「京名物いもぼう平野屋」の「本店」と「本家」に行ってきました

 

遠方より友来る。

わざわざ、癌患者のお見舞いに来てくれました。

 

先週は長野県の農業関係者、今日は岡山から流通大手役員。

海老芋の美味しい時期なので、「芋棒」の店に案内しました。

 

折角の機会、本店と本家に行って食べ比べしました。

 

「一子相伝」を謳う本店と本家が100メートルも離れていない。

観光客はどちらに行ったらいいか戸惑うでしょうねぇ。

 

改めて、「一子相伝」の意味を確認する。

学問や技芸などの秘伝や奥義を、自分の子どもの一人だけに伝えて、

他には秘密にして漏らさないこと。

「相伝」とは、代々伝えるという意味。

 

他の辞書でも同様でした。

学術・技芸などの奥義を、代々自分の子供の一人だけに伝えて

他には教えず、秘密に受け継いでいくこと。家伝の秘。

 

京名物いもぼう平野屋本店

 

 

知恩院の南門から、円山公園に出て直ぐ右側に位置する。

 

 

店の貼り紙に、「当店は『海老芋』を使用しています」

微妙な表現。

平たく言えば、「他の店ではそうでないところもある

ようですが、当店は海老芋を使用しています」

 

海老芋は京都の伝統野菜37品目のひとつ。

現在は、京都南部の山城地区と、京丹後などで栽培されています。

安永年間(1772~1781)、青蓮院宮が、長崎から持ち帰った

里芋の種を栽培したのが始まりと伝えられています。
 

「当店は海老芋を使用しています」

 

 

享保年間から300余年の歴史ある老舗です。

「円山公園を訪ねる人は『いもぼう』を必ず召し上ることが

不文律ともなっております」

昔の話ならまだしも、これは些か言い過ぎかも。

 

 

棒鱈と炊き合わせた京都のおばんさい「芋棒」は古くから家庭料理としても存在した。

手間が掛かるから正月くらいしか作らない。昨今、正月も作らない家庭が多い。

海老芋と棒鱈の炊き合わせで「いもぼう御膳」

 

海老芋は晩秋から冬が旬。

9月中旬頃から出荷が始まり、師走にはおせちの需要などでピーク、3月頃まで続きます。

最もたくさん出回り、美味しい旬の時期は11月から2月です。

 

 

北海道から届いた乾物の棒鱈と、京都の海老芋を一緒に炊き上げる「芋棒」

海老芋が入荷しない時は、里芋を代用しています。

 

里芋の旬も秋から冬です。

一般的な里芋は、市場では通年流通しています。

品種により旬が少しずつずれる。

 

 

さすが京都の名店。創業300余年を誇る店構えです。

 

 

山の幸と海の幸、海老芋と棒鱈の出会い。

京都の農産物と、北海道の海産物が出会って意気投合。

 

海老芋のアクが棒鱈を柔らかくし、棒鱈のコラーゲンが

海老芋の煮崩れを防ぐ。

お互いの欠点を補填して、お互いの長所を引き出す。

縁起のいい「出会いもの」として、お見合いや商談に使われています。

 

海老芋と棒鱈の「出会いもの」の話が興味深い。

 

 

玄関から入った処にある坪庭。

 

 

「稚内発棒たら」

「寒風が育む日本最北の逸品」のポスターがあります。

稚内は国境の街。しばれる季節に訪ねたことがある。

はるばる蝦夷地からようこそ。感慨深いものがある。

 

 

1881年3月19日、新島襄と八重が訪れた店。

吉川英治や松本清張、川端康成などの文豪の本に登場。

 

 

松本清張の小説「顔」のドラマの撮影にも使われた。

「北海に、京を和したる、いもぼう哉」(松本清張書)

 

 

長い通路に、たくさんの個室が並んでいます。

雰囲気がいいから接待に使われることが多い。

 

 

以上、先週の「京名物いもぼう平野屋本店」のレポート。

 

これからは本日の「京名物いもぼう平野屋本家」の話です。

通路から横に入った処に入口玄関がある。

 

 

「旬の京野菜提供認定店」と付記。

 

 

ご案内に詳しく書いてある。

厚く両取りした海老芋、一週間から十日間かけて柔らかく

戻した棒鱈を丸一昼夜かけて炊き上げる。

煮くずれし易いものと煮えにくいものを一緒に炊くのは普通、

考えられないこと。

しかし、棒鱈を炊く時に出る膠質は海老芋を包んで煮くずれ

を防ぎ、海老芋から出る灰汁は棒鱈を柔らかくする。

素材が持つお互いの性質の欠点を補い長所を引き出す。

出会いもの芋棒は先人の知恵と工夫の賜物です。

 

 

京会席は結構いい値段です。

時代を経てお客さんが途切れない不思議。

それだけ付加価値がある証左ですね。

 

 

一子相伝。

 

 

ショーケースに海老芋と棒鱈を展示。

 

 

季節によりお芋の種類や大きさが違います文字サイズS

 

 

反り返えった形、表面の縞模様が海老のように見えるので海老芋。

もともとは唐芋という品種ですが土寄せして海老のように曲げる。

手間がかかるが味が優れて逸品なので高級品として扱われています。

 

 

座敷と椅子席があります。

 

 

以上、「京名物いもぼう平野屋本家」のレポートです。

 

まとめ。

「本店」と「本家」、どちらの店も一子相伝を謳っています。

「出会いもの」と言われる由来も、同じ内容です。

今が旬、どちらの店でも海老芋を使っています。

海老芋は京都の伝統野菜。

京都を中心に古くから作られ、京料理の食材として用いられてきた。

京芋とも呼ばれる。

宮崎県のタケノコイモも「京いも」として流通しているが別物。

 

以上、「一子相伝の店、本店と本家を訪ねて

どちらの店も、歴史と伝統を背負って300余年の創業。

微妙なライバル関係も、ひょっとして演出?の風情。

切磋琢磨して、伝統の味を守っておられます。

遜色ない出来映えの滋味、どちらの店でも、美味しく頂きました。

友人二人とも大満足でした。

 

下肢の痺れとの闘い。

明るい癌患者修行中。