改めて彼(故村山聖九段)の将棋を並べてみて感じたことは、
実に野生味と闘争心あふれる将棋だなあということだった(羽生善治)
 
理知にあふれた序盤、 そして悪くなってからの相手を幻惑させるような怪しげな終盤
このデジタルとアナログの両極が、彼の将棋の一大特徴であり、
その矛盾には、なにか村山という人間の生き方、人生観が投影されているような気にさせる。
彼の将棋は我々二人を唸らせるほどに才気あふれ、魅力的であった。 (先崎学)
 
<帯>  甦る、村山聖の名局!!
        故村山聖九段が精魂を込めた将棋を 羽生善治・先崎学が渾身の解説。
           村山将棋の魅力、真髄に迫る。



 
先崎  「本質はやっぱり、序盤でしくじったので、終盤で猛烈な勝負手を、というところがつよいよね」
先崎  「あの言動どおりだったね(笑)。 とにかく叩き切っていくものね、基本的に」
羽生  「そうだね。 良くても叩き切るっていう棋風」
 
先崎  「その場で手を選ぶことが嫌いだった、・・・筋を通していくのが好きだったみたいですね」
先崎  「『作戦勝ち、優勢、叩き込み』が理想のような・・・」
羽生  「木村戦意外にもあった?」
先崎  「米長戦と大山戦などは、近いパターンで」
羽生  「あとは佐藤戦。やっぱり、☖3二金と上がって千日手にして、先手番で一方的に攻めていった」
先崎  「したたかでしょう(笑)」
羽生  「何ていうのか、出ているでしょう、感じが」
先崎  「これも生涯の会心作だね」
 
先崎  「平成10年の8月に亡くなったでしょう。 4月には大阪に帰って、入院したわけだ」
羽生  「4月に名人戦イベント(広島)で会って話をして、まさか亡くなるとは思わなかった」
先崎  「4月で8月だものね」
羽生  「入院していたということは後で分かったけど・・・」
先崎  「羽生さんに会ったんだ、と言っていたらしいよ」
 
先崎  「入院する前にこれだけの将棋が指せれば、体が健康ならオレが日本一だと思っていたよな」
羽生  「昇級も決めたところだったし」
先崎  「最後に5連勝ぐらいしたんでしょう」
羽生  「最後はすごい、あの体調でね。 すごい
 
先崎  「しかし結構強かったね」
羽生  「それは強いでしょう(笑)。 面白い将棋が多いよね、見ていて」
先崎  「駒が前に行くから面白いよな」
羽生  「それに意表を突く手が必ず出てくるし」
先崎  「とにかく突き進むというか。 そういうところがね、目の敵にしていた佐藤君(一同笑)と同じようなところがあるんだけど」
 
「代役ができたかどうか分からない」と言う羽生さん。
「光栄なこと」だという先崎さん。
間違いなく、村山さんの将棋を解説するのには 最適のお二人です。
本当によい”名局譜”が出来上がりました。
 
 
<もくじ>  
まえがき  
第1局 羽生善治五段戦     ライバルとの初顔合わせ
第2局 佐藤康光五段戦     千日手差し直しの大熱戦
第3局 大山康晴十五世名人戦   大名人に完勝
第4局 米長邦雄九段戦     タイトル初挑戦を決める
第5局 谷川浩司王将戦     タイトル戦デビュー
第6局 谷川浩司王将戦     順位戦で谷川を破る
第7局 森下 卓八段戦      執念の逆転勝ち
第8局 羽生善治名人戦     鬼手が炸裂
第9局 丸山忠久七段戦     秒読み、深夜の大激闘
第10局 木村一基四段戦     一点の曇りなき絶局
  村山将棋の検討を終えて
  村山聖資料編
   
   
  著者: 羽生善治・先崎学
  写真: 中野英伴・弦巻勝・森信雄
  2000/11/301 初版