加藤郁乎賞・戸恒東人『誓子ーわがこころの帆』・・・ | 俳句雑誌編集顧問の某日・・・

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昨夜、3月21日(水)午後6時より、東京會舘において、平成23年度・第14回加藤郁乎賞の授賞式が行われた。

 授賞作は、戸恒東人氏の『誓子ーわがこころの帆』である。

 加藤郁乎氏の選考審査の弁によると「戦前出版の『黄旗』の跡を尋ねて旧満州を探り、学問の淋しさは俳句の淋しさである誓子俳句の特質を随所に解き明かしてある。その不遇の晩年はいまなお俳壇無理解のまま論じられることすら稀れ、著者はそうした非を難じるかたがた公憤の気概を吐く」と讃えて次の一句を献上している。

    東風の人こゝろに帆もて鹿島立ち       郁乎


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戸恒氏は、郁乎賞の趣意「志あるにもかかわらず世に表われぬ人材少なしとせず。依って才また識また学にこだわることなく、徳あるいは義にすぐれ世に資益するであろう精神をすすんで推重顕賞するものである」に感激し、戸恒氏の父・恒男氏が68歳で歌誌「雙峰」(そうほう)を創刊したときの言葉「無名人に発表の場は与えられない。無名たる戸恒の短歌と散文を発表する場を戸恒自身が造る」を引いて胸が熱くなったと語っていた。

 ともあれ、愚生は、誓子の消された句を戸恒氏が現地・旧満州の遊里を尋ねる件りを、まるで推理小説でも読むようなスルリングな気分を味わった。 

 祝辞は、授賞式に駆けつけた歴代の授賞者、辻井喬、辻桃子、伊藤勤、坂口昌弘、阿部元気各氏らが述べた。

 戸恒東人主宰「春月」の同人、会員の中から弁護士の大澤鷹雪(孝征)氏は篠笛を披露され、また作家の山崎洋子氏は、遊里の件では女性差別ではないかと怒りのメールを主宰に送ったというエピソードを話されていた(この本ではカットされている部分らしい)。 

 授賞式はなごやかにかつ満面に笑みを浮かべた戸恒氏を祝福しながら進行したが、唯一残念なことは、加藤郁乎氏自身が入院加療中のため出席されなかったことであった。会場の皆さんすべてが本復を祈って散会した。

 今日の編集部は林編集長とスタッフ松本は山本安見子さんと著書刊行と「二人の母」連載100回の区切りの打ち合わせで朝から出かけている。


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