【開幕】「倉俣史朗のデザインー記憶のなかの小宇宙」世田谷美術館で2024年1月28日まで

世田谷美術館で1118日に開幕した「倉俣史朗のデザインー記憶のなかの小宇宙」の内覧会にうかがいました。

 倉俣史朗(1934-1991)は、1960年代以降のデザイン界において世界的に高い評価を受けていたキャリア絶頂期の56歳に、心不全のために亡くなった伝説のデザイナーです。代表作を中心に紹介してみましょう。

まずは代表作の《ミス・ブランチ》(1988年)から。造花のバラをアクリルに閉じ込めた椅子です。それまでのシンプルな作品と大きく異なっていたため、意外にも発表当時はあまり理解されなかったそうです。タイトルは、劇作家、テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」のヒロインから取られているそうです。

透明なアクリルは初期から素材として使われていて、中の洋服が見える《プラスチックの家具 洋服ダンス》(1968)などが有名です。

《硝子の椅子》(1976年)は、ガラスのための新しい接着剤を使って、板ガラス同士を付けて作った椅子です。はかないガラスに身をゆだねることで、引力によって落とされるのではないかという緊張感と、透明なガラスの上に乗ることで、あたかも引力から解き放たれたような浮遊感という相反する感覚を呼び起こします。

奥にある《光の椅子》と《光のテーブル》(1969年)は、乳白色のアクリル樹脂を成形し、その中に光源を仕込むことで、椅子やテーブル全体が光って見えます。手前の「オバQ」の名がついたランプもユニークです。

数多くの引き出しを持つ家具は、独特のフォルムで、不思議な感覚にとらわれます。

7本の針を持つ時計も印象的な作品です。

砧公園を借景にした展示も雰囲気があります。

 一番新しい作品でも、作られてから30年以上が経過していますが、今見ても古びた印象は全く受けません。展示の最後には、断片的に書き留められたままのスケッチや夢日記が紹介され、その後も活躍されていたら、どんな作品を残したのだろうかという思いに駆られました。(美術展ナビ編集班・若水浩)

倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)
会期:2023年11月18日(土)〜2024年1月28日(日)
開館時間:10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)
休館日:毎週月曜日および年末年始(2023年12月29日(金)~2024年1月3日(水))※ただし2024年1月8日(月・祝)は開館。1月9日(火)は休館
観覧料:一般1,200円、65歳以上1,000円、大高生800円、中小生500円
美術館公式サイト:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/

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