おたんこナース 佐々木倫子 小林光恵原案
連載はビックコミックスピリッツ。
当時は昼休みのマンガとアンパンだけが楽しみという、販売員だったので、
発売日には向かいの書店にさっさと行って、さっそくマンガを読みながら、
午後3時頃の遅いお昼を取る私だった。お客さんも昼休みに来るケースが多くて、あれよあれよという間に
お昼は後ろへ流され、気がついたらもう帰る時間でした、ということもあった。でもそんなのは苦じゃない。
苦なことはいくらでもあったが差し障りがないところで言えば、
電話でメガネを買おうとした男性と事件かな。フレームはおなじものがなくて、やっと探してワンサイズちいさいものがあり、不安だけど、まったく同じものじゃないといやだ、というので色違いも勧められず。
カルテにあるとおり、3年前と同じ度数でつくって、お母さんに取りに来てもらう、という謎のオーダー。
断れば良かった、そう思いますよいまなら。そこから当然のように発生したクレームは本部を巻き込んで、すっごくブルーな1ヶ月でした。でも断っていたらいたで、またクレームになっていたと思われる。ううう。お客様は神様だなんてだれが言った。
おなじフレームっていうのがまずね、メガネもファッショングッズでもあるわけで、そんなに長いあいだあるわけがないでしょ。おなじ度数でつくっても、目の状態が変わっていることだってあるんだしね。
来店してくださいよ頼みますから。
まあいまのトラブルは、ほんとうに差し障りのないものであって、もっとわっけわからんことばっかりでした。でもやらなきゃならないのだ。
そんな私の心のオアシスはマンガだ。いまもマンガだけど。
新人ナース似鳥ユキエは思い込みが激しいが、ガッツがあるナースだ。
マンガの中のセリフに背中を押されrて、いやなことに立ち向かう
勇気をいつももらっていた。
看護学校の鬼教官が病院に入院して、そこは自分の看護学生たちがナースに
なっている病院ですから、愛院精神に燃えて、似鳥をしごくわけだ。
しかし、行き過ぎもあり、同室の女性の異状に対応できなかったことから
似鳥はついに言ってしまう。もう指導は受けません!と。
そんな中でやってしまった、動脈刺し。
あれだけ言ったのにこんなミスをしてしまった。
でもそんなことを考えている場合じゃない。
ベストの選択は、と考えた似鳥は、本宮さんに動脈に刺したことを打ち明け、
指示を仰ぐ。
「逃げずに恥をかいたのは勇気あるわ」
小さなコマなんだけど、この、
「逃げずに恥をかく」
という言葉がずっと忘れられなくて。
私なんか似鳥さんと違ってふつう程度に気が弱いし、できれば
恥はかきたくない。
しかし、気が弱いので自分がなにかを誤魔化すとあとあとまでひきずってしまうことも
わかっている。
そんなときはこれだ!
「逃げずに恥をかこう!」
そう思って、背中をぐいぐい押してくれているイメージで
思いっきり恥をかこうと前へ一歩出るんです。
このエピソードもなかなか忘れられない。
デキル後輩が看護実習にやってきたわけだ。始終叱られてばかりいる似鳥とは
違って、ほかのナースたちからも一目おかれているほどの優等生。まだ学生だっていうのに。
しかし、ご覧のようにちょっとイヤなところがあるんですね。
当時はまだそういう言い方は流行ってなかったですが、
上から目線の典型。
短気で直情径行型の似鳥がカーッとならないわけがない(笑)。
しかしこの優等生も、思わぬことをやってくれました。
どうしても食事をたべてくれない、やや認知症がかっている患者さんの
口にスプーンを突っ込むというアラワザ。
学校優等生の限界でしょうか。
しかし、似鳥さんは自分の受け持ちの患者さんをこのままにもできないし、
学生さんへの指導もしなくてはならない。
見本を見せなきゃならない。
立ち尽くす学生さん。歌いまくる似鳥。
技術の奥を超えた最終兵器、「ぞうさん」。
…山口県周南市の徳山動物園の前に、ぞうの碑があって、
「ぞうさん」の詩が刻まれているのをみたとき、
このエピソードが髣髴としましたね。まどみちおは、山口県徳山市(合併していまは周南市だけど)生まれだったのでした。
そしてついに一緒にうたわせることに成功。
食事介護にいつまで時間をかけてるのよ!と先輩たちに叱られる
似鳥でしたが、
この技術の奥の奥を超えた最終兵器のものすごさに笑いながら、
どうにもこうにも行き詰ったら、「ぞうさん」を何十回も歌った似鳥を思い出して
奮い立つ(笑)。
ほかにもいろいろなエピソードがあり、6巻全部が無事だったのは実家に
ずっと眠っていたおかげだと感謝してしまう私でした。
(「チャンネルはそのまま!」も6巻だが、この家においていたらあっというまに
ボロボロになってしまうのだった…)