鎌田敏夫の里見八犬伝と山田風太郎 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 鎌田敏夫:新里見八犬伝(1984)角川書店

原典はもちろん曲亭馬琴(滝沢馬琴)「南総里見八犬伝」文化11年(1814年)に刊行開始、28年をかけて天保13年(1842年)に完結した、全98巻、106冊の大作である。わが国伝奇小説の古典だが、江戸後期に流行った「三国志演義」「水滸伝」など白話文学の影響を多大に受けた。江戸川乱歩→横溝正史といったわが国の伝奇好みをさかのぼると、馬琴から中国白話文学、一方では上田秋成「雨月物語」(怪談)系の、あるいは「竹取物語」あたりへと向かうのかもしれない。

当時ヤクザ映画「仁義なき戦いシリーズ(1973~)」の深作欣二監督がジャリタレ?映画を撮るというので観に行った覚えがある。目的を果たすために次々と命を投げだす「七剣士の死に悲痛さが描かれていない」とずいぶん批評子に叩かれていたが、もともと戦争で無意味な死を目の当たりにした深作欣二ゆえのヤクザものであり「八犬伝」だったのだから、批評子の的のほうが外れていた。それにしても馬琴作品の息は長い。

魔界転生
 山田風太郎:魔界転生(1981-第15版)辻村ジュザブロー

虚実ない交ぜな山田風太郎の「八犬伝(1983)」は見事すぎるが、時代ごとの「里見八犬伝」リメイク版は(時代を映し出す)定点観察の対象物件になるような気がする。八犬伝以前に、角川&深作欣二は山田風太郎の「魔界転生(1981)」を映画化し大ヒットさせているが、このころの角川書店のメディア展開は今までの出版社の分限を越えるもので目を見張るものがありましたね。薬師丸ひろ子・渡辺典子・原田知世をデビューさせた時代でした。

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 大光銀行30周年記念カレンダー

藤田嗣治「私の夢(旧大光コレクション)」を全面に配したA0ポスターです。大光銀行30周年(1971)にあわせて配られたものだが、藤田遺族側から絵画使用の版権クレームから多く遺棄されたため残存するものは極めて少ないらしい。情報紙コラムに使用したいとの依頼で久しぶりのご開帳です。