スタジオ内には一人ひとりに占用の製図机があり、設計演習に必要な欧米並みの環境が十分に確保されています。また各製図机にはコンピュータが完備され、常にインターネットに接続可能です。学生たちが毎朝登校すると、まず自分の机の下のロッカーに荷物を置き、午前中は講義を受け、午後からはスタジオに戻って夜遅くまで設計演習に取り組みます。教員はスタジオ内の学生の机を一つずつ回り、教師と学生が一対一の対話型の設計演習を行います。
しかしいままでの日本の大半の建築学科では、スタジオの面積が狭く、製図机は学生数に対して大幅に不足しております。その結果、製図机は共用です。すなわち学生たちは設計演習の時間が終わると次の時間までに、描いている途中の図面や作りかけの模型など、すべての持ち物を片付け、次の学生のために机を明け渡さなければなりません。しかし右のアメリカの諸大学の製図室の写真からわかるとおり、これは不可能なことです。結局、自宅や下宿で設計をせざるをえないことになり、製図室に人影がなくなるか、一部の学生に占拠される状態になります。
このような環境では、UIA/UNESCO国際建築家教育基準が定めた、教師と学生が一対一の対話型教育を行う設計演習を実現するのは困難なことです。自宅でつくった模型をもって満員電車に乗り、壊れてしまったという、泣くに泣けない話もあります。
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