Jill Jones | A DAY IN THE LIFE WITH MUSIC

Jill Jones

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プリンスが手がけたアーティストやグループの作品というのは「プリンスが手がけた」というのを抜きにすればはっきり言ってつまらないものが多いんだけど、そんな中でも非常に出来が良いとファンの間でも誉れ高いのがこのジル・ジョーンズのセルフタイトルのデビュー・アルバムです。
1987年発売。

プリンスとジル・ジョーンズとの出会いは古く、それは1980年まで遡ります。
その頃プリンスのツアーでオープニング・アクトを務めていたのがモータウン所属の女性アーティストであるティーナ・マリーで、そのときにバックボーカルで参加していたのがジル・ジョーンズでした(ちなみにジルの母親はティーナ・マリーのマネージャー)。
プリンスは彼女の声を気に入り、ツアー終了後新しいアルバムのレコーディングにジルをスタジオへ呼びます。
この新しいアルバムというのが「1999」で、ジルはバックボーカルで参加するだけでなく、この頃のプリンスのPVにも出演しています。
「1999」のPVでリサと一緒にキーボードを弾いているのがジル・ジョーンズです。
ちなみに「1999」のアルバム・クレジットに記載されれいるJJというのがジル・ジョーンズのことです。
当時はこのJJというのはジミー・ジャムだとかジェシー・ジョンソンだとか言われていたりしたそうですが。

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その後もジルは映画「パープル・レイン」にウェイトレス役で出演したり、
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シーラ・Eアポロニア6のアルバムにも参加、バングルス「マニック・マンデー」にもバックボーカルで参加しているそうで、当時のプリンスにとってはジル・ジョーンズは最もお気に入りの女の子の一人で、ペイズリー・パークの秘蔵っ娘だったと思われます。

手っ取り早くデビューするわけでもなく、バックバンドの正式メンバーでもないのに消えることなく数年ののちに正式にデビューすることになったというのはプリンスの手がけたアーティストとしては非常に珍しく、プリンスとしては大事に育てたかったのか、それとも自身の他のプロジェクトに忙しかったのか、或いはジル以外に目ぼしいアーティストがペイズリーパーク・レーベルにいなかったのかw、そのへんはわかりませんが、結果的には最初のレコーディングの参加からデビューまで約5年かかったわけです。
また、上述の「1999」におけるJJという表記は、MM(マリリン・モンロー)BB(ブリジット・バルドー)CC(クラウディア・カルディナーレ)なんかを彷彿とさせ、何となく大物感を醸し出した演出を狙っていたのかも知れません。

しかしながらデビューまでに時間がかかったのは結果的に良かったと思います。
1987年、プリンスはこれまでの自身の音楽的集大成とも言うべき傑作アルバム「サイン・オブ・ザ・タイムス」をリリースしましたが、ジル・ジョーンズのこのソロ・デビュー・アルバムも大袈裟な言い方をするならば「ポップなプリンス・サウンドの集大成」という風にも受け取ることができるからなのです。

収録曲は8曲。
1.Intro (Baby,You're A Trip) ~ Mia Bocca
2.G・Spot
3.Violet Blue
4.With You
5.All Day,All Night
6.For Love
7.My Man
8.Baby,You're A Trip


音の使い方なんかはもろプリンスなのは言うまでもないのですが、これまでのプリンスの作品の特長的なサウンドがそこここで味わえます。
例えば、「ミア・ボカ」のストリングスを多用したアレンジは「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ」の頃のサウンドのようですし、レヴォリューションがバックを務めている「オール・デイ、オール・ナイト」のタイトなロック・チューンは「パープル・レイン」の頃のサウンドのようでもあり、そして「フォー・ラヴ」のバスドラとスネアが左右に分離したアレンジは「パレード」のようであり、「G-スポット」はプリンスらしいエロファンク・ナンバーで・・・といった具合に「プリンスな要素」があちこちに散りばめられていています。
そして何と言っても楽曲が多彩で粒揃いで、ジル・ジョーンズのヴォーカルもプリンス色の強い楽曲やアレンジに負けることなく存在感があり、プリンスファンはもちろんプリンスのこととかよく知らない人が聴いても楽しめる内容になっているのではないかと思います。
またプリンスの過去の既発曲(「ウィズ・ユー」)をカヴァーしているというのも珍しいですね。
ラストの「ベイビー、ユー・アー・ア・トリップ」のバラードのラストのしゃくりあげるようなヴォーカルはそのままアルバムのオープニングのイントロとして使われており、こうした循環性のある作り方をしているのもプリンスらしいと言えるかも。









と、内容は非常に良いにもかかわらず、このアルバムは売れませんでした。
非常に残念な結果でしたが、もうひとつ残念なのは満を持してのデビューだったにもかかわらず、結局ジル・ジョーンズはこのアルバム1枚で終わってしまったことです。
セカンド・アルバムが出るかも!?という噂もありましたがこれも実現せずで、結局彼女はプリンスの元から離れていきました。
プリンス関連のアーティストってこういうのばっかりですよね(^^;


ちなみに、このCDは現在は廃盤で中古市場ではかなり高値で売られております。
国内盤を持ってるオレは勝ち組www
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あと、1985年のプリンスのシングル「ラズベリー・ベレー」のB面「シーズ・オールウェイズ・イン・マイ・ヘアー」はジル・ジョーンズのことを歌ったものだそうです。
それから、「ポップ・ライフ」のB面「ハロー」でバックボーカルを務めていたり、「KISS」の12インチ・ヴァージョンの後半でベラベラしゃべってるのもジル・ジョーンズだそうですよ。

ちなみにジル・ジョーンズは1990年のプリンスの映画「グラフィティ・ブリッジ」にも出演しています。
プリンスの目の前で穿いている下着を脱いでました(^^;
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