黒き実が一帯制す藪茗荷
( くろきみが いったいをせいす やぶみょうが )


先日行った京都御苑には、あまり手を入れず、自然のまま残されている林があるが、そこでは、様々な草花が覇を競いあっている。結果的には、繁殖力の強い植物が、ある一画を制覇する。


 

今日取り上げる「藪茗荷(やぶみょうが)」も、かなり前から京都御苑の数百坪の土地を制覇している。勿論、他の植物も、その地に侵入して懸命に勢力を伸ばそうとしているが、ここ数年観察している限りでは成功していないようである。


 

本日の掲句は、そんな様子を見て詠んだ句。先日行った時は、花がほとんど終わり、実が白色から黒色に変色し艶光っていた。尚、「藪茗荷」の実は秋の季語。花の方は夏の季語。


 

因みに昨年は、白い花を咲かせている7月中旬に訪れ、以下の句を詠んでいる。

密過ぎや御所裏に咲く藪茗荷

このころから、密集しているもの見ると、条件反射的に危ないと感じるようになった。いささか神経過敏になっているような気もするが・・・。


 

尚、「藪茗荷」については、他にも以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① いつからか小庭の花に藪茗荷
② 奇妙なる黒い実のなる藪茗荷
③ 花も実も微妙にかわゆし藪茗荷



 

①は、数年前より、我が家の小庭に根付き、花を咲かせている様子を見て詠んだ句。
②は、秋になり黒い実をつけている様子を見て詠んだ句。上五の「奇妙」は、「藪茗荷」 の「みょう」 に語呂を合わせたもの。 
③は、「藪茗荷」の花も実もよく見れば可愛いと詠んだもの。上五の「花も実も」は、「花も実もある」という成句からの引用。


 

藪茗荷(薮茗荷とも)は、ツユクサ科ヤブミョウガ属の多年草。原産地は、日本、中国、朝鮮など。日本では関東地方以西に自生する。日陰でも良く育つ。


花期は6月~8月頃。茎の先端から花茎を伸ばし、径6mm程の白い花を穂状に咲かせる。花には、両性花と雄花があるが、いずれも「一日花」。

*藪茗荷の花 


 

花が終わると径5mm程度の球状の果実を付ける。始めは白色で、熟すと黒紫色になる。種子だけでなく、地下茎を伸ばしても増殖し、群生することが多い。


名前は、葉が「茗荷」に非常によく似ていて、藪地で自生していることから付けられた。但し、野菜の「茗荷」は、ショウガ科に分類される植物で全く関連はない。


実際に「茗荷」がどんな花を咲かせ、どんな実を付けるのか、興味のあるかは、以下のバナーをクリックしてご覧いただきたい。

 

◆茗荷の花と実◆

*藪茗荷の花


 

「藪茗荷」は季語になっているが、あまり句には詠まれていない。以下には以前掲載したものを参考まで再掲した。

【藪茗荷の参考句】
母と子の渇に水噴け藪茗荷 (北原白秋)
藪茗荷白々とはや実をかかげ (山西雅子)
藪茗荷秘すれば花のこぼれつぐ (手塚美佐)
北鎌倉始めての路藪めうが (高澤良一) 
*めうが=みょうが
鉄舟の墓後ろより藪茗荷 (小坂順子)