間の演奏中に映像をリアルタイムで作るには、頭の中に描いたイメージを瞬時に表現できなければなりません。期待どおり、本番の生放送でもレスポンスよく描け、“曲のイメージ映像をライブで製作する”という前例のないチャレンジを成功させることができました」

Mステの実際の映像送出卓。通常LED映像送出システムにiPad2台を組み込んだ構成。 毎週の放送に合わせ、テレビ朝日CGグループでは多数の楽曲用のCG映像制作を行っている。

紙に描かれたかのような色のにじみまで表現

一青窈さんがこの日の番組のために書いた「きりん」の歌詞の冒頭は、「御覧!あれがシリウスさ 一等いちばん星」というフレーズです。横井さんは映像を夜の雰囲気にするため、まずスクリーンの上方に一番星を描写。スクリーン下方には、たくさんの星々とも、きりんの体の柄ともとれる無数の青い点を次々に描いていきました。

「一番星には油彩画ブラシ、その他の部分には水彩画ブラシを使いました。濃淡の異なる青い点が次第にぼんやりと膨れ、重なり合った部分が本物の水彩画のように美しくにじんだのは、人工知能Adobe Senseiがあたかも紙に描いたかのように調整してくれたおかげです。レイヤーを分けることができるので、水彩画風の部分だけに絵の具が溶けるような表現をすることもできました。意図したとおり、アーティストさんの即興パフォーマンスが見事で視聴者からは『ライブ感が伝わってよかった』という多くの声が寄せられました」

製作環境を社外に持ち出してのモバイルワークをサポート

ロゴやCG製作をオフィスのPCで行ってきた横井氏は、モバイルデバイスでのクリエイティブな作業を可能にする点にも、Adobe Frescoの大きな可能性を感じていると語ります。

「Adobe Frescoなら、外出先や自宅にいるときなどにふと思いついたアイデアを簡単に形にすることができます。iPad上で即製して、シームレスに仕上げはデスクトップでという作り方をすれば時間を有効に使え、業務効率化やクリエイティブの質の向上にも貢献してくれると思います」

株式会社テレビ朝日 技術局 コーポレートデザインセンター CGデザイン室 アートディレクター/ CGディレクター 横井 勝氏