【プレビュー】「買上展 -藝大コレクション展2023-」東京藝術大学大学美術館で3月31日から 巨匠らが若き日のすべてを注いだ卒業制作

横山大観 《村童観猿翁》 明治26 (1893)年 東京藝術大学蔵

展覧会名にある「買上かいあげ」とは、東京藝術大学が卒業・修了制作の中から各科ごとに特に優秀な作品を選定し、大学が買い上げてきた制度のことです。東京藝術大学大学美術館(東京・上野公園)で3月31日から5月7日まで開催される「買上展 -藝大コレクション展2023-」では、明治から現在までの1万件を超える学生制作品の中から、厳選された約100件を一堂に紹介します。

若き芸術家たちが、持てる力のすべてを注いで取り組んだ卒業・修了制作。2023年は買上制度が始まって70年を迎える節目の年です。時間をかけて収蔵されてきた作品たちは、それぞれの時代を振り返ることが出来る最良のコレクションにもなっています。

本展では、選りすぐりの「買上」作品を通して、大学の前身である東京美術学校時代から今日にいたる日本の美術と美術教育の歩みを見ることができます。

買上展-藝大コレクション展2023-
会場:東京藝術大学大学美術館(東京・上野公園)
会期:2023年3月31日(金)〜5月7日(日)
休館日:月曜日 ただし、5月1日(月)は開館
時間:10:00〜17:00(最終入館時間 16:30)
観覧料:一般 1200円、大学生 500円 高校生以下、18歳未満無料
美術展ナビチケットアプリでもチケット購入可
問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)
詳しくは(https://museum.geidai.ac.jp)へ。

第1部「巨匠たちの学生制作」

横山大観や高村光太郎ら近代日本美術を牽引した作家たちも、東京美術学校で卒業制作に取り組みました。たとえば大観の《村童観猿翁》は、代表作のひとつですが、実は東京美術学校の卒業制作でした。第1部では、明治から昭和前期までの東京美術学校卒業制作を中心に、近代日本美術の巨匠たちの創作活動の全貌を紹介します。

【第1部の主な出品作品】
横山大観《村童観猿翁》、菱田春草《寡婦と孤児》、和田英作《渡頭の夕暮》、小磯良平《彼の休息》、東山魁夷《スケート》、高村光太郎《獅子吼》、松田権六《草花鳥獣文小手箱》、富本憲吉《音楽家住宅設計図案》、吉田五十八《レクチュアホール》、青木繁、萬鉄五郎、藤田嗣治など15名の《自画像》を含め約50件。

和田英作 《渡頭の夕暮》 明治30 年(1897) 東京藝術大学蔵
萬鉄五郎 《自画像》 明治45年(1912) 東京藝術大学蔵

第2部「各科が選ぶ買上作品」

各科ごとにエリアを設け、選定された作品を数点ずつ紹介します。先端芸術表現、文化財保存学、グローバルアートプラクティス、映像研究など、研究領域の広がりに伴い、表現方法も多様化していることが分かるでしょう。

【第2部の主な出品作家】
河嶋淳司、櫃田伸也、丸山智巳、橋本和幸、鎌田友介、越田乃梨子、シクステ・パルク・カキンダ、荒神明香、岡ともみ、坂田ゆかり

鎌田友介《Other perspectives -The entrance-》 2011年 東京藝術大学蔵
林功《羅漢図模写》 1971年 東京藝術大学蔵
山口諒《白昼夢》 2020年 東京藝術大学蔵
越田乃梨子《壁・部屋・箱 ―破れのなかのできごと》 2008年 東京藝術大学蔵
日髙頼子 《女》 1963年 東京藝術大学蔵
梅原幸雄《遠い記憶》 1978年 東京藝術大学蔵
小野田健太(作曲)《Singable Blue for Orchestra》 2019年 東京藝術大学蔵
岩瀬夏緒里《婆ちゃの金魚》 2011-2012年 東京藝術大学蔵
櫃田伸也《ひとたち》 1964年 東京藝術大学蔵
荒井由美《ひろがる》 2016年 東京藝術大学蔵
長田美波《サーフィン》 2019年 東京藝術大学蔵
髙須咲恵《girl’s disguise》 2010年 東京藝術大学蔵

藝大生がつくる「買上」ショートムービー

また、藝大生それぞれが「買上」について自由な発想で制作する15秒ショートムービー(CM)が募集されており、3月下旬に大学美術館公式TwitterおよびYoutubeで公開予定です。再生回数が最も多い作品は大学美術館が広報動画として「買上」します。こちらの企画も展覧会にあわせて楽しんでみてはいかがでしょうか。
(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班)