生徒指導の先生というと
って印象でしょうか。
生徒が悪いことをした,その子が怒って欲しい場合は,
これも◎かもしれません
でも,現場の,現実の生徒指導主事の教師は
対話 します。
生徒指導主事は,学校心理学のプロです。
生徒の気持ちを聴くことができ
自分の気持ちを伝えることができる人のことです。
◎ 大切なこと ◎
① 事実を(その生徒にとっての事実)を
正確に把握する。
ア 日頃の気持ち(落ち着かない,イライラする等)
イ 日頃の体調(よく寝られない,食事のとり方,
就寝時刻,起床時刻等)
ウ ことの「きっかけ」
その生徒は,それをなぜ「きっかけ」にしたか
どう,その「きっかけ」をとらえたのか
エ したことは何か・どんな気持ちだったか
その生徒は自分としては何をどうしたのか
その生徒はどんな気持ちだったのか
オ した後は
その生徒はした後,どんな気持ちだったのか
カ 今はどうか
その生徒は,今,どんな気持ちなのか
相手がいる場合,相手に対してどんな気持ち
なのか,どう変わってほしいか
キ これからは
その生徒は,これからどうしたいか
相手がいる場合,その相手にどう接しようと
思っているのか
ク 今 言いたいことは
先生(生徒指導主事)に今,言いたいことは
あるか
誰かに言いたいことはあるか
② ①をその生徒に確認をとり
違っていたら,修正する
③ ②をもとに,管理職・当該学年主任,
学級担任に報告する
④ ③のメンバーで話し合う
特に,生徒にとっての事実と,
学年主任・学級担任のとらえた事実に
ちがいがある(あるのが当たり前かも)場合,
じっくり話を聞く。
⑤ ④の中盤で「落としどころ」を提案する
ここが生徒指導主事の腕の見せ所です。
⑥ 「落としどころ」について③のメンバーで
同意を得る。得たら,「落としどころ」までの
手続き(段取り)を提案する
ここも生徒指導主事の腕の見せ所です。
⑦ ⑥について③のメンバーの同意を
得ることができたら,すぐにとりかかかる
⑧ ⑦が,生徒にとって受け入れがやや
困難な場合であることも多いから,
生徒指導主事は,一人で,生徒と話し合い
できるだけ納得させる。
しない場合は,再び③に戻る。
⑨ ③④⑤⑥⑦⑧で,生徒が納得したら
⑥を実行に移す。
※ 被害を訴える側の生徒がいる場合,
その生徒にも,⑥について説明し,
納得したら,⑥を実行する。
ここでも,「事実」の確認が非常に
大切です。被害生徒の言い分と
加害生徒の言い分が一致するまで
あわてずに,「確認」作業を続ける
ことが何よりも大切です。
◎ 生徒指導主事の手腕 ◎
❶ 生徒にとっての事実を聴くことが
できる視野の広さ
❷ 生徒と話ができるコミュニケーション能力
生徒からの信頼
❸ 管理職・学年主任・学年主任との駆け引き
ができる交渉力
※信頼されているかどうか,です。
➍ 「落としどころ」「段取り」を提案できる
経験知・発想力,納得を勝ち取ることが
できる信頼を得ていること
❺ 性急さ,とくに事実の誤認は問題を
急激に悪化させるから,じっくり取り組むこと
◎ 生徒指導主事の必須知識 ◎
カウンセリングの知識,学校心理学の知識
臨床心理学の知識がないと,勤まらないと
思います。
ですから,本当に生徒指導主事として
任務を遂行できる人材は,少ないと感じ
ています。
でも,上記のことを淡々とこなしていた
教師を,私は一人だけ知っています。
今でも,尊敬しています。
● 生徒指導主事の「孤独」 ●
生徒指導主事になる人は,学級担任をしていた教師です。
学年主任のページでもふれたように,主任や主事になると
学級を持つことができなくなります。
学年主任や生徒指導主事になるような教師は,生徒や保護者
