☆岸田 森☆…ナイーブで寂しがり屋の吸血鬼 | shoの映画部屋

☆岸田 森☆…ナイーブで寂しがり屋の吸血鬼

岸田 森(しん)
東京出身

shoの映画部屋-a.jpg

暗い部屋に蝋燭の灯りに写し出され…
目を見開き迫って来る…
恐怖におののく娘…
そんな役を演じたら天下一品だった。

無口陰湿で暗く不気味な殺し屋…
笑う時には口元少し緩め人を嘲る…
格闘シーンでは目を大きく見開き迫り。

悪を演じる時の岸田はそれまでにない悪役スターの域を作りあげた…

shoの映画部屋-2009120311360000.jpg

何と言ってもこの人が俳優としての真骨頂は、
1971年、32歳の時の東宝映画
『呪いの館 血を吸う眼』で吸血鬼を演じた、和製ドラキュラであろう。
この東宝『血を吸う』シリーズは代表作となった。
同シリーズでの怪演によって、「吸血鬼を演じさせたら、クリストファー・リーか岸田森の右に出る者はいない」高い評価を得た。

shoの映画部屋-17chiwosuume.jpg

和製ドラキュラは、故天知茂が有名だが、気高さ内面に隠した怖さは岸田が上を行く。

そんな岸田森だが、子ども達には人気を得ていた。
それは円谷プロ『怪奇大作戦』で、牧史郎役を演じて 常に冷静沈着な科学の信奉者で、SRIの頭脳的存在の役柄で、子ども達には認識されていた。
この作品が円谷プロとの初仕事とであり、この作品への出演が自身の芝居の一大転機になったと語り、以後「僕は円谷育ち」と公言している。

また、蝶のコレクターとしても有名で採集した数は300種に及んだ。


shoの映画部屋-2009120311410000.jpg

……………………
shoの映画部屋-a.jpg

1960年21歳の時に文学座附属演劇研究所に研究生として入団。
研究発表会のような内輪の演劇ばかりで、「年間収入が2~3万円という暮らしが5~6年続いた」と語っている。
1964年、同期である女優・悠木千帆(後の樹木希林)と結婚する。
1965年、26歳。
文学座座員に昇格。
1966年
同年の『氷点』が本格的なテレビ初出演る。
1968年(昭和43年)、29歳。悠木(樹木)と離婚後、バーのマダムと再婚するが再び離婚。
その後は女優・三田和代と交際関係にあった。

1971年(昭和46年)、32歳。東宝映画『呪いの館 血を吸う眼』で吸血鬼を演じ、和製ドラキュラとの評価を得る。
この東宝『血を吸う』シリーズは代表作となった岸田本人もドラキュラ役は非常に気に入っていたようで、ジョージ・ハミルトン主演の『ドラキュラ都へ行く』で吹替えを演ったり、

shoの映画部屋-evildracula1.jpg

晩年、ドラマ仕立てのTVバラエティ『もんもんドラエティ』でドラキュラ(キャラクター名は「アルカード」)をユーモアたっぷりに演じていた。

1973年(昭和48年)、34歳。テレビ特撮『ファイヤーマン』に出演。脚本を手がけた第12話では、部分演出も行う。
また、スケジュールの合間を縫って、たびたびアジア方面へ蝶の採集に向かう。

shoの映画部屋-image0018.jpg

この年、和製ドラキュラの草分けともいえる天知茂と、天知主演のテレビ時代劇『無宿侍』おいて兄弟役で共演している。

1977年、38歳。
『歌麿 夢と知りせば』に出演、脇役の多かった岸田としては唯一ともいえる大作映画主演(ただし、トップクレジットではない)であり、カンヌ映画祭でも上映され話題を集めた。
当作をはじめとして、円谷プロ以来のつきあいである実相寺昭雄監督とも名コンビを謳われた。
萩原健一、水谷豊、松田優作ら岸田を慕った俳優も多かった。草野大悟とは文学座以来、生涯の親友であった。

shoの映画部屋-2009120311370000.jpg

左、岸田森
中、岡本喜八監督
右、怪優天本英世

1980年41歳。
テレビ公共広告の演出を手がけ、これと前後して、テレビコマーシャル分野で演出家としても活躍。腕をふるう。

……………

shoの映画部屋-2009120311340000.jpg

無口で陰湿な役の多い岸田だが、プライベートでは寂しがりやで、出演待ち時間にはやかましいくらいのおしゃべりであったという
因みによく岸田今日子の弟と勘違いをなさる人がいるが、従弟(いとこ)である。
蝶の収集・採集やスコッチ・ウイスキー収集、油絵、ゴルフ、ジャズ鑑賞(レコードは相当なコレクションがあった)。
特技は剣道(3段)

shoの映画部屋-2009120311430000.jpg

1982年逝去(享年43歳)

岸田のような俳優は、もう出て来ないと思う。

…………………
主な出演作品
1962年
宝塚「放浪記」
1967年
日活「斜陽のおもかげ」
1968年
東宝「斬る」
1970年
東宝「軍閥」
1971年
東宝「呪いの舘 血を吸う眼」
1971年
東宝「帰ってきたウルトラマン」
1971年
ATG「曼陀羅」
1972年
ATG「哥(うた)」
1974年
東宝「修羅雪姫 怨み恋歌 」
1974年
東宝「血を吸う薔薇」
1974年
ATG「あさき夢みし」
1977年
独立「歌麿 夢と知りせば」
1979年
「蘇える金狼」
1981年
ATG「近頃なぜかチャールストン」
1983年
独立「南極物語」

他、多数出演