秋田「栗林 純米 金沢西根」スリムな甘旨味がキビキビと躍動し、華奢な含み香とくっきりとした世界を | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

 自宅の晩酌に秋田県美郷町の栗林酒造店のお酒を何本かまとめて開けました。
 「春霞 特別純米」に続いて2本目に開けたのはこれです。

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 「栗林(りつりん)純米 金沢西根」。
 さて、栗林酒造店が秋田の酒蔵ユニット「NEXT5」の一員であることはご存知かと思います。
 メンバーに次から次へと新しい酒を投入する新政酒造や山本合名などがいて、彼らがやたら目立つのに比べて、栗林酒造店の存在感はいささか薄いのが現状です。
 けれど、蔵元杜氏の栗林直章さんはそのことを、意に介す気配はなく、
 「特別なことはやりません。NEXT5の中では一番何もやっていないのがうちの蔵です」
 と明言しています。

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 でも、そんなことはありません。
 栗林酒造店も一本筋の通った酒造りの目標があるのです。
 それがテロワールです。
 造りに使うものすべてを地元の美郷町産に限定することです。
 最終ゴールは、原料米すべてを美郷町産にしたいそうです。
 現在、栗林酒造店が使っている米は、秋田県産が美郷錦、美山錦、あきた酒こまち。県外産が山田錦、雄町、八反錦です。 すでに全体量の40%が秋田県産の美郷錦になっていますが、栗林さんの目指すところは、全量を美郷町産の美郷錦にすることです。

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 美郷錦は山田錦と美山錦を交配して2001年に品種登録して誕生した酒造好適米です。
 片や美郷町は町村合併によって平成17年に誕生した新しい町です。
 そこに蔵を構える栗林さんは
 「新しい町の名前と同じお米があるのなら、それを使ってみようではないか」、
 と町誕生に合わせて契約栽培を始めたのです。
 「使ってみて、すぐにはまってしまいました。山田錦と美山錦の特性を併せ持っているので、嫌味の無いクリアな味わいのお酒ができるのです。秋田県の酒蔵は、あきた酒こまちの方に傾斜するところが多いけれど、うちはむしろ美郷で勝負することにしました」
 と栗林さんは話しています。
 そして、美郷町産の美郷錦だけで醸したお酒にはテロワールを強く意識して、「栗林」の新銘柄を3年前に誕生させました。
 お酒は町内の金沢西根地区で獲れた美郷錦60%精米の純米酒、一回火入れです。
 いただきます。

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 上立ち香は抑制が効いたなかにも温厚で柔らかい香りが。
 玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、よく磨きこんだ表面に柔らかな産毛を乗せて、周囲を撫で回すようにして転がり込んで来ます。
 受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒粒を次々と射掛けて来ます。
 粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。
 甘味は中庸でスキニーなタイプで流麗な印象、旨味は気持ち毛羽立ったもので、両者は仲良く腕を組んで、キビキビとした濁りの無いハーモニーを奏でるのです。
 流れてくる含み香はメロン系のクリアな香りで甘旨味に薄化粧を付与。
 後から来るのはほんのわずかな渋味で、全体をメリハリをつけつつ締め付けるのです。
 それを受けて、甘旨味は潔く縮退に転じ、クリアな印象を残しながら、喉の奥へと駆け去っていきました。

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 それでは、もう1本の「栗林」をいただくことにします。

*一升2500円以下の純米旨酒に登録します。

お酒の情報(16年271銘柄目)
銘柄名「栗林(りつりん)純米 金沢西根 27BY」
酒蔵「栗林酒造店(秋田県美郷町)」
分類「純米酒」「一回火入れ酒」
原料米「美郷町金沢西根地区産美郷錦」
使用酵母「亀山酵母」
精米歩合「60%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税抜)「1800ml=2500円」
評価「★★★★★(4.2点)」