からの信望も厚く,熱心な人がほとんどです。(例外もあります)
ですから,学年主任は「学年の生徒全員の『学級担任』だ」と
切り替えることで,担任でないつらさから逃れられる。
でも,生徒指導主事はどうでしょうか。学校には「一人職」
の教師がいます。校長,副校長・教頭,教務主任,養護教諭,
生徒指導主事です。
学年主任は3人いるわけですから(1年主任・2年主任・3年
主任)「一人職」ではありません。
ですから,「一人職」の教師は「孤独」なものなのです。
生徒指導主事はこの「孤独」をどう解消したらいいのでしょう
か。
それは,授業,といっても,生徒指導主事の授業の持ち時間は
十数時間,少ないですね。
あとは,そう,部活動顧問です。これしかありません。
先ほど触れた,私の尊敬する生徒指導主事は,早朝練習を
はじめ,部活動に「燃えて」いました。
● 部活動王国をつくってしまった生徒指導主事 ●
ある教師がいました。生徒指導主事になると,以前に増して
部活動にのめり込み,部活動における「ラスボス」,「独裁者」
になってしまいました。
帝国陸軍を想起させる,部員の顧問(生徒指導主事)に対する
態度。絶対服従を部員に要求しました。
部員と顧問の「異常な関係」は,見ている他の教師,保護者を
不快にし続けました。
その部に子ども入れていた保護者が(その子は成人しています)
吐き捨てるように言いました。
「あの先生のおかげで,子どもは『理不尽に対する耐性』が育ちました
よ。あんな仕打ちをされ続けても,それに耐えた。そのスポーツが,
仲間が好きだったから…」
あの先生,今,どうしているのかな・・・
管理職は,その教師を「買って」ました。その指導力(抑圧的な,
冒頭のイラストのように,怒り,大声を出す迫力)で,
学校が「平安」を保っていると考えていたのでしょう。
でも,私はそんな管理職が,その教師を作ってしまったと
今でも思っています。何ともいやな,空気の学校になっていました。
数人の教師(男性・女性)が腕を組み,上から目線で大声で
指導(恫喝)し続けていました。
放課後,下校指導の時,まだ下校時刻まで余裕があったので
数人の生徒たちと私が笑いながら話していたとき,そうした数人の
教師が,私の存在など目に入らぬかのように
「しゃべってないで,早く帰れ!」 と大声で怒鳴りました。
あきれてしまいました。
● 二人の生徒指導主事の部活動の違い ●
❶ 私が今も尊敬している生徒指導主事の部活動での姿
球を出して,それをキャッチするというスポーツの練習でも,
「いくぞ~」 「うまい,うまい」 「ナイスキャッチ!」
失敗すると,「ドンマイ,ドンマイ」 「今,考えたか?」
次に控える部員も,自分の番を待ち遠しい表情です。
そんな練習を早朝,放課後と積み重ね,結果も出していました。
❷ ラスボス的な生徒指導主事の部活動での姿
同じような部活の場面です。
大声で,「何やってるんだ!」 「飛び込め!」
球も意地悪な方角と速度で,部員をいたぶっているようです。
「へたくそ!」 「気持ちだよ,気・持・ち!」
次に控える部員の表情は,緊張でこわばっています。
そんな練習を積み重ねても,結果は出ませんでした。
◎ 部活動の指導と生徒指導に共通するもの ◎
生徒との関係を大切にする教師と,自分が主人公に
なって「自己陶酔」に陥る(関係性を考えられない)教師の
あり方が,あからさまに出ています。
本当に教師は,イロイロです。君は,どう考えますか。
人間の成長には「情緒(あたたかさ)」を基底とする
「ことばかけ」が,乳児のころから,大人となってからでも
必要なのです。
これは,発達心理学や,臨床心理学,特に自我心理学や
対象関係論では,当然の前提としています。