見た目は豚骨ラーメンそのものだが、あの独特の臭みが全く無いのだ。
当たり前だ。
これは豚骨ラーメンでは無く、「鶏だしラーメン」700円なのだから。
スープの量は少な目で、麺は細い。葱に茎ワカメ、それにチャーシューのような厚い肉が二枚トッピングされているが、実は鶏肉である。パサついた食感だ。スープを飲むと、喉にどろっと粘度を感じる。もったりしていて、とても濃厚だ。唇がぬらぬらする。鶏とはあっさりしているもの、との思い込みが打ち破られた。スープを飲み干す途中でピンクの小エビがちらっと顔を出す。鶏白湯(とりぱいたん)と魚介とのWスープとは、ははん、このことかと得心する。全粒粉らしき自家製麺はそれ自体に味があって、出来が良かった。
濃厚なこってりラーメンを食べたいが、豚骨は臭くて嫌だ、なんて人はきっと気に入ることだろう。若い婦女子なんかに人気と需要がありそうだ。
「麺道はなもこし」さんは福岡市中央区薬院2-4-35、エステートモアシャトー薬院1Fにある。大きなマンションの1階部分に、女性用下着店や美容室が並び、その一角に佇んでいた。カウンターが6席だけの狭い店だったけど、テーブルが置けそうなスペースにベージュのソファがどんと置かれている。客が食べる場所よりも趣味の空間を確保したのだろうか。ギターが立てかけられていて、拘りの強そうなCDジャケットが壁面に見える。ソファ正面の本棚に展開している本には独特のセンスがほとばしっていた。背表紙に細川護煕、と書かれていたりして。
店主は些かエキセントリックなのかも知れない。