私はタンポポも好きで、毎年春にタンポポが咲くとついつい見入ってしまう。
都市部では少なくなってしまったが、日本のタンポポは地域によって種類が異なり、比べてみると面白い。
今回は、私が今までに撮影した5種類の在来タンポポの写真を掲載したい。
カントウタンポポ(関東蒲公英)
別名:アズマタンポポ
学名:Taraxacum platycarpum
分布:関東地方、山梨県、静岡県(日本固有種)
倍数性:2倍体
主に関東地方の低地に分布する在来タンポポ。
東京都野川公園にて。都市化の影響で数が減っているが、農地や草地、河川敷などではまだまだ大きな群落を見ることができる。
これはカントウタンポポの品種で、ウスジロカントウタンポポと呼ばれるもの。普通のカントウタンポポよりも花色が薄いが、シロバナタンポポほど白くはない。カントウタンポポの群落の中でしばしば見られる。同様の形質は、シナノタンポポ、トウカイタンポポ、カンサイタンポポでも見られる。
総苞外片は角状突起が目立ち、長さは内片の1/2~2/3ほどである。総苞の形態は変異が多く、シナノタンポポ、トウカイタンポポと識別困難なことも多い。
シナノタンポポ(信濃蒲公英)
学名:Taraxacum platycarpum ssp. handoense
分布:栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県(日本固有種)
倍数性:2倍体
北関東~甲信越地方の低地に分布するカントウタンポポの亜種。
山梨県韮崎市にて。東京で見られる在来黄花タンポポはカントウタンポポだが、お隣の山梨県ではシナノタンポポも見られる。
総苞は丸みを帯びる。総苞外片に角状突起はなく、長さは内片の1/2~2/3ほどである。
よく似たエゾタンポポは染色体が3、4、5倍体で、北海道、本州(中部・関東北部以北)、サハリンに分布する。北海道・東北では平地、中部地方では山地に自生する。
トウカイタンポポ(東海蒲公英)
別名:ヒロハタンポポ(広葉蒲公英)
学名:Taraxacum platycarpum var. longeappendiculatum
分布:千葉県房総半島南部~和歌山県潮岬までの太平洋側(日本固有種)
倍数性:2倍体
主に静岡県、愛知県、三重県などの東海地方に分布するカントウタンポポの変種で、典型的なものは静岡県の駿河湾沿岸に分布する。
別名のヒロハタンポポは、葉が幅広という意味だが、必ずしも幅広というわけではない。
愛知県田原市にて。シデコブシを見に行った際に撮影した。場所から判断してトウカイタンポポだと思われる。
静岡県静岡市駿府城公園にて。総苞外片には大形の角状突起があり、長さは内片の2/3以上である。
「静岡県植物誌」によると、静岡県にはカントウタンポポも分布しているようだ。
神奈川県大和市で見た個体も突起が大きかったが、トウカイタンポポなのだろうか?
カンサイタンポポ(関西蒲公英)
学名:Taraxacum japonicum
分布:本州(近畿地方以西)、四国(瀬戸内海側)、九州(北部)。朝鮮。
倍数性:2倍体
西日本の低地に広く分布する在来タンポポ。
京都府立植物園にて。鴨川の河川敷にも沢山生えていた。背が低く、頭花も小さい。
総苞外片の長さは内片の1/3~1/4ほどである。角状突起はないか、小さい。
シロバナタンポポ(白花蒲公英)
学名:Taraxacum albidum
分布:本州(関東地方以西の太平洋側)、四国、九州、沖縄(日本固有種)
倍数性:5倍体
西日本の低地に多い在来タンポポで、中国地方、四国、九州では数が多い。四国、九州では白花しかない地域もある。自然分布は近畿地方以西と考えられているが、戦後になってから東日本にも分布を拡大した。近年では東北南部でも見られ、気候の変化や人為影響などが考えられる。
東京都府中市にて。東京では希少なので、見つけると嬉しくなる。花期はカントウタンポポより少し早い。
総苞外片の長さは内片の1/2ほどで、角状突起は大きい。本種は調べられている範囲では、単一クローンとされている。