東京ステーションギャラリーで「没後90年記念 岸田劉生展」を観てきました。観に行ったのは、9月6日のことでした。
10年前、損保ジャパン東郷青児美術館で「没後80年 岸田劉生 肖像画をこえて」を観ました。開催は、2009年4月25日から7月5日となっていました。その時の構成は、1.自画像、2.友人・知人、3.家族・親族となっていました。分かりやすい構成です。
次の「没後100年」は、どこの美術館で開催されるのでしょうか?
今回の展覧会の特徴をあげると、以下のようになります。
(ホームページによる)
その活躍を年代順に追う!
ひとつの到達点にきたら画風を変え、また新たな作風へと展開させ続けた岸田劉生。劉生のほとんどの作品は、画面に残されたサインや日記から、制作年月日がわかります。ほぼ制作年代順に展示された会場で、彼の画業の変遷を辿ります。あの名作がどういう経緯で誕生したのか、その理由を理解することができるに違いありません。
岸田劉生はなぜすごい?
日本の近代美術の歴史は、フランスの近代美術を追随した歴史であったとされます。しかし、岸田劉生はただひとり、初期から晩年に至るまで、自己の価値判断によって、自己の歩む道を選択し、自己の絵画を展開しました。そんな劉生の作品や姿勢、活動は、同時代の若い画家の指標ともなり、強い影響を与えました。
次に開催されるであろう没後100年展。
それまで実現が難しいような名作揃いの劉生展を! これまで数多くの岸田劉生展が開催されましたが、本展は初期から最晩年までの名品ばかりを厳選する、今後しばらく出会えないような、珠玉の劉生展を目指しました。各所蔵先のご協力を得て、北は北海道から、南は九州まで、日本各地より劉生の作品が集います。この大回顧展の機会をどうぞお見逃しなく。
あの重要文化財をはじめ名品の数々が東京国立近代美術館から!劉生の作品を多数収蔵する東京国立近代美術館から、前期・後期あわせて約30点が出品されます。そのなかには、重要文化財《道路と土手と塀(切通之写生)》や、「この最初の(油彩の)五歳之像には父の気持ちにやはり何か特別なものがあった気がする」と麗子が記した《麗子肖像(麗子五歳之像)》も含まれます。
発表当時の感動も味わう!
《B.L.の肖像(バーナード・リーチ像)》《壺の上に林檎が載って在る》《麗子肖像(麗子五歳之像)》の作品状態を修復家が確認したところ、経年によるワニスの黄変なども認められたこともあり、作品の修復が行われました。その結果、描かれた当初と近い色や状態を取り戻し、より鮮明に劉生の表現が迫ってくるようになりました。
展覧会の構成は、以下の通りです、
第1章 「第二の誕生」まで:1907-1913
第2章 「近代的傾向・・・離れ」から「クラシックの感化」まで:
1913-1915
第3章 「実在の神秘」を超えて:1915-1918
第4章 「東洋の美」への目覚め:1919-1921
第5章 「卑近美」と「写実の欠除」を巡って:1922-1926
第6章 「新しい余の道」へ:1926-1929
第1章 「第二の誕生」まで:1907-1913
第2章 「近代的傾向・・・離れ」から「クラシックの感化」まで:
1913-1915
第3章 「実在の神秘」を超えて:1915-1918
第4章 「東洋の美」への目覚め:1919-1921
第5章 「卑近美」と「写実の欠除」を巡って:1922-1926
第6章 「新しい余の道」へ:1926-1929
「没後90年記念 岸田劉生展」
日本近代絵画史上に輝く天才画家。満を持して登場!
画家・岸田劉生(1891-1929)は、日本の近代美術の歴史において最も独創的な絵画の道を歩んだ孤高の存在です。明治の先覚者・岸田吟香を父として東京・銀座に生まれ、父の死後はキリスト教会の牧師を志しますが、独学で水彩画を制作するなかで、画家になることを勧められ、黒田清輝の主宰する白馬会葵橋洋画研究所で本格的に油彩画を学びます。そして、雑誌『白樺』が紹介する「後期印象派」の画家たち(ゴッホ、ゴーギャン、マティスら)を知り、大きな衝撃を受けます。1912年には、斎藤与里、高村光太郎、萬鐡五郎らとともにヒユウザン会を結成、強烈な色彩と筆致による油彩画を発表します。しかし、画家としての自己の道を探究するために、徹底した細密描写による写実表現を突きつめ、その先にミケランジェロやデューラーら西洋古典絵画を発見、独創的な画風を確立します。1915年には、木村荘八、椿貞雄らとともに草土社を結成、若い画家たちに圧倒的な影響を与えました。また、最愛の娘・麗子の誕生を契機に、自己のなかの究極の写実による油彩画を志します。その後は、素描や水彩画、日本画にも真剣に取り組み、再び油彩画に「新しい道」を探究しはじめた1929年、満洲旅行から帰国直後に体調を崩して、山口県の徳山において客死しました。享年38歳でした。
本展では、岸田劉生の絵画の道において、道標となる作品を選び、会期中150点以上の作品を基本的に制作年代順に展示することで、その変転を繰り返した人生の歩みとともに、岸田劉生の芸術を顕彰しようとするものです。このたび没後90年を迎えて、一堂に名品が揃います。この機会をどうぞご堪能ください。
*会期中、一部展示替えがあります(前期=8/31~9/23、後期=9/25~10/20)。
「東京ステーションギャラリー」ホームページ
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
「没後90年記念 岸田劉生展」
展覧会監修:
山田論(京都市美術館)
編集:
名古屋市美術館
東京ステーションギャラリー
山口県立美術館
中日新聞社
発行:
©中日新聞社2019
「肖像画の不思議 麗子と麗子像」
発行日:2009年4月30日
編・著者:岸田麗子
発行所:求龍堂
「没後80年 岸田劉生 肖像画をこえて」展
学術協力:市川政憲(美術評論家)
編集・発行:日本経済新聞社
©2009 日本経済新聞社
「画家 岸田劉生の軌跡」
油彩画、装丁画、水彩画などを中心に
編集:笠間日動画廊美術館
製作:日動出版
発行:笠間日動画廊美術館
朝日新聞:2019年9月3日
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