事故や災害を防止する第一歩は「基本」を守ることから始まります。まずは本記事の基本3項目を意識して守り、現場の安全を確保していきましょう。

安全作業の基本「指差し呼称」とは

職場での安全確認や行動エラーを防止するための有効な手段として指差し呼称があります。指差し呼称を行うことは、誤動作、誤判断などを防止する有効な手段ですが、作業がマンネリ化すると指差し呼称の本質や基本を忘れてしまうことがあります。

指差し呼称の正しい方法は、注意の対象を「目で見て」「手と指を動かし」「指で指し」「大きな声で呼称」することです。これにより、指差し動作に伴う筋肉運動が脳を刺激して必要な対象に注意が向き、声に出して呼称することで大脳の知覚領域に刺激が入り確実な判断へと導かれます。

そして指差し呼称を行うことで生まれる時間的な余裕により、正確かつ確実な判断をしやすい状況をつくります。これに対して、義務的で小さな声で指をわずかに動かす程度の「指差し呼称もどき」では、安全効果は期待できないと言えます。なお、呼称する言葉は「スイッチよし!」ではなく「スイッチ・オフ・よし!」など、より具体的な作業内容を呼称したほうが安全効果が高いとされています。

安全に対する「思い込み」の危険

作業員個人でも、作業チームでも「いつもの作業だから何も問題ない、安全だ」という思い込みは非常に危険です。思い込みは安全に対する疑いや、反省をなくし事故や災害を引き寄せてしまいます。

事例として陸上自衛隊演習場の訓練で発生した事故を紹介します。訓練は『トラックで物資を輸送中に敵に襲われる』という設定で実施され、約30人の隊員が敵味方に分かれて、小銃で互いに「空砲」を撃ち合う形式で行われていました。

訓練場所は実弾の使用が禁止されている区域でしたが、係員が誤って空砲ではなく実弾を各隊員に配付してしまいました。その結果、訓練で各隊員が合計実弾79発を敵に目掛けて発砲してしまったのです。この事故では、運良く実弾は命中せず軽傷者2名だけで済みましたが、もし1発でも隊員に命中していれば大事故になっていたはずです。

係員が誤って実弾を配付したミスも、当然起きてはならないことです。しかし、訓練隊員たちが空砲か実弾かを確認をしなかったことも問題があります。確認を怠った大きな原因として「訓練場では、実弾が使えない。配られているのは空砲に決まっている」と全員が思い込んでいたことにあります。思い込みは個人だけでなく集団においても発生し、事故を連鎖させていきます。常に疑いや反省を怠らずに、作業に取り掛かりましょう。

安全衛生は正しい服装から

決められた服装を正しく着用することは、職場における安全衛生の基本です。現場で着用している作業服は、現場の災害要因などから身を守る役割と、作業の遂行に適しているなどの両側面から選定されています。また、規定された作業服を正しく着用することは、作業現場の連帯感を生み、安全衛生作業のシンボルとしても機能します。

服装について次の6つの項目をチェックしましょう。

①作業服に破れがあったり、不必要なものが入っていないか。

②油や薬品などで汚れていないか。

③ポケットに尖ったものなど、危険なものが入っていないか。

④帽子は定められたものを正しく被っているか。

⑤服や帽子の名前、表示等は明確になっているか。

⑥履物は足によくフィットしているか、破れやひどい汚れはないか、すべりやすくないか。

作業服は現場で基準が定めらているはずです。自分が服装基準を理解することはもちろんですが、一緒に働く仲間に問題があれば、服装を改善して基準を周知して行く必要があります。