オーバーツーリズムの事例

タイのピピレイ島の事例

タイのピピレイ島(Phi Phi Islands)は、1999年の映画「ザ・ビーチ」のロケ地として世界中に知られるようになり、特に2000年代初めから観光客が無秩序に押し寄せた。

1999年:映画「ザ・ビーチ」の公開でピピレイ島は世界的に知られるようになり、観光客が増え始めました。

2000年代初頭~中頃:観光客の突如-映画の影響とともに、中国や韓国からの観光客が増加し始めました。また、安価な航空運賃や、タイ政府の観光推進政策も観光客の増加につながりました。

2000年代後半~2010年代前半:環境への影響– 観光客が1日に5,000人とボート200隻が訪れ、ゴミ問題、排水問題、自然環境の破壊、サンゴ礁の損傷などが深刻な環境破壊が発生していた。

ピピレイ島のビーチには座る場所もないほど観光客が押し寄せ、沖合には上陸待ちの観光客を乗せた多くの船が順番待ちをしている。

2018年:島の閉鎖– 環境破壊が深刻化したことから、タイ政府は観光客から島を一時的に閉鎖し、自然の回復を試みました。

ピピレイ島は、年間約4億バーツ(約14億円)の観光収入をもたらすため、閉鎖に対しては地元の反対も強かった。
しかし政府は、生態系回復が優先と判断した。
引用:https://sustainablejapan.jp/2018/10/07/phi-phi-island-close/34839

オーバーツーリズムによる具体的な影響

ピピレイ島のケースは、オーバーツーリズムによる環境破壊とその対策の重要性を示す一例です。
  1. 生態系の破壊:増加した観光客自然環境への侵略があります。これには、サンゴ礁の破壊、野生生物による生息地の破壊、海洋汚染などが含まれます。

  2. 汚染:増加した人々は、ゴミや排水などの汚染源を増加させました。 特にプラスチック製品の使用とその不適切な処理が問題となりました。

  3. インフラストラクチャーの圧迫:観光客の増加に伴い、電力、水、食料品などの供給が困難になります。これは、自然環境だけでなく、地元の住民にも影響を及ぼします。

これらの問題に対処するために、タイ政府は以下のような対策を講じました。

  1. 島の一時閉鎖:タイ政府は、2018年から2021年までの間、一時的にピピレイ島を閉鎖しました。これは、自然環境を回復させ、観光客による影響を最小限に抑えるためのものでした。

  2. 環境保護策の強化:島の再開後、政府は観光客の人数を制限し、訪問者に対する環境教育を強化しました。また、環境保全活動を推進し、地元のコミュニティと協力して、持続可能な観光の実現を目指しました。

  3. 観光料の導入:観光客への負担を通じて環境保全費を調達するため、入島料やエコタックスなどを導入しました。

これらの対策により、ピピレイ島の自然環境は徐々に回復を見せています。 特に、閉鎖期間中は、被害を受けたサンゴ礁が再生し、多くの野生生物が戻ってきたと報告されています。

ただし、観光客数の制限や観光料の導入により、経済的な影響を受ける地元コミュニティもあります。このため、環境保護と地元経済のバランスをどのように取るかが、今後の課題となっています。

フィリピンのボラカイ島の事例

フィリピンのボラカイ島は、美しいビーチと透明な海で知られる観光地で、世界中から観光客が訪れていました。しかし、オーバーツーリズムと乱開発により環境が悪化し、2018年にはフィリピン政府が緊急措置を講じるまでに至りました。

1980年代から1990年代 :ボラカイ島は、この期間に観光客が急増しました。しかし、その初期には十分な法規制やインフラが整備されておらず、観光客の増加に対応できる状態ではありませんでした。

1990年代-2000年代初頭 : ボラカイは「世界の最も美しいビーチの一つ」として国際的に評価され、観光客数が急増します。ボラカイ島の人気がさらに高まり、この期間に特に中国や韓国からの観光客が増加しました。これに伴い、外国企業や投資家による開発が進み、大型のホテルやリゾートが建設されました。しかし、この開発はしばしば規制を無視したもので、さらなる環境問題を引き起こしました。

2000年代後半-2010年代初頭 : 観光客の増加と不適切な開発により、ボラカイ島の環境問題は深刻化しました。汚染された排水が直接海に流れ込むなど、公衆衛生と環境の観点から問題が多発しました。

2018年 : フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、島の環境問題を「セプティック・タンク(汚物溜池)」と表現し、6ヶ月の閉鎖を命じました。この期間中、政府は島全体のクリーンアップと規制強化に取り組みました。排水処理システムの改善、違法建設の取り壊し、ビーチからのビジネスの撤退、観光客数の制限などが含まれました。

ボラカイ島で観光業に従事する少なくても3万6千人以上が失職し、その家族などを含めると容易な数字ではなく、経済的な損失は560億ペソ(約1150億円)に上ると試算されています。
引用:https://www.digima-news.com/20180406_33616

2018年10月 : ボラカイ島は再開されましたが、新しい規制が実施されました。これには、観光客の数を制限するための事前登録、禁煙・禁酒区域の設定、プラスチック製品の使用の禁止、ビーチでのパーティーの禁止、建築規制の強化などが含まれます。

ボラカイ島の事例は、オーバーツーリズムと不適切な開発が地域の環境と生態系にどのように影響を及ぼすかを示しています。また、早期の規制と適切な開発管理の重要性を示しています。これらの教訓は、他の観光地がこれらの問題を避けるために参考にすることができます。

オーバーツーリズムは観光地の自然環境や社会経済に深刻な影響を及ぼします。

それを防ぐためには、早期の規制と開発管理が不可欠で、地元コミュニティ、観光業者、政府、観光客など、全ての利害関係者が参加する持続可能な観光の戦略を策定し、実施することが重要です。
これらの措置により、観光が自然環境と地元コミュニティに持続的な利益をもたらすことが可能になります。

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