「その夜の妻」(1930)感想 その2 | トトやんのすべて

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および諸芸術作品への偉そうな評論をつづっていくブログです。

小津安二郎監督 13作品目。


3年前の当ブログの感想は

「小津安っさんは

『働かない人を描く』という生涯のテーマをこの作品で発見したのだ」

とか書いています。


ふむ。

なかなかおもしろい感想を書く人ですな~


さて3年後の感想は…


①衣

ようは


八雲恵美子萌え。


という映画です。



どうやらオスカー・シスゴール(誰?)とかいう毛唐の作家の短編を映画化したらしいのだが、


翻案にあたって……

安っさんと脚本・野田高梧(名コンビ)の会話を想像するに……



「あのさーオープニングはあれですよ。ホリウッドの暗黒街ものばりに」

「ふむふむ。黒を基調にいきますか」

「で。場面変わりまして」

「ジャーン。八雲恵美子登場!」

「もちキモノ」

「ふむ」

「洋室・ベッド・椅子の生活の中にキモノ姿の恵美子たん……」

「キャー」

「キャー」

「ピストルもたせちゃう??」

「いいっ!ぜったいに、いいっ!」

「両手に持たせちゃったりして??」

「いいっ!安っさん、あんた天才っ!!」

「キャー」

「キャー」

「やべ。オレ鼻血垂れてきた……」

「あ。オレもだ……」


という会話の結果。


おキモノ・エプロンで両手にピストル……


という八雲恵美子ができあがった、という……




とうぜん彼女は

前作の田中絹代同様

何もかもを知ってゐて男の何もかもを支配する女の系譜に属しています。


②食


はあまりでてきません。

(銀行強盗から帰ってきた岡田時彦がパンをまずそうに食べる)


重要なのは


③住

で……


なかでも「電話」なる最先端テクノロジーが物語をひっぱります。



警官の笠智衆は

銀行からの電話をうけます。強盗の被害にあったという内容。


犯人は岡田時彦

娘の病気の治療費のため、銀行強盗を犯します。


で逃亡中、

電話ボックスにはいる岡田時彦。


医者に娘の病状を聞きます。




電話ボックスはこんな↓


かっこよすぎでしょう。


あとタクシーが登場します。

円タク。



けっかは運転手の山本冬郷が刑事で

岡田時彦は捕まってしまうという結末になるんですが……


テクノロジーの両義性を

安っさん実にうまく処理しています。


電話……

情報がはやく伝わることはよいことだが、

逆に不安も増大させることになる。


自動車……

警察の捜査の助けにもなるが

犯罪者が逃げる助けにもなる。


④全体


ちょっとシナリオが雑な気がする。


映画のシナリオなんか雑でいいとおもいますよ。

ちょっとぐらい辻褄があわなくてもいいとおもいますよ。


でもねー…


銀行強盗を犯した岡田時彦とその妻八雲恵美子の会話。

夫婦のかたわらには

重病の娘がベッドで寝ている。

夫婦は娘の治療費を払うすべがない。

だが。


「あ。あなた。この大金はいったい??」

「俺たちの仲間はみなビンボーで誰も金なんか持っていない」

とかいうの続いて……



「と言ってみち子を見殺しにすることは俺には出来ねえ」


というんだが…

なんだこの他人行儀な…「見殺し」??


なんかピントがずれてるんだよなー

実の娘じゃないのだろうか??

とかいろいろ考えるが

なんかヘンな字幕である。


だいたい、ですね。

家族の住むアパートが広すぎる。

豪華というのではないが、娘の治療費を払うのに苦労する人が住む家ではない。

夫婦の着ている服も、はっきりいって高そうだ。

恵美子たんのキモノ

質屋にいれて治療費にしないのだろうか。

ピストルも売ればカネになりそうだ。


あとですね。

「今夜が峠です」

といわれている重病人の娘が元気すぎるんですよ。


「お父ちゃんお父ちゃん」

とバタバタ泣きわめく……

なんかシラケる。


……


えー……


まとめ。

かっこいい映画です。

恵美子たん萌えです。


ただし深く読もうとするといろいろアラが目立つ、というか……