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<202205.08記事>

 

 

映画『グリーンブック』

(原題:Green Book)

2018年製作/130分/アメリカ

日本での劇場公開/2019年3月1日
 

トニー・“リップ”・バレロンガ役/ビゴ・モーテンセン

マハーシャラ・アリドクター・ドナルド・シャーリー役/マハーシャラ・アリ
ドロレス(トニーの妻)役/リンダ・カーデリニ

監督 ピーター・ファレリー

 

 解説   映画.comから)

 人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描き、第91回アカデミー作品賞を受賞したドラマ。

 1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。
 トニー役に「イースタン・プロミス」のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役に「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。トニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父とドクター・シャーリーの友情の物語を映画化した。監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画を得意としてきたファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞、助演男優賞を受賞した。

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「TAP the POP」 2022年11月14日掲載

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2020年初頭、新型コロナウィルスが猛威を振るい始め、職場もリモート・ワークを導入し、土日祝日は外出を控えるなど行動制限が日常的になっていた頃、自宅にいる時間がそれまでとは比べものにならないほど長くなった。

そこで、それまでほとんど観なかったテレビ番組をチェックし始め、これはと思う番組は録画するようになった。その中のひとつにテレビ東京の「午後のエンターテインメント 午後のロードショー」がある。

 

平日は毎日昼の時間帯に映画を放送しているので、基本的には毎日録画している。この番組のお陰でかなりたくさんのいい映画を観ることができている。

 

我が家にはNETFLIXを入れているが、その日テレビで放映された映画を観るのはこれはこれで新鮮でいい。

 

5月4日は地上波初の『グリーンブック』が放送された。

 

2018年に製作され、日本では2019年3月1日に劇場公開されている。冒頭「inspired by a true story」とスクリーン真ん中に入っているように、この映画は事実に基づいた物語である。

 

(トニー:上とシャーリー:下)

 

黒人差別が色濃い南部へ敢えて演奏ツアーに出た黒人ピアニスト・シャーリーと、そのツアーマネージャー兼ドライバー兼用心棒として雇われたイタリア系白人のトニー。

 

行く先々で様々な差別的待遇や酷な制裁を受け苦しむシャーリー。荒くれ者だが、人を大事にし人から好かれるタイプ、豪放磊落なトニーは「グリーンブック」※片手に、シャーリーを守りながら旅を続ける。

 

※グリーンブック:1936年から1966年までヴィクター・H・グリーンにより毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック。ジム・クロウ法の適用が郡や州によって異なる南部で特に重宝された(同作品公式サイトから)。ジム・クロウ法とは、アメリカ合衆国南部における人種の物理的隔離に基づく黒人差別の法体系のこと。広義には、アメリカの黒人差別体制一般をいう。

 

映画の舞台は1962年代初頭。あの当時はこんなにも黒人差別がアメリカ社会と人々の中に根づいていたのか、と愕然としてしまうほど。シャーリーが電話で助けを求めるシーン、電話の向こうにいる相手は、1961年1月にアメリカの司法長官となったジョン・F・ケネディ。

 

それまでまったく異なった世界に住み、性格も経歴もまったく違う二人が、知らず知らずのうちに啓発し合い、それぞれが物事の捉え方を変え、心の部屋を広げていく様は、笑いあり、感動ありで、二人で旅するツアーの道中自体が作品のストーリーに見事に緩急を与えている。

 

この作品の公式サイトに「極上のラストにスタンディングオベーションを贈らずにいられない」と書かれているが、このラストシーンは実質1分半。この1分半の中に、この作品が訴えたかったものすべてが凝縮されている。

 

最後にドロレス(トニーの妻)がシャーリーをハグしたのは、様々な違いなど度外視して、シャーリーの中に差別も貴賤もない同じ「人間」を見たのだと思った。私の中からも笑顔と感動と拍手を呼び起こしたラストシーンだった。

 

2人のその後は―

 

ドン・シャーリーはその後もツアーや作曲を続け、レコードを出せば絶賛された。作曲家であり指揮者、ピアニストだったストラヴィンスキーは「彼のピアノは神業だ」と言ったいう。

 

トニー・リップはニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナに戻り、支配人にまで上り詰めた。

2013年、二人は数か月の差でこの世を去ったが、その友情は生前にも増して永遠のものとなった。

 

【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告(2019年1月22日)

 

 

※本記事で使用している写真はすべて「グリーンブック」公式サイトから