喜多川歌麿は染谷将太さん、田沼意次は渡辺謙さん 再来年の大河ドラマ「べらぼう」 蔦屋重三郎に大きな影響を与えるキャスト4人が発表

「べらぼう」のキャスト。左から片岡愛之助さん、染谷将太さん、主演の横浜流星さん、渡辺謙さん、宮沢氷魚さん

2025年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で、横浜流星さん演じる江戸のメディア王、蔦屋重三郎(1750‐1797)に大きな影響を与える4人のキャストが10月5日、発表されました。東京・渋谷のNHKで記者会見が行われ、横浜流星さんを含む5人が抱負を述べました。

注目の天才絵師、喜多川歌麿は染谷将太さん、老中の田沼意次は渡辺謙さん、意次の嫡男・田沼意知は宮沢氷魚さん、蔦屋重三郎の師匠で、のちに最大のライバルとなる鱗形屋孫兵衛は片岡愛之助さんがそれぞれ演じます。

「歌麿は美を探求し、美を理解し、美を知りたかった人」染谷さん

記者会見で染谷さんは「歌麿は史料がほとんど残っておらず、どこでいつ生まれたかもはっきりしない、あるいは諸説あるような存在です。だからこそ想像力をかきたてられる役ですし、自由に演じていいのかな、と受け止めています。ただし絵はきちんと残っていて、描いた絵にはその人が出ると思うので、これから歌麿さんの絵を見つめがら、クランクインを待ちたいと思います」と抱負を述べました。

記者の質問に答える染谷さん(東京・渋谷のNHKで)

「美術展ナビ」が「歌麿は世界的にその名が知られたアーティスト。演じることにプレッシャーはありませんか」と質問すると、染谷さんは「プレッシャーはあります。この場(記者会見)にいるだけでも緊張します」と笑顔で応じてくれました。「歌麿の作品で好きなものは?」と伺うと、「個別の作品というより、歌麿の絵を全体的に見て感じたのは、美を探求したい、美を理解したい、美を知りたい、という気持ちの強い人、という印象です。そのことが自分が歌麿さんを演じる上でも核になると思います」と話しました。

言葉を選びながら、歌麿に対するイメージを語ってくれました。

「美人画」で旋風を巻き起こした天才絵師

喜多川歌麿画 「婦女人相十品」(ふじょにんそうじっぽん) ポッピンを吹く娘

喜多川歌麿は美人画で江戸に旋風を巻き起こした天才絵師です。幼い頃、絵師・鳥山石燕のもとで絵を学び、その後、蔦重と出会います。蔦重が洒落本、黄表紙、狂歌本と次々と新たな出版物を手掛けていく中で、挿絵の仕事などを任され、自らの画力を磨いていきます。やがて寛政の改革で時代が変わると、蔦重と浮世絵の美人画を仕掛け、その才能を一気に開花させます。美人画は江戸で大評判となり、人気絵師の地位を確立していきます。

演じる染谷さんは1992 年生まれ、東京都出身。大河ドラマは5回目の出演で、『麒麟がくる 』(2020年)の織田信長役が記憶に新しいですね。

「てやんでえ、べらぼうめ、で走り抜けたい」 渡辺謙さん

渡辺謙さん

身分の低い侍から一代で老中まで上り詰めた田沼意次は渡辺謙さん。「以前受けた教育では、田沼というとワイロや腐敗、というイメージでしたが、経済重視の政策を推し進めた改革者という見方を教えてもらいました。蔦重とは身分違いなのですが、どのような形で接点が出てくるのか、森下先生の脚本を楽しみにしています。作品のタイトルのように、てやんでえ、べらぼうめ、で一年間を走り抜けたいです」と大ベテランらしく余裕の語りでした。大河ドラマでは『独眼竜政宗』(1987年)が何と言っても強烈な印象です。今回が6回目の出演です。

「プリンスのイメージで」 宮沢氷魚さん

宮沢氷魚さん

宮沢さんが演じる田沼意知は田沼意次の嫡男。その才能を高く評価されたものの、早くにこの世を去ることになる悲劇のプリンスです。大河ドラマは初出演の宮沢さんは「大河に出演する人を近くでみて、羨ましく思っていたので、嬉しいです。意知はプリンスのような存在であってほしい、と言われています。チャーミングに演じたいと思います」と語りました。

「蔦重に追い越されるのが楽しみ」 片岡愛之助さん

片岡愛之助さん

片岡愛之助さんが演じるのは鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ)という名。愛之助さんは開口一番、「舌を噛みそうな名前ですね」と笑わせました。江戸を代表する本屋の主で、蔦重に初めて本格的な本づくりの仕事を任せるなど、商売の基礎を指南しました。やがて蔦重が本格的に本屋業に乗り出すと一転、ライバル関係になり、激しい争いを繰り広げていきます。愛之助さんは「蔦重のお師匠さんのような、兄のような存在だったのが、ライバルに。蔦重に追い越されるのが楽しみです」と話していました。大河ドラマは『鎌倉殿の13人』(2022年)の北条宗時など今回で4回目。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)

<2025 年 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」>概要

【放送予定】2025 年 1 月~
【作】森下佳子【主演】横浜流星(蔦屋重三郎役)

左は主演の横浜流星さん。右は作者の森下佳子さん(4月27日の記者会見で)

【物語】蔦屋重三郎(1750‐1797)
18 世紀半ば、人口は100万人を超え、天下泰平の中、世界有数の大都市へと発展した大都市・江戸。蔦重こと蔦屋重三郎は、江戸郊外の吉原の貧しい庶民の子に生まれ、幼くして両親と生き別れ、引手茶屋の養子となる。血のつながりをこえた人のつながりの中で育まれた蔦重は、貸本屋から身を興して、その後、書籍の編集・出版業をはじめる。
折しも、時の権力者・田沼意次が創り出した自由な空気の中、江戸文化が花開き、平賀源内など多彩な文人が輩出。蔦重は、朋誠堂喜三二などの文化人たちと交流を重ね、「黄表紙本」という挿絵をふんだんにつかった書籍でヒット作を次々と連発。 33歳で「江戸のシリコンバレー」こと、日本橋通油町に店を構えることになり、“江戸の出版王”へと成り上がっていく。
蔦重が見出した才能は、喜多川歌麿、山東京伝、葛飾北斎、曲亭馬琴、十返舎一九といった若き個性豊かな才能たち。その多くは、のちの巨匠となり日本文化の礎となっていく。
しかし時世は移り変わり、田沼意次は失脚。代わりに台頭した松平定信による寛政の改革では、蔦重の自由さと政治風刺は問題になり、財産の半分を没収される処罰を受ける。周囲では江戸追放や死に追いやられるものもあらわれる…蔦重は、その後も幕府からの執拗な弾圧を受け続けるが、反権力を貫き通し、筆の力で戦い続ける。そんな中、蔦重の体を病魔が襲う。
命の限りが迫る中、蔦重は決して奪われない壮大なエンターテインメント「写楽」を仕掛けるのだった…
【制作スケジュール】
2024年夏 クランクイン予定
【スタッフ】
制作統括:藤並英樹 プロデューサー:石村将太 松田恭典 演出:大原拓 深川貴志
◇「べらぼう」制作発表の記者会見の記事↓です。


◇喜多川歌麿、どんな人?


◇蔦屋重三郎、どんな人?