かつてない空海展が始まった!奈良国立博物館で「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」6月9日まで

展示風景 重要文化財「不動明王坐像」平安時代・9世紀 和歌山・正智院

開幕前日の内覧会を取材
かつてない空海展でした!奈良国立博物館で「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」が4月13日から始まりました。立体的に再現されたマンダラ世界、国宝28件の豪華さ、知られざる海のシルクロード経由の密教、人となりに迫る空海直筆の書――どの点からも圧巻の内容です。

※空海展のチケットは美術展ナビチケットアプリ(スマホ)で購入できます

 

立体的に再現されたマンダラ世界

空海は、「密教は奥深く文筆で表し尽くすことが難しい。そこで図や絵を使って悟らない者に開き示すのだ」と述べました。胎蔵界・金剛界という2つのマンダラ世界を、国宝や重要文化財などで立体的に展示します。

国宝「五智如来坐像」平安時代・9世紀 京都・安祥寺
(右)国宝「十二天像」平安時代・9世紀 奈良・西大寺 前期展示
重要文化財「両界曼荼羅(血曼荼羅)」平安時代・12世紀 和歌山・金剛峯寺 前期展示

国宝28件の豪華さ

空海が自らプロデュースした現存最古の両界曼荼羅である国宝「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」が修理後、初の一般公開です。4㍍の大きさに圧倒されます。紫色の綾地に金泥と銀泥で描かれています。金の部分は想像以上にはっきりと見ることができました。写真で黒色と思っていた地は、紫色でした。

曼荼羅はカラフルな印象を持っていましたが、空海の頃(奈良後半~平安前期)の仏画は、紫地に金銀で図像を描くことがあったそうです。そういえば、金字や銀字で書かれたお経も紫色の紙がよく使われていることを思い出しました。

国宝「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」のうち胎蔵界 平安時代・9世紀 京都・神護寺 胎蔵界:前期展示 金剛界:後期展示
(手前)国宝「金銅密教法具」中国・唐(9世紀) (奥) 国宝「真言七祖像 不空」中国・唐 永貞元年(805) 不空:前期展示 恵果:後期展示 いずれも京都・教王護国寺(東寺)
国宝「錫杖頭」中国・唐(9世紀)香川・善通寺
国宝「宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱」平安時代 延喜19年(919)頃 京都・仁和寺 前期展示
国宝「五大力菩薩像」平安時代・10~11世紀 和歌山・有志八幡講
国宝「諸尊仏龕」中国・唐(7~8世紀) 和歌山・金剛峯寺

高野山の3大秘宝のうちの国宝「諸尊仏龕」(通期展示)と国宝「聾瞽指帰」(前期展示)の2つが見ることができます。

知られざる海のシルクロード経由の密教

学術協力の高野山大学の国際的な研究によって、2部の曼荼羅のうちの金剛界のベースになる金剛頂経は海のシルクロード経由で、中国の唐に入り、陸のシルクロード経由の胎蔵界のベースとなる大日経と融合したことが浮かびあがりました。海のシルクロードは、インドネシアのジャワ島を経由。ジャワ島で出土した彫像群は、金剛界の立体曼荼羅であることがわかりました。

金剛界曼荼羅彫像群 インドネシア・東部ジャワ期(10世紀) インドネシア国立中央博物館

例えば、この白い貝、シャンクガイは、空海が唐から持ち帰ったとされるもの。シャンクガイはインド西岸やスリランカに生息する巻き貝です。金剛智、不空、恵果、空海という伝法のしるしとして大切にされてきましたが、「なぜ貝なのか?」という疑問も、海のシルクロード経由の密教という学術的な面でも説明できるようになったそうです。

「白螺貝」シャンクガイ 中国・唐(8世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

空海の書が多数

本展で出展される空海の書だけでも、大変なラインナップです。

国宝「聾瞽指帰 下巻」平安時代・8~9世紀 和歌山・金剛峯寺 前期展示
国宝「三十帖冊子」平安時代・9世紀 京都・仁和寺
国宝「灌頂歴名」平安時代 弘仁3~4年(812~813)京都・神護寺 前期展示
国宝「尺牘(久隔帖)」平安時代 弘仁4年(813)奈良国立博物館 後期展示
国宝「風信帖」平安時代・9世紀 京都・教王護国寺(東寺) 前期展示
国宝「金剛般若経開題残巻」平安時代・9世紀 奈良国立博物館 前期展示
国宝「金剛般若経開題残巻」平安時代・9世紀 京都国立博物館 後期展示
国宝「大日経開題」平安時代・9世紀 京都・醍醐寺 前期展示
重要文化財「仁王経良賁疏」平安時代・9世紀 京都・勧修寺

国宝「聾瞽指帰 下巻」(部分)平安時代・8~9世紀 和歌山・金剛峯寺 前期展示

フォトスポットは空海が長安で見たかもしれない大理石の仏像

本展のフォトスポット(SNS投稿も可)は、中国の一級文物である「文殊菩薩坐像」です。この大理石製の仏像は、長安の安国寺址で出土したもので、入唐した若き空海が安国寺境内でこの像を見た可能性もあるとのこと。

一級文物「文殊菩薩坐像」中国・唐(8世紀)中国 西安碑林博物館

マンダラ世界をアクスタで再現!

マンダラ世界を立体的に展開した冒頭の展示は、かなりのインパクトでした。特設ショップでは、このマンダラ世界を再現できてしまうアクスタが並んでいました。3種類、3630円、2750円×2で、全部揃えると9130円と結構な価格になるので躊躇しましたが、「お家でマンダラ世界!」と思い切って購入しました。後日、組み立てて紹介しますので、お楽しみに。

(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班 岡本公樹)

特別展「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」
会場:奈良国立博物館 東・西新館 (奈良市登大路町50番地)
会期:2024年4月13日(土)~6月9日(日)
前期:4月13日~5月12日 後期:5月14日~6月9日
開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、5月7日(火)※ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館
主催:奈良国立博物館、NHK奈良放送局、NHKエンタープライズ近畿、読売新聞社
学術協力:高野山大学
協賛:NISSHA、きんでん、築野グループ、パナソニック ホールディングス、非破壊検査
協力:インドネシア国立中央博物館、陝西省文物局、陝西省文物交流中心、西安碑林博物館、種智院大学、日本香堂、仏教美術協会
観覧料:当日一般2000円/高大生1500円 中学生以下無料
チケット購入は美術展ナビチケットアプリなど
展覧会公式サイト:https://kukai1250.jp/
展覧会公式X(旧ツイッター)@kukaiten2024
問い合わせ先
050-5542-8600(ハローダイヤル)