その過小評価に驚愕!!
人類は何を観ていたのか!?
2000年 監督/ ブライアン・デ・パルマ
大好きなブライアン・デ・パルマ監督が撮った唯一のSF作品。本国アメリカ、日本とも興行的に振るわず、映画ファンはおろか、デ・パルマファンからもスルーされがちな作品なんですけど、ホントにみなさん観たんですかね??最高におもしろいんですけど!!

SF映画を苦手分野とするボクが夢中で楽しめたのは、他でもないデ・パルマ力によるものなんですけど、波乱怒涛の展開で最初の一時間があっという間!!『アポロ13』をも凌駕する(←個々で判断しましょう)劇的展開の連続です!!宇宙を舞台にした映画であるけどSFではない作品なので安心して(?)楽しんでましたが、突如クライマックスでSF展開になります!そこに登場する宇宙人がCGというよりアニメじゃないか??って物議を醸しそうなグラフィックですが大丈夫です!CGが発達しすぎた現代の視点から観ると、ある意味更に楽しめます!!

音楽は御大エンニオ・モリコーネ
『アンタッチャブル』『カジュアリティーズ』に続きデ・パルマ作品三度目の登場です!船体損傷による空気漏れのシークエンスで、心臓破りの不穏スコアを聴かせてくれるんですけどマジ最高です!!


【この映画の好きなとこ】

◾︎オープニングタイトル〜デ・パルマTM①
おもちゃのロケットを打ち上げるオープニングにセンスを感じます!そこから始まるデ・パルマのTM(トレードマーク)のひとつである長回し!今回は2分52秒と控えめながらやっぱワクワクします!

◾︎サンドストーム
火星で突如巻き起こる巨大な砂嵐。不気味な姿を形成し、人間を飲み込み四肢を引きちぎるおぞましさ!高速回転処刑される様は、デ・パルマ監督作品『フューリー』を彷彿させます!


◾︎ヒッチコックリスペクト
宇宙ステーションを引きで撮るカメラが徐々に接近、窓ガラスを抜けて基地内に入るまでをワンカットで見せるショット。これはデ・パルマが敬愛するアルフレッド・ヒッチコック監督作品『海外特派員』へのオマージュ(ですよね?)


◾︎ゼロ・グラビティ
かつてスタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』で見せた宇宙ステーション内の無重力歩行シーンですが、デ・パルマ流はカメラも縦横無尽に遊びまくります!これおもしろい!


◾︎空気漏れ
宇宙船損傷により空気漏れが発生!早急に損傷箇所を見つけ修繕しなければ全員窒息死!しかも限られたその時間僅か4分!デ・パルマならではのサスペンスフルな演出に感嘆!そのうえ、モリコーネの音楽がスゴいから!!
修繕のため一人で船外に出るのも相当な恐怖!
修繕が済むも燃料パイプの重大な損傷に気づいてないという恐怖カット!!

◾︎ウッディの決断〜デ・パルマTM②※ネタバレ
燃料事故により船体放棄を余儀なくされた4人のクルーは、火星軌道を廻るリモをキャッチし乗り移るというスリリングにも程がある荒業に出る!己を犠牲にし3人を助ける船長ウッディの死が衝撃!これはデ・パルマ監督作品『殺しのドレス』に次ぐ主役交代劇(これ自体が『サイコ』へのオマージュでしたが)
ワイヤーに繋がれたウッディがリモを追う
一発キャッチ!!
しかし自身は船体から振り落とされてしまう!
妻のテリーがウッディめがけワイヤーを発射!
が、ウッディのその手にワイヤーは届かなかった…
死を覚悟したウッディがテリーに最期の投げキッス…


◾︎デ・パルマTM③
自身の監督作品『殺しのドレス』『レイジング・ケイン』『パッション』にも登場する人知れず背後に棒立ちショット!毎回チビります!
ぎゃーす!!

◾︎デ・パルマTM④
別れのシーンで受け継がれる形見
『アンタッチャブル』でも描かれた友情と信頼の証


◾︎未知への旅立ち
ジムの決断を尊重し別れを告げるふたり
このシーンのジムの気持ちわかるなあ…とても好きなエンディングです!!
どんな決断をしたのかは観てくださいね!

これホントおもしろい作品です!
1996年の監督作品『ミッション:インポッシブル』の続篇オファーを断って作り上げただけあってデ・パルマの意欲を感じます!新しいチャレンジにワクワクしながら作ったんでしょうね。まさかデ・パルマがSFを撮る日が来るとは思わなかったのでちょっと後ずさりしましたが要らぬ心配でした!
本文にしたためた通り、デ・パルマの映像トレードマークも随所に健在でファンとしては嬉しい限り!!
本作の興行的失敗やハリウッドシステムでの映画作りに嫌気が差したデ・パルマはこれ以降ハリウッドを離れ、海外資本で自身の古巣であるサスペンス映画に特化した映画作りを続けています。まだまだついて行きますよ!


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