「かまくらと三浦半島の古木・名木50選」の一つだそうです。
ナギはマキ科マキ属の常緑高木で、「世界のマキ科マキ属の中で最も美しい」と言われるそうです。
寒冷地に分布すると思われがちな針葉樹でありながら、東アジアでは台湾や中国の海南島に、非本では本州南部、四国、九州など温暖な地に分布しているとのこと。
三浦半島は相模湾に突き出ている形なので、関東地方の中では房総半島の南部とともに、温暖な地域と言えるでしょう。ですから ナギの巨木がある、ということでしょうか。
「ナギ」の名は海が穏やかな状態「凪」に通じ、嵐を恐れ平穏を望む海辺の人々に大切にされたようです。
また、中世以来、熊野信仰と密接なかかわりがあったともいわれます。
延壽寺は「東国花の寺百ケ寺」の一つで、『東国花の寺百ケ寺ガイド』(朱鷺書房)によると「お寺を代表する花」は「プリムラ(西洋サクラソウ)ということですが、ナギも紹介されていて、こちらでは六月上旬ごろに花をつけるようです。
このガイドブックには「ナンジャモンジャ」と書かれ、括弧内に「ナギの木」と書かれています。「ナンジャモンジャ」とは学術的な正式名称ではなく、地域によって違いがあり、昔の人が「この木はなんじゃ?」と木の種類がわからなかったり特別に趣がある巨木で「何じゃ?」と言ったのが変化して「なんじゃもんじゃ」となり「なんじゃもんじゃの木」と言われるようになったとか、いろいろと伝説があります。三浦半島ではこのナギの巨木を「なんじゃもんじゃの木」と呼んだ、ということなのでしょう。
延壽寺の西洋サクラソウの開花時期は十二月下旬から三月上旬となっていますが、花のことですから、年によってズレることもあります。開花時期とされている時期に行っても見られないこともあります。しかし、ナギの巨木そのものはいつでも見られます。
延壽寺の開基は日範上人で、あの日蓮上人の直弟子の日郎上人の弟子にあたるそうです。
この日範上人は、たいへんな長寿の百二十歳以上生きた、と言われるそうです(『東国花の寺百ケ寺ガイド』参照)。現代でも百二十歳まで生きればギネスブックに載るくらいのとんでもない長寿でしょう。それが平均寿命の短かった中世において百歳以上生きたとは驚きです。
私自身、百歳以上の人を直接みたことがありますが、それでも百をちょっと過ぎたくらいです。百を二十も過ぎてまだ生きていた(「まだ」という言い方は変かもしれませんが)というのは、にわかには信じられないですが、何らかの根拠があるのでしょうか。
「延壽寺」の山号を「壽福山」といいますが、「壽福」といい「延壽」といい、めでたい名前です。それはこの超人的な長寿の日範上人にちなんでいるそうです。
延壽寺の境内のナギの木も長寿の象徴のように大切にされています。