■番外・大多喜町役場(千葉県大多喜町大多喜)
■今井兼次の設計。街なみも良い。見に行く価値あり
大多喜町は房総半島の真ん中あたりにあるのだが、東京から電車で片道3時間半ぐらいかかる。
とても遠いのだが、房総半島ローカル線の旅も兼ねて、行って見るだけの価値はある。
今井兼次は味付けが濃すぎるよね、と敬遠気味の人でも楽しめる、ほどよい出来映えの役場。
さらに加えて、大多喜の街は、これがなかなかに魅力的だ。
電車で行くなら、鉄道ファン御用達のローカル私鉄、いすみ鉄道や小湊鉄道に乗っていくことになる。
まあお薦めは、君津から入って、大多喜を見てから大原に抜け、次は南下して御宿へ行くルート。
御宿町役場も大多喜に負けず劣らずの問題作だ。なんと、マイケル・グレイブスの基本設計なのだ。
それはさておき、大多喜は1959年落成。2012年改修。このとき、となりに千葉学設計の新庁舎も増設された。
とまあ、前置きが長くなったが、駅から徒歩5分で到着。
最初に見えてくるのは裏側なのだが、いきなり正面玄関に行かず、千葉学の新庁舎の側に向かう方が、ドラマチックなアプローチが楽しめる。
というわけで、正面に行かずにのっぽの煙突みたいな「ベルタワー」へ向かう。いかにも今井兼次っぽい、彫塑的なシンボルタワーだ。
ところで今井兼次について、一応説明しておくと、モダニズム陣営からはちょっと距離おいた個性は建築家で、日本にガウディを紹介した人、ってな感じ。
早稲田大建築学科の草創期の教授で代表的な人、ってな感じでもある。
でまあ、ベルタワーのあたりは旧庁舎と新庁舎の連絡通路になっている。
そのまま左に進んで新庁舎。
現代的な建物ですね。天井を和風格子っぽくイメージしたとか。大多喜城がシンボルの町ですから。
次はそのまま道を右へ右へ伝っていく感じで、いったん、役場を離れる。
すると、庁舎南面が遠くに見えてくる。それなりの距離を置いて、木々の合間に見える。
その向こうには、お城も見えるぞ。
現代になってからコンクリで作った再現天守だが、大多喜城は戦国ファンならたまらない名将、本多忠勝の城下町だったのだ。
庁舎の屋上にはモザイク的な物も見える。さすが俺たちの今井兼二!どんな時でもモザイクを忘れない!
街ゆけば、良い感じの商家や民家や建物がちらほらと。
そのまま進んで、再び役場の敷地内へ。
正面入り口を、庭園越しに下から見上げる形になるのだが、これが良い。
正面から見ると、平屋建て地下一階、という建て付けになるのだが、裏から見ると、2階建てのモダニズム建築(今井兼次っぽさもちょっと)になる。
裏から見上げるベルタワーも良し。
上から見下げる庭も良し。
よく見ると庁舎の上にはなんかのモニュメントもくっついている。実に今井っぽい。
やたらに長い玄関ポーチというか車寄せというかを見上げると、うねうねうねっていて、四角四面なコンクリの打ちっ放しモダニズムにはしないぞ、という設計者の信念が伝わってくるかのよう。
なんでも、近くを流れる夷隅川の流れをイメージした、うねりそうだ。
後ろを振り向くと、星やら何やらも。
ついでに、町もぶらぶらしようと思う。
そばにある大多喜小。御宿町でも出てくる榎本建築設計事務所の設計。担当者は現在、デ・ステイル建築研究所に移ったようで、そっちのHPでも「実績」として出てくる。
さらにぶらぶら。花も綺麗。
山間の小道。
お城が見える。
踏切から駅をパチリ